禁術VS絶対防御
本当に久しぶりの投稿です。
こんな作品に感想をくださった方に申し訳ないです。本当にすみません!!
相変わらずの駄文と厨二具合ですがどうぞ。
「うぉぉお! 火炎拳!」
「暴風激槍!」
コウヘイが炎の拳で殴りかかるがゲンゴが放った風の槍がコウヘイを吹き飛ばす。
「くそっ! お前ら後で職員室に来ること!!」
教師たちも悪態をつきながら参戦する。
教師たちとカズヤたちのコンビネーションは即席にも関わらず見事なモノだ。教師たちがカズヤたちを上手くフォローし、カズヤたちが隙をみて攻撃を叩き込む。しかし、ミサオたちも負けてはいない。教師とカズヤたちの攻撃を完璧に防ぎ、隙があれば反撃をし上手く牽制している。
そんな状況が三分程続いた時だった。ゲンゴがポツリと呟く。
「ふむ、少しやりにくいな。絶対壁」
その言葉と共に集団を二分割するように巨大な壁が現れる。
「なっ!? コウヘイ! モミジ!」
「しまっ!? カズヤ! ココロ!」
当然、カズヤたちも二分割された。ゲンゴと相対するのはコウヘイとモミジと五人の教師だ。
ミサオと相対するのはカズヤとココロと三人の教師だ。
「サア、第二ラウンドダ」
「楽しもうか!」
◇◇
壁の向こうからは爆音や喧騒が聞こえる。
その音を聞きながらコウヘイは歯軋りをして、敵を見据える。
戦況は均衡している。しかし、向こうがどうなっているかは分からない。早く助太刀に向かわなければならない。
そのためにもコウヘイは敵をしっかり分析する。一見、熱血的でバカな男だと思われるが、実は戦闘になれば冷静になれる男だ。
その、コウヘイの冷静な思考で考えた結果、この男はヤバイという結果に落ちついた。
コウヘイはメンバーの中で最も前線に立っている。だから分かるのだ、接近するたびに走る悪寒。魔法を向けられただけで、感じる恐怖。
自分の中の危険信号が警報をけたたましく鳴らし、逃げろと叫んでいるのだ。
だが、味方がいる。その言葉がコウヘイをこの場に立たせてくれているのだ。
「もう一度俺が突っ込む!! 援護頼むぞ!」
「ダメだっ!! ヤツの魔法を知っているのだろう!? バラバラにされるぞ!!」
コウヘイがもう一度突っ込もうとするが、それを教師の一人が引き止める。コウヘイは少し焦っている。この男の強さを間近で感じているからこそ、早く仕留めておきたい。その考えが、コウヘイの心をざわつかせているのだ。
「すみません。もう一度あの男の創造魔法について聞かせていただけませんか?」
モミジが少し悪くなったムードを払拭するために手をパンパンと叩いて、言葉を発する。
「暴風の服を身に纏い、近づいたモノを粉砕する魔法、暴風衣。風魔法の上位種だと予想される魔法です」
「近づくのが難しい訳か」
「やっぱり誰かが前線で掻き回し、後方からたたみかけるしかないな」
「そうですね。まだ、敵も積極的にかかってくるわけでもないですしね」
モミジが同意して作戦は決まった。
「俺がまた前衛で踏ん張ります!!」
コウヘイがそう叫んで突っ込もうとするが、また教師の一人に引きとめられる。
「落ち着けって!! お前は少し休め!! 今度は俺が前衛をやる! 援護頼むぞ!!」
コウヘイは少し反抗したが、しぶしぶといった感じで了承した。
「よしっ! 踏ん張るぞ!!」
◇◇
「なんだ、今度はあの小僧ではないのか……」
ゲンゴは不満気に言う。
「俺で悪かったな! 毒霧!!」
その、言葉とともに紫色の霧がゲンノの周りに立ち込める。これは、少しでも吸えばどんな生物でも殺す、毒の霧だ。
だが、まるでゲンゴの周りに渦巻く暴風が毒霧の侵入を許さない。
「珍しいな毒魔法か……だが、嵐の前にはどんな小細工も無駄だ!」
その瞬間、ゲンゴを中心に暴風が吹き荒れる。毒の霧は簡単に霧散し、教師はもちろん後ろで援護していたコウヘイやモミジも吹き飛ばされて、地面に叩きつけられる。
「かはっ!? くっ! 無茶苦茶ですね……力の差がありすぎる」
「でも、ふんばらねぇとな! それにやっと楽しくなってきたんだ!!」
コウヘイの眼にはまだ闘志が燃え盛っている。その顔を見たゲンゴはフードから覗かせる口を釣り上げる。
「そうこなくてはな。暴風砲!!」
ゲンゴの手から風の砲撃が放たれる。その威力はコウヘイとモミジを飲み込み、後ろにあった木々をなぎ倒してしまった。
「なっ!? 赤城! 緑山!!」
教師たちが愕然とする。当たり前だ。自分の教え子が目の前で恐ろしい暴力に飲み込まれたのだから。その顔は愕然から悲痛に変わり、最後には憤怒に変わった。
「ゆるさねぇぞ! よくも二人を!」
教師たちがゲンゴに遅いかかろうとした時だった。
「先生落ち着いてください!!」
さっき吹き飛ばされたはずのモミジの声が響いた。そう二人はうまくあの攻撃を耐え切ったのだ。
「なんだと……完全に直撃したあの技を防げるはずがーー」
ゲンゴはフードからでも分かるほど表情を怪訝なモノに変え、分析していた。だが、何者かがゲンゴの顔面を殴り飛ばした。
教師たちはおろか、ゲンゴでさえも察知できなかった一発。しかも、完全に暴風衣を貫いたのだ。
(なに……?)
十メートル程吹き飛ばされた。表情を歪ませながら吹き飛ばされた彼は倒れこんだゲンゴは、ゆっくりと上体を起こしながら自分を殴り飛ばした人物を見据える。
やはり、そこにいたのはコウヘイだった。だが、先とは明らかに違う。制服はボロボロ、傷や穴がついている。だが、彼に外傷はない。それに先ほども赤い炎を纏いながら戦っていたが、今は違う。蒼い炎が身体中に纏っている。
ゲンゴは冷静に分析する。確かに暴風衣は破られたが、それは不意打ちだったからだ。万全の状態ならあの攻撃は防げる。それよりもなぜ、あれほどに攻撃力が上がった? あの蒼い炎が原因なのは分かるが、なんだあの炎は?
「時間がねぇ……いくぞ」
その言葉が聞こえた瞬間にコウヘイはすでにゲンゴの前に立っていた。
「な、なに!? はやーー」
言葉を発する間もなく、ゲンゴが吹き飛ぶ。空中に浮いた巨体はすぐにコウヘイの更なる追撃で地面に堕ちる。
「クソガァァァァ!!! 図に乗るなよ!!」
砕けた地面の中からゲンゴが現れる。さっきのような余裕な雰囲気はない。怒りを露わにした様子だ。だが、これはゲンゴの演技だ。速さでは完全に負けている。なか、誘い出すしかない。
切れて冷静を失っている様子を装い、コウヘイを誘い出し、仕留める。幸い、先の攻撃で吹き飛ばされていたが、実際には衝撃だけでダメージはほぼない。敵にもこれは分かっているはず。このゲンゴの様子をみれば、コウヘイはゲンゴの暴風衣を完全に破壊する威力の攻撃を放つはず。大技を放つには必ず、隙が生じる。そこにゲンゴは大技をぶつけてやろうという作戦だ。
ゲンゴは自分の作戦を考えている様子に自嘲する。完全に油断して、ボロボロにされ作戦を考えなければ仕留められない程に追い詰められたのだ。だが、これ以上失態を見せるわけにはいかない。確実に次で殺す。
「出てこいっ!! 殺してやるぞクソガキガァァァ!!!!」
「そうかならいくぜ」
声が真後ろから響いたことに気づいた時にはすでにゲンゴの身体は宙に舞っていた。そして、コウヘイはそんなゲンゴを見据えながら魔力を高める。
ゲンゴは宙に舞いながらもコウヘイを見つめ、ニヤリと笑う。はたから見れば、圧倒的にゲンゴが不利だが、そんな状況でもゲンゴがニヤリと笑うのだ。罠に掛かったと。
「確かにお前は強いよ!! でもオレの勝ちだぁぁ!! 超暴風砲!!!」
ゲンゴは吹き飛びながら魔法を放つ。彼のような魔法のエキスパートだからできる高等テクニックを見せつけながら放つ魔法は、先の風の砲撃の比ではない威力の風がコウヘイを飲み込んだ。その威力は学園の正門をなぎ倒して学園外の民家を何軒も倒壊させた。
「クハハハハハハハハハハハハハ!! ……ハ?」
そして、コウヘイの身体はバラバラになり死んでいるはずだった。でも……
「なぜだ! なぜ立っていられるっ!!」
ゲンゴが声を荒げる。これは、演技でもなんでもない。そう、コウヘイはその場に立っていた先ほどと全く変わらない体制で片腕は無く、身体中は血だらけで赤色しか見えない。普通に見れば死んでいるはずだが、ゲンゴには分かる。奴はまだ死んでいない。
◇◇◇
そして、教師たちとモミジはあの風の砲撃に巻き込まれないように端に移動し、戦闘に巻き込まれないようにしていた。この戦闘はもう、自分たちの手に負えるモノではないと分かっているのだ。
だからコウヘイの勝利を信じて観戦することしかできない。だが……
「くそ! コウヘイがやられた! 助けに行かないと!!」
「落ち着いてください先生。あの状態のコウヘイは圧倒的な身体能力とともに再生能力も持っています。まだ、コウヘイは戦えます」
「そうだったのか。それなら奴に勝てるな!」
「いや、そんな甘い魔法じゃねぇだろう……おそらく」
「ええ、今使っているコウヘイ魔法は蒼炎戦舞。赤城家の魔法の中の唯一の禁術です。あれは命を燃やす炎、蒼炎を創り出して身体能力と再生能力を限界まで高める魔法です」
「命を燃やすだとじゃあコウヘイは!!」
「ええ、だから禁術なのです。コウヘイも自分のことは分かっているでしょう。あと一分程で限界を迎えると」
「だったらなおさら助太刀しないと!」
だが、モミジは教師たちの前に立ち塞がった。その顔は冷静な彼女には似合わない、正に必死の形相というやつだろう。
「お願いします! 私はコウヘイの願いを叶えたい!!」
アイツと決着をつけたい。コウヘイのそんな願いを叶えるために彼女は立ち塞がるのだ。
◇◇◇
一方ゲンゴはそのコウヘイの姿に驚愕しながらもまだ、戦意を衰えさせない。ゲンゴも流石に分かっている。次の一撃が最後だ。
ゲンゴは今日何度目になるか分からない笑みを浮かべる。だが、今日で一番の笑顔だった。
「認めてやるよ赤城綱兵!! お前は俺の強敵だ!!!」
一方、コウヘイもゲンゴを見据えながらいろいろな事を考えていた。自分より明らかに格上の強敵に接戦できた達成感、このまま負けるかもしれないという不安感、そして、この楽しい戦いがもうすぐ終わるのだという不満感だ。
だが、今だけは。蒼炎戦舞により活性させられた全身体と精神を敵に向ける。
「負けないオレは負けないんだ!!」
「災禍ノ暴風!!」
「赤城式蒼炎奥義・蒼天墜!!」