都市運営
少し設定上おかしな点がありましたので、リューベン山脈は伯爵領には含まれず、アルシュタイン王国に含まれるように修正しました。(2020/01/02)
この屋敷には、執務のための部屋が1階に用意されています。部屋には、これまでの帳簿や住民リスト、法務関係の本などが収められていました。主に住民サービスを行う場所で、一般人も入出を許可されています。奥には、会議をする部屋や、領主専用の部屋もありました。
国王(内閣総理大臣)、外務大臣、法務大臣が俺の仕事になります。主に外交、法律関係、大まかな方針を決める役です。それ以外はすべてラプラスに丸投げした。
「ちょっとー、私の仕事多くない?」
「うーん、ラプラスの優秀な頭脳を活用すれば、この位は簡単かと思ったのだけれど。さすがのラプラスもこの仕事量は無理だったかな・・・?」
「ま、まぁ私くらいの優秀な人材にかかれば、このくらい楽勝だわ!」
ちょろい。
「ラプラスには、この国の経済に関することを主に頼みます。」
「わかったわ、でも一人ではさすがに大変だから部下を呼び出してもいいかしら?」
「ああ、やり方は任せます。」
すると、ラプラスは長々と呪文を唱え始めます。次第に床に5つの魔法陣が現れて、そこから5体の下級悪魔が現れました。
5体ともララ族と呼ばれている悪魔のようです。身長は90センチほどしかなく、耳は少し尖っています。知能は高く、魔法が得意な種族らしいです。見た感じ、子供にしか見えませんが、大人になってもこのサイズらしい。
ラプラスは、それぞれに仕事を割り振っていきます。
下級悪魔達は、黙々と資料を読んでいきます。知能が高いためか、かなりのスピードで書類を整理していきます。数時間が経過した頃、簡単なレポートが提出されました。
レポートには、元の伯爵領の詳細なデータと地図が記載されています。この領地には、領都以外に、大きな町が5つ、小さな村は8つあります。
また、アルシュタイン王国の大まかな地図も含まれていました。その地図によると、国土の北部には3千から6千メートル級の山が連なるリューベン山脈があり、南部には海に面した小さな漁村もあります。リューベン山脈には迷宮都市が存在します。土地は豊かで、農業にも適しているらしい。
人口は約10万人、税収は約230億ゴールドあるらしい(国からの地方交付税を含む)。
知れば知るほど、ここは良い領地だったのですね。
現在のドラゴニュート王国の国土は、元伯爵領、ドラゴニア、死の森が含まれます。それでも国土としては小さいです。前の世界の県二つ分くらいでしょうか。
ラプラスに引き続き仕事をお願いして、俺は少し出かけることにしました。
◆
俺はエミュさんと、空からアルシュタイン王国を偵察に向かいます。偵察といっても、竜の姿のまま堂々と領空侵犯してもらいます。おそらく、この領地を取り戻すために王国は兵を集めているでしょう。竜が突然飛来してきたとなれば、伯爵領の事など後回しになるかもしれません。
そのまま王国を滅ぼすことも可能ですが、それは止めておきます。あまり意味の無い血は流させたくはないですからね。でも、戦争をしかけてきたら皆殺しにしますよ? 一般市民ではなく、軍人なら死ぬことも覚悟しているはずだからです。
【ああ、ご主人様の温もりが背中から感じます。】
はい、俺はいま、エミュさんの背中に乗っています。竜神族にも発情期はあるのですかね。
「エミュさんの印象がすごく残念な感じになってるのですけど。。」
【その冷たく引き離される感じもいいです。】
マゾなのでしょうか?
【あ、もうすぐアルシュタイン王国の王都上空に着きますよ。】
「もうそんなところまで来ているのですか。」
【竜の姿だと、かなり早く動けますからね。それに、竜神族になってから飛翔速度も上がっているようです。】
「あまり低空で飛ばないでくださいよ? 相手にはバリスタという対竜兵器もあるようなので。」
【今、ご主人様の愛を感じました!】
「何を言っているのですか。。真面目に注意してくださいね。」
【もう、ご主人様はロマンチックな雰囲気をもう少し勉強すべきだと思います・・・。】
何かぶつぶつ言ってます。
上空から見渡すと、遠くにお城のようなものが見えます。周りは高い城壁で何重にも囲われているのが分かります。あれがアルシュタイン王国の王都でしょう。王都名も確かアルシュタインだったと記憶してます。
この世界では王国名と王都名が同じ場合が多いようです。前世では、異なる場合が多かった気がします。オランダの王都はハーグだったでしょうか。そもそも、王都名はあまり一般的ではなく、ただ王都と呼ばれることの方が多いようですね。
「じゃあ、王都の上空をゆっくり一周してもらえますか?」
【はい。】
エミュさんと俺を包み込むように、物理、魔法無効の結界を張ります。これで万が一バリスタの杭が飛んできても大丈夫でしょう。
城壁に近づくとさすがに発見され、大きな警戒の合図がなります。下の方から弓を射る姿が見えます。当然ですが、全く届かないでそのまま落ちていきます。
一周してそのまま王都の城上空に留まっていると、眼下に多くの住民や兵士が逃げ回っています。高い塔の上に設置されているバリスタがゆっくりと回ってこちらに照準を合わせようとしています。
「もういいでしょう、帰りましょう。」
【はーい。】
俺たちが、家に向かって移動し始めた頃、やっと杭が飛んできます。しかし、俺たちにはかすりもせず、そのまま弧を描くように落下し城壁を破壊していきます。これで、しばらくは進軍しては来ないでしょう。
◆
アルシュタイン王国への偵察から数日が経過しました。俺達は建国の宣言のために準備をしていました。独立国家が建国されたことを、周辺諸国に布告するためです。アルシュタイン王国の動きも特に無く安心していたのですが、トラブルは突然やってきます。エミュさんは衛兵の報告を受けて、慌ててやってきました。
「ご主人様、東門で問題が発生したようです。」
「え? アルシュタイン王国が攻めてきましたか?」
「いいえ、それが勇者パーティが魔王を出せと言っているらしくて。」
「は?」
勇者パーティが来たですって? 魔王って何? どうしてここにいることになっているのでしょう?
「どうやら竜を従えていて、怪しい術で人間を操るご主人様は、魔王だとアルシュタイン王国は断定したらしいです。それで勇者を魔王討伐のために差し向けたのではないかと。」
「はぁ? なんでそうなるんだ?」
「人間の考える事はよくわかりません。」
なんか、めんどくさい事になっています。
「だいたいご主人様が魔王だなんて、失礼この上ないですよ。ご主人様の強さは魔王なんか足下にも及びません。」
は? 魔王って本当にいるの?