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小田翔真からの電話。

始まったばかりの藤村君と鈴村さんの恋は順調・・・とはいかず。


世話好きの小田翔真がひと肌脱ぎます。

家が隣同士で幼なじみの藤村君と鈴村さん。


高校2年でその関係は恋人に進化。


しかし、その二人には呪いが掛けられていた。






「アヒルの呪いと名付けたんだ。」


桜の花が散り若葉が芽吹く頃、日曜日のお洒落なカフェで、小田 翔真しょうまは真剣な顔で言った。




翔真は藤村君と鈴村さんと保育園から小、中、高と一緒の幼なじみ。


誰よりも二人を見てきた男。




翔真は、彼女の原田 紗彩さあやと二人で藤村君と鈴村さんについて話をしていた。


紗彩は藤村君と鈴村さんと同じ中学、鈴村 ひなたとは3年間同じクラスで仲良しだった。



「アヒルの呪い?」


紗彩はメープルシフォンケーキを食べていたフォークを置いて翔真の顔を見た。



「そう。アヒルの呪い。」


「誰に掛かってるの?」


「ヒナがハルに掛かっていると思ってる呪いだよ。」


「じゃあ、藤村君に掛かってるって事?」


「いや、結果的にはヒナに掛かってるんだな。」


「んー?」


「あの二人はさ、その呪いを解かないと幸せになれないんだよ。」


「それって?」


「ヒナはさ、ハルがアヒルみたいにたまたま目の前にいた自分を好きになって追いかけまわしていると思ってるんだよな。」


「あ、そういうとこ、あるよね。」


「でさ、ヒナはずっとハルの好意を疑ってるんだよな。」


「そうみたいだよね。まあ。藤村君はちょっとけた違いのイケメンだしね。。。」


「ヒナはさ、自分のこと地味だって言うけどさ、そんなことハルには関係ないんだよな。まあ、ハルが口下手でヒナにうまく自分の気持ちを伝えられないっていうのもあるけどな。」


「でも、藤村君からはヒナへのものすごーい愛があふれてるって、近くで見てたらわかるよねえ。」


「だからさ、それがわからなくなっちゃうのが呪いなんだよ。」


「呪い・・・かあ。」







翔真は少し前の出来事を紗彩に話し始めた。




新学期が始まり、藤村 晴人はるとはイライラしていた。


なぜかと言えば、恋のライバルと言える人物が現れたからだ。



棒葉しんば 玲雄れお。この白いライオンを思い起こさせる名前サッカー選手のいとこの棒葉しんば 遼太りょうたという転校生が晴人の心をざわつかせていた。



幼なじみで同じクラスの翔真は「まあ、たまにはイライラするのもいいだろう。」といつも余裕でクールな晴人が落ち着かないでイライラしている様子を楽しんでいた。


けれど、この前の月曜日、晴人の様子が明らかにおかしかった。


まず、目の焦点があっていない。


授業中も教科書も出さずずっと空を眺めている。


優等生晴人のそんな状態に先生が声を掛けた。


「藤村、どうかしたのか?体調でも悪いのか?」


「あ、いえ。大丈夫です。」


晴人はそう答え、教科書とノート、筆入れを取り出し、広げたものの、また頬杖をついて空を眺めていた。




心配になった翔真は休み時間に晴人に声を掛けた。


「ハル、何かあったのか?」


「あ?ああ。うん。」


晴人はそのまま答えなかった。


「何だよ?恋の悩みか?先輩に相談してごらんw」


「ああ、うん。」


翔真はいつものように晴人をからかおうとしたが、晴人は完全にうわの空だった。翔真は晴人にその原因を聞くのは早々に諦め、隣のクラスを覗いた。


「おーい、ヒナー。」


「ん?何?翔真君、また何か忘れ物?」


「ちげーよ!今日ヒナ部活?」


「うん。でも今日はミーティングだけだから早く終わるよ?」


「夜電話していい?」


「・・・うん、わかった。」




その日の夜7時。


翔真が電話を掛けるとひなたが3コール目で電話に出た。



「今、大丈夫?」


「うん。」


「あのさ、ハルと何かあった?」


「え・・・と、うーん。」


「ハルさ、今日、生ける屍状態でさ、話しかけてもうわの空で応えねーし。」


「うん。」


「心配になってさ。あんなハル初めて見たし。」


「うん。」


「俺になんかできることある?まあ、俺で役に立つかどうか分かんねえけど。」


「ありがとう、翔真君。でもね・・・。」


「俺に言いにくいなら紗彩にでも相談してみたら?」


「うん。でもね、多分大丈夫だと思うから。」


「ハルは全然大丈夫じゃなかったぞ?今日。」


「・・・だよね。」


「今日の部活とか大丈夫だった?」


「・・・ううん。全然うわの空で、帰り道も全然話せなくて。」


「初めてのケンカってやつか?」


「ケンカした訳じゃないんだけど。うーん。」


「俺、意外と口軽くないぜ?」


「うん、知ってるよ。でもね、ハル君がどう思うかな?って。」


「ああ、まあな。でもさ、ハルをあのままにしとく訳にもいかねーだろ?」


「・・・だよね、うん。」


「で?」


「・・・あのね、進路調査、あるでしょ?」


「ああ、具体的に大学名まで書いて出せってやつな。」


「うん、それを書くのにね、話し合ったの、ハル君と。」


「ああ、お前ら進路違うから、それで落ち込んでんのか?あいつ。今さらだな。」


「それで落ち込んでるっていうか・・・なんかショックだったみたいで。」


「ヒナ、何言ったの?ハルに。」


「・・・大学ね、二つ隣の県の県立大学が第一志望だって、初めて話したんだ、昨日。」


「え!!ヒナ、大学、家から通わないのか?」


「うん、あ、第一志望受かったらね。」


「あー、そりゃあハルも生ける屍化するわな。」


「うーん。でもね、管理栄養士の資格がとれる国公立大学で、私が行けそうなところで、家から一番近いところがそこだし、授業受けてみたい教授もいるし。」


「まあさ、じゃあハルがその近くの医大に行けばいいんじゃね?」


「んー。ハル君も最初そう言ったんだけど、私ね、一度離れてみるべきなんじゃないかと思ってね。」


「あ?」


「私たち、ずっと一緒だったでしょ?だからね、一度離れてみたほうがいいんじゃないかって言ったの。」


「別れるって事?」


「う、やっぱりそう思うんだね・・・。」


「あ゛?」


「ハル君も 「それって俺と別れたいって事?」って。」


「違うの?」


「うん。別れたいんじゃなくて、距離ができてもお互い好きでいられるかどうか試すべきだと思って。」


「試す?」


「うん、試すっていうと、ちょっとなんだけど。確認したいっていうか・・・。このままずっと近くにたら、これから先もずっと不安だと思って。」


「何が?」


「ハル君が本当に私が好きなのかどうか、ずっと疑っていないといけない気がして・・・。」


「明らかにハルはヒナの事好きだと思うけど・・・。」


「でもね、それって私がたまたまハル君の近くにいたからだと思わない?」


「いや、俺はそうは思わないけど・・・。」


「ハル君はたまたま近くにいた私に情が湧いて好きだと思い込んでるだけかもって告白されてからずっと思ってるんだ、私。」


「うーん。」


「だからね、大学の4年間は距離をとって、まあ私たちの男女交際はそのまま遠距離恋愛でもいいし一度別れてもいいしって」


「言ったのか?」


「・・・うん。」


「だーーーーー。そりゃあダメだ、ヒナ。」


「でもね、別れたいんじゃないんだよ?」


「遠距離恋愛しよう、ならまだしも、一度別れてもいいしってのはだめだろう。」


「でも、ハル君、真面目だから遠距離恋愛しようって言ったら他の可能性を試せないかなあって。」


「だからさ、他の可能性を試して欲しいのかよ?」


「できれば試して欲しくないけど、色んな可能性を考えてもらわないと意味ないでしょ?」


「うーん。言われた方としてはまあ、ショックだと思うよ。」


「うん、私もデリカシーがなかったかもって反省はしてる。」


「で、ハルは何て?」


「ちょっと考えさせてくれって。」


「で、あの有様か。」


「・・・うん。」


「で、ヒナはどうするつもりなんだよ?」


「私?私はハル君がどういう答えを出すか待つつもりなんだけど・・・。」


「ハルから一旦別れることにしよう、って言われたら別れるの?」


「・・・うん。」


「付き合おうって言われて付き合って?それってずるくね?」


「・・・うん、そうだよね。・・・誤解しちゃうよね、こんなじゃ。」


「確認だけどさ、ヒナ、ハルの事、どう思ってる?」


「好きかどうかって事?」


「そう。」


「ハル君にはね、幸せになって欲しくてね。その相手が私だったら嬉しいけど、本当に私でいいのか自信がないんだ。ハル君は私の事好きだって言ってくれるし、ちゃんと気持ちも伝わってるから、それに嘘があるとは思ってないんだけど、もっといい相手がいるんじゃないかって。」


「で?」


「だからね、私がハル君の事好きかどうかって事よりも、ハル君が私以外の女の人の事ちゃんと見てから冷静に私の事を見て、本当に私の事を好きかどうかを確認して欲しいって思ってて。」


「いや、だから、ヒナはさ、ハルが他の人と付き合っても大丈夫なのかって事。」


「嫌だし、他の人と付き合ってるとこは見たくないけど・・・。だから近くにいない時に試してもらいたいっていうか・・・。」


「他の人と付き合うのを?」


「だって、このままだとハル君、私と結婚したいとかって言いそうでしょ?」


「結婚、はまあ、ハルのあの感じだと言いそうだよな。」


「私は女子だからいいけど、ハル君は男の人だから、それでいいのかなって思って。」


「ヒナ、まずさ、ハルにヒナの本当の気持をちゃんと伝えなきゃダメだろ。俺には言わなくてもいいけど、ハルにははっきり言わないと伝わんないと思う。ヒナから言ったことある?」


「ううん、なんか、言っちゃいけないんじゃないかって思って・・・はっきり言ったことはないんだ。」


「なんで?」


「なんで、だろう? ハル君の好意につけこむみたいな気がするのかも。」


「んー。ヒナはさ、まずハルに今の自分の本当の気持を伝えて、ちゃんと話し合わないとだめだろ。不安なのはハルだって一緒だろ。」


「・・・うん。そうだよね。」


「余分な事考えるなよ。」


「うん。」


「なんかいっつもヒナはもっと呑気なのに珍しいな?」


「うん、だよね。私もそう思ってる。答えが出ないんだよね、この問題に関しては。ぐるぐるしちゃって。自分でもどうしたいのか分かんなくなっちゃって。」


「まあな、難しいよな。」


「うん。」


「頑張れよ、あんなハル見てらんねーし、からかいがいもないしさ。」


「うん、ありがとう、翔真君。今からハル君に連絡してみる。」


「電話じゃなくて顔見て直接話せよ。」


「うん、そうする。ありがとね。」


「じゃあな。」




電話を切ってひなたが時計を見ると、8時をちょっと過ぎたところだった。



ひなたは晴人にラインをいれた。


「今から会えないかな?」


返事はすぐに来た。


「危ないから俺がそっちに行く。」


ひなたが晴人からのラインを確認するのと玄関のチャイムが鳴るのはほとんど同時だった。











藤村君と鈴村さんの順調でない恋の行方をちょっとずつですが書いていこうと思っています。


多分、まだ続くと思いますので、お時間がありましたら今後もお付き合いくださいませ。



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