任務説明&作戦会議
魔力と魂の吸収を終えたマヤはコウガと話をしていた。
「相変わらずお前の『創造魔法』はチートだな」
創造魔法は名の通り創造された魔法のことだ。鮮血魔導書や魔喰はこれに属する。
「まあね。それよりも要件!!」
「あぁーー! そうだったな。うん! 今回頼みたい事はこれだ!」
コウガそう言って数十枚の書類をマヤに渡した。
その書類に目を通しマヤは引き攣った笑みを浮かべる。
「おいおい……なんつー面倒な任務をよこしてくるのよ」
ホタルが怪訝な表情を浮かべて書類をひったくる。そして、みるみる表情が悪くなる。
「面倒だね」
依頼の内容はこんな感じだった。
・六色学園に潜入し六色学園の学園長、如月 玄武を暗殺せよ。そして六色学園に保管されているであろう『魔剣』を奪取または破壊せよ。
本当にすごく面倒だな。
「いいじゃん。学園生活を満喫してこい! ハーレム築け! ハーレム!」
「いやでも犯罪組織のリーダーが学生をやるなんて……」
「そうかぁ〜制服美女はいいぞ〜」
「た、確かに!!」
「確かにじゃない!」
ホタルにつっこまれてしまった。
「しかし、制服美女は魅力的すぎる」
「知らない。資料にしっかり目を通せ」
そう言ってホタルは乱暴に資料をマヤに押し付ける。
そこには学園の重要人物の情報が書かれていた。そこでマヤは不自然な箇所に気づく。
「ん? 生徒が要注意人物? 教師とかじゃなくて?」
そうそのページには任務遂行にあたっての要注意人物が書かれていたがその中に教師だけではなく数人の生徒の名前も載っていたのだ。
「あぁ、その事なら資料に精細があるはずだ」
マヤは言われたとおり資料にしっかり目を通す。
「ぷっ!! なにお前の組織のメンバー生徒にやられてるの!?」
マヤは吹き出しながら言う。明らかにコウガを馬鹿にしている。
「てめぇ……まあその通りだ。幸い組織の末端の奴だったからよかったものを……俺が直々にゴミ掃除に行かされた」
「ふーん。その捕まった奴は始末したんだ」
「あぁ、実力はそれなりにあったんだがな。利口じゃなかったな。最終的には裏切りやがったし」
コウガはそう言ってさらに数枚の資料をマヤに渡した。
「これは? あぁ、その裏切り者君の資料ね…」
その資料には一人の少女の顔写真と精細が書かれていた。
資料によるとその少女は学園長の暗殺の任務の途中に正体がバレたらしい。また彼女が学園内に『魔剣』という兵器が存在する事を判明させた。
働きは問題無いのだが任務の途中で組織を裏切りにより学園側についたことで静粛の対象になった。
またこの情報は彼女と共に潜入していた者が送ってきている。そして今回の任務もその者の手引きで潜入するようだ。
「ラッキーだね。裏切り者がでたのにまだ潜入していれるんだ」
「変な事言われる前に潰したからな。今思うと本当にイラつくな。あとこれは『魔剣』についての資料」
コウガはそう言ってまた資料をマヤに渡した。
「資料だらけでウザい」
マヤは明らかに不機嫌だ。彼は考えて作戦を練ることや頭を使うことが苦手なのだ。
資料には『魔剣』の情報が書かれていた。その情報によると魔剣と呼ばれているが形状は剣ではないかもしれないのだ。つまり生物や人間かもしれないという事、また魔剣の魔力が解放されると一つの都市が灰になるらしい。学園内でその魔力がコントロールできていないのか度々暴走の様な事が起こっているらしい。またその暴走を抑え込む為の番人またはパートナーの様な存在がいるのではないかと言われている。
マヤはその資料の魔剣のパートナー疑惑のある人物のページを見て微笑んでいた。
「面白くなってきた」
マヤは誰にも聞こえない様な小さな声で呟いた。
【黒月 一夜】
そのページにあったのはマヤの弟の名前だった。
◇◇◇
とある暗い部屋の一室。そのに異様な雰囲気を纏う六人がいた。その六人が会議室の様な部屋で長い机を囲っている。
「これより【月光ファミリー】緊急会議を始める! この度はメンバー全員が集まって嬉しく思う!」
パチパチパチ……
「さてみんな事前に配ってあった資料に目を通してくれ。今回の任務の精細が書いてある」
「マヤさん質問です」
「何かね? リュウセイ君」
「あのーこの任務の内容に学園に潜入してハーレムを築くっていうのがあるんですけどどういう事ですか?」
「そのままの意味だよ」
「分かってるよ! 俺が言いたいのは何でハーレムを築くのかって事だよ!?」
「分かってないね。リュウセイ!!」
その問いに答えたのはヒナだった。
「学校だよ! 制服だよ!! 青春だよ!!! 学園には美女が溢れかえっているのだよ! 逃さない手はないでしょ!」
「ヒナまで……そうじゃなくてしっかり働きましょう! 任務なんですよ!!」
「うるさいなぁ。そんなんだからリュウセイは童貞なんだよ」
「それは関係ねぇだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「うるさいよ。童貞」
「姐さんもですか……」
ホタルに叱られリュウセイうな垂れてしまった。
「フフフ……ヤバイね。ムラムラしてきた。濡れ「よーし資料に目を通してくれ。そしてヒナこの会議室から出てけ!」」
ヒナの不穏な発言をマヤが無理矢理払拭する。
「お断りだぁぁぁあ!!」
「ヒナうるさい」
「うるさいぃぃぃいだって? なら黙らせてみなよぉぉぉお!」
ドスン!!!
轟音をたててホタルが片手で机を叩き割る。
「言ったなコラ? 潰してやる」
ヒナの口調がおかしくなってきた。これは彼女が興奮している証である。そして、ホタルが物を壊したこれは彼女が戦闘前に興奮や怒りを抑える為にする行為だ。つまりヒナとホタルはこれから確実に喧嘩を始めるだろう。
だが他の四人はヤレヤレという雰囲気だ。
ヒナとホタルの喧嘩だが定期的に行われている。だからメンバーは皆慣れてしまったのだ。
「落チ着ケ二人トモ。今ハ会議中ダゾ。ヤルナラ作戦ノ説明ガ終ワッタ後外デヤルノダ」
「その通りだぜお二方。とりあえずマヤの話を聞こうや」
突然二人の異質な男が殺気を撒き散らヒナとホタルを制したのだ。当然ヒナとホタルの注目がその男に向けられるが二人は気にしない。それは二人がヒナとホタルと同等または上の力を持っている証拠だ。
「マッタク会議中グライ静カニシテホシイモノナノダ」
片言で話す男(?)は全身を黒い甲冑で纏い、甲冑の隙間からは黒い靄の様な物が漏れ出していて気味が悪い。しかし、この男も実力は確かで月光ファミリーではマヤに次いでの強さを誇っている。
『月光 操』
それが彼の名前だ。
「やっぱ仲が悪いな二人とも」
もう一人の男は大柄で体格は二メートル以上あるであろう。身体は鍛えあげられ風格もある。スキンヘッドで目つきは鋭く一般人が彼に睨みつけられれば尻尾を巻いて逃げていくだろう。
『月光 源吾』
それが彼の名前だ。
「分かりましたよぉぉぉお。仕方ないなぁぁぁあ」
「ごめん取り乱してた。作戦の資料を配ります」
そう言ってホタルは資料を全員に配った。
「今回の潜入作戦は私たちの正体が世間に知れ渡っていない事を利用して行う。潜入するのは私とマヤだ。今回の作戦の要だけど資料に書いてあるとおりミサオだからがんばって」
ホタルがそう言うとミサオの雰囲気が少し強張った感じがした。
「お前の魔法に期待してるからな。がんばってくれ」
それを見てマヤがミサオを激励する。マヤはなにかとしっかりリーダーをしているのだ。
「任セテクレ。シッカリ任務ヲコナシテクルノダ」
甲冑で分からないがどこかミサオは嬉そうである。
「んじゃ各々しっかり役割をはたしてこの作戦成功させるぞ!!」
「了解」 「ラジャー!」 「了解です」 「承知シタノダ」 「任せろ!!」
各々返事をしっかりして準備に取り掛かる……かと思いきや、やはりヒナとホタルはこれから喧嘩を始めるらしい。
こんな風に作戦会議は終わった。