ただ写真
この作品は牧田紗矢乃さん主催、第四回・文章×絵企画の投稿作品です。
この作品は、桧野 陽一さんのイラストを元に執筆しました。この場を借りて、御礼申し上げます。
桧野 陽一さん:https://10819.mitemin.net/
息が白い。
もう冬に入ってからずいぶんと経つ。
そういえば、今年はいろいろとあった。
写真を撮ることが趣味な僕は、いろんな思いを抱きながら、夜、山を登る。
一つ一つ、星がとてもきれいに見える。
寒いが、その光景だけでも一見する価値は十分にある。
歩みを止めて、少しだけ写真を撮る。
全てを写すことはできない、でも、それはきれいな思い出とともに、ずっと写真の中で生き続ける。
もう少し、と思い直し、再び歩き出した。
ようやく来た頂上は、どこまでも澄み渡っている。
夜景は空に通り抜けていき、それがゆるやかに空を照らしている。
そこから広がる景色は、言葉にすることができないほどきれいだ。
人々の営みが、この色を、風景を、景色を作り上げた。
その一瞬を切り取るために、シャッターを切る。
満足、そのために今、写真を撮った。