挿話 ある神の誕生①
今回短いです。
挿話ですが本編とは関係があります。時々この挿話を投稿します。
できれば月光ファミリー全員の過去の話をいれられたらなぁ……
これは少し昔の話。
どれくらい昔かというと、まだ魔神も月光ファミリーも誕生していない程昔。
ここは、ある国の寂れた廃墟が集う街の一角。そこに一件の家がある。周りの建物と比べて少しだけ綺麗なその家の中には、まだ十を少し越したぐらいの年齢の少女と少年が暮らしている。
「キミとボクは似たもの同士だ」
その家のリビングで少女が、唐突にそう言う。その言葉に少年は眉を顰める。
「なんだよ嫌味か……落ちこぼれと戦乙女は天と地ほどの差があるよ」
少年はぶっきらぼうにそう返す。その通り、この少女は戦乙女と言われる程戦場で活躍してきた傭兵だ。そして、少年も故郷では魔法の才が壊滅的になく、落ちこぼれと貶されてきた。
「そうでもない。ボクも落ちこぼれだ。未だに魔法の一つもまともに扱えない」
「共通点はそれだけか」
少年はもうまともに会話する気もないのか武器の手入れを始めている。そんな少年の様子を見て、少女は苦笑いを浮かべる。
「キミとボクの共通点なんて腐る程あるよ。戦いが大好きなところ、目立ちたがり屋なところ、大きな野望を持っているところ、そして……」
少女は少年の目の前までやって来て、当たりそうになる程顔を寄せた。
「お互いに愛し合っているところ!」
満面の笑みで話す女性に流石の少年も顔を逸らし赤面する。その様子に少女はおかしいのか笑い出す。
「……よくそんな恥ずかしいセリフを堂々と言えるな」
少年はなんとかやり返すようにそう言った。
「恥ずかしいかなぁ? 寧ろボクはもっとキミとイチャイチャしたいよ……とっ、もうこんな時間だ。行ってくるね」
「気をつけてな」
少年はやはり目も合わせない。でも、少女は嬉しそうに微笑む。
少女にとっていつもの光景。平凡だけど幸せな日常。その生活を噛みしめるかのように少女は笑顔を浮かべていた。だが、隠れ家から出た少女の雰囲気は突然、鋭い戦士のモノに変わる。
あらゆる戦場を生き残ってきた傭兵のモノに。
「……この戦争、早く終わらせる」
少女は、どんよりした空をジッと見つめる。全ては笑顔を忘れた少年の笑顔のために。
「そして、ボクはこの世界の神になる」
少女の美しく真っ直ぐな瞳がゆっくりと濁っていくのが分かる。少女は止まらない。たとえ、その道中がどんな過酷なモノでも。
これは、少し昔の話。魔神が誕生する由縁となった悲しい話。
分かると思いますが、マヤの過去の話です。