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プロローグ

胸くそ表現が最初にあります。ご注意ください


私は死んだ。死因は過労。

両親は屑だった。屑の中の屑。キングオブ屑だった。この言い方だとキングと屑に失礼だな。最低野郎共だった。


気持ちいい事だけを考えて目先の欲に囚われて、責任など気にせず子供を産み落とすだけ落としたらネグレクトになった。

子供の様な両親に子供は育てられなかったという訳だ。


母とも呼びたくないので女、父とも呼ぶ必要もないので男としておこう。

女は金持ちの家に産まれたが、常に監視の目があった。して良いこと、してはいけない事。縛りだらけの生活に飽き飽きした女は、ある夜家を飛び出した。

そして路上ライブをしていた男とばったり出会った。出会ってしまった。

夢を叶えようとしている男と、束縛から逃げ出したい女。


男は女の生まれを知ってチャンスだと思った。仲良くなっておけば貢いでもらえるかもしれないと思った。

女は男に惚れていた。今まで出会ったどんな人とも違う、自由で無限の可能性を秘めた人に初めて会った瞬間に惚れた。


男は女の避難先になりつつも、女が金を落とすのを待っていた。しかし女は男に振り向いてほしい事ばかり考えて男の気持ちを知らなかった。

男は仕方なく女と恋人になった。そうすれば女は度々貢ぐ様になった。

男と女はWin-Winの関係になったのだ。勿論女はそんな事を考えてはいなかったが。


そして子供の男と子供の女は私を身籠った。

成人も迎えていない二人はまだ親の庇護下であった。だからこそ女の両親は女に堕胎する様に言った。どれだけ強く言っても、愛する男の子供だからと女は頷かなかった。

子供を堕胎すると言って聞かない女の両親から、女は遂に本当に家を飛び出した。以前の中途半端な家出とは違う、二度と戻る気の無い決死の決断だった。

辛い事は分かっていた。けれど女には男がいた。男と、その子供と三人で一緒なら幸せになれるだろうと信じて疑わなかった。


男は始め驚いたものの、女を迎え入れた。男だけを愛してくれる人は、男にとって初めてだったのだ。男だけを求めてくれる。男だけを見詰めてくれる。それは男の自尊心を満たした。


それから女が私を産んだ後も二人は繁殖期の如くに盛った。

そして弟四人と妹四人が誕生した。私を入れて九人姉弟だ。どれだけ同じ事を繰り返しているのかとキレたい。


そして産むだけ産んである程度育てたら、二人は突然出ていった。どこへ行くのだと言うのだ。1Kの古ぼけたアパートで私は棒立ちになった。私は高校を中退する事になった。奨学金で通っていた高校だった。中退すると言った時、教師は引き留めようとした。そりゃそうだ、毎度一位を独占していた私がいなくなるのだから、進学生が一人減る様なものだ。学校としては大損だろう。


私は働く事になった。上は中学生から下は小学一年生まで学生ばかりが八人もいるのだ。何をするにしてもお金が必要だった。母の実家には頼れなかった。頼って良い訳がなかった。

早朝の新聞配達に夕方から家庭教師のアルバイト、そして夜間工事の仕事。キツかったがこれ以上増やすと倒れるのは目に見えていたので諦めた。

夜間工事の仕事が終われば早急に新聞配達に向かって、家に帰れば妹弟達の学校に行く準備をさせて、家事をこなした後に爆睡。昼過ぎに起きて家庭教師のアルバイトを続けて二件回って、それが終わると家に帰り夕食の支度をして妹弟達の面倒を見る。そしてまた夜間工事の仕事に出る。そんなサイクルをずっと続けていた。


風邪が治りにくくなったのは、一番下の弟が小学校を卒業した頃。

眩暈が続く様になったのは、一番下の弟が中学校に入学した頃。


だんだんと、体がもたなくなってきていた。

他の妹弟達はアルバイトをしつつも学校に奨学金で通っていた。私が苦労をしたから全員に大学まで行ってほしかった。就職の為にも大学卒業のステータスは必要だと思ったから。

常に一位の私が教えていたから頭はよかった。あんな男と女から産まれたとは信じられない程には。


喀血をする様になったのは、一番下の弟が高校に入学した頃。


流石にバレた。妹弟達は涙を流して怒った。けれど病院に行くお金は無かった。

過ごしていくにはお金が必要で、私の治療費に使う事なんて出来やしなかったのだ。


ボロボロな状態で、妹弟達はオロオロとしていた。

そんな私達を救ったのが、あの私達を産み落とした女の両親だった。


1Kのぼろアパートに来たかと思ったら、私達の置かれている現状に目を見開いた。

かと思ったら速やかに夫婦の本邸に招かれたのだ。

何がどうなっているのやら、驚いている余裕は無かった。


妹弟達は驚きつつも喜んだ。みんなの見せてくれる笑顔に安心した。


けれど、私にはもう時間がなかった。

祖父母が私を病院へと連れていってくれたけど、既に体は限界だったのだ。


妹弟達は泣いてくれた。

どうして、と。

どうしてお姉ちゃんばかり辛い思いをしないといけないのか、と。


いくら嘆いたとしてもどうにかなる訳じゃない。


「みんな泣かないで・・・最期には笑顔が見たいよ」


私は薄れ行く意識の中で何とか生にしがみついていた。妹弟達の前では絶対に死なない。最早その意地だけで生きていた。


そしてその日の深夜に私は死んだのだ。



■□■



死んだはずだった。


気付けば私はどこもかしこも真っ白な空間にいた。


「ここは・・・」


ふわふわと漂っている感覚。ふと足元を見ると真っ直ぐ先へと道が続いていた。

何もする事がないので辿ってみる。


そう言えば、みんなはどうなったろう。

妹弟達は、元気だろうか。私の死んだ事にずっと落ち込んでないと良いが・・・。みんな優しい子だ、気に病んでいるだろう。


道はまだまだ続いている様に見えた。

ただ歩くだけだと脳は思考する。目ぼしい物も無い場所だとそれは顕著になる。


もっと色んな事をやってみたかった。もっと勉強してみたかった。妹弟達ともっと会話がしたかった。みんな運動神経も良かったからきっと部活をしていたら優勝間違いなしだったろう。


『君は随分後悔ばかりが残っているみたいだね』


そりゃそうだ。責任感のない男と女のせいで、ろくに青春すらも遅れなかった。友人だって付き合いが悪いと去っていってしまうのだ。仕方ないと分かっていても、心が納得しなかった。


『そうかそうか・・・。それは難儀だったな』


ただ、私には支え合う妹弟達がいた。みんながいるから、私は頑張れたのだ。


『家族の絆程強いものはあるまいよ。それが良いものでも悪いものでも、血の繋がりとは強いものだね』


血の繋がりか・・・。でもあの男と女と血が繋がっているのは正直辛いと思う。肉親と言えども許せないものだ。

ただまぁ、殺したいとは思わない。近付きたくないし関わりを持ちたくない程度である。煩わしいし忌避したい。その程度だ。


「って誰?!」


私は漸く誰かと会話している事に気付いて周囲を見渡した。

思考が口に漏れ出ていたのだろうか。バフンと口を両手で押さえてみるが今更な気がする。


『誰と聞かれたら答えてあげるのが世の情け。私は神だ』

「・・・はぁ」


思わず気の抜けた返事をしてしまった。

『いやいや嘘じゃないからね!神様だよ!!』

「神って実在するんですね・・・」


まだ半信半疑であるが、私は無理に納得してみた。


『もー疑ってるね?』

「だって姿も見せないのにどう信じろとーーー」


不意に言葉は途切れた。詰まったのではない。


目の前に突然人の姿が現れたからだ。文字通り一瞬にして。


「これで多少は納得出来たかな?」


神と名乗る彼?彼女?

兎に角そのヒトはどれだけ見ても記憶に残らなかった。老人の様な若い様な、男の様な女の様な。人の形をしているのは分かるが、それがどんな顔立ちなのか、身長なのか見ても見ても凝視し続けても分からないのだ。恐らく脳が処理しきれていないのだろう。


「ええと・・・はい。神様なんですね」

「そうだよ。それで早速なんだけど、君が余りにも不憫でね、そのまま輪廻に乗られたら後々困るんだよねー、後悔ばっかりでさ。だから生き返らせる事にした」

「・・・・・・え?」

「でも既に君は火葬された。だから元いた場所には戻してあげられない。例え望まれてもそういう規則だからね。破ると神でも罰を与えられてしまうんだけどね」

「・・・・・・??」

「だから君をこことは違う別の世界へ転生させようと思うんだ。本来なら君の要望を聞きたい所なんだけど・・・。君はどうもゲームもファンタジー小説も恋愛小説も読んだ事がなさそうだ。仕方ないから君の妹達が良く友達としていたゲームの世界に飛ばそうかな。ううん・・・やっぱりこの【ドキドキ幸せのメモリー】が良いかな?これだと勉学に部活にと青春が出きるよ?どう?」

「はぁ・・・えっとそれでどうぞ?」


選択肢あった?

聞いた所であやふやにしか分からないゲームの題名を聞かされた。

妹達が友人の家で遊んだ時に面白いゲームがあったと教えてくれた事を思い出す。


確かどこぞの金持ち学校に庶民の女が入学し、紆余曲折ありつつも最後には素敵な攻略キャラクターと結ばれるエンドだったはず。

そうそう、攻略キャラが多くて妹達が「この人がいい」「いやいやこの人が」と言い合いしていたっけな。


じわりと滲む涙を見ないフリしつつ私は頷いた。


「よし、それじゃあ決定!素敵な転生ライフを!」


鼻唄でも歌い出しそうなテンションで神は言った。

ヒラヒラと手を振って、それからーーー。




私の意識は途絶えた。


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