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『伝説の剣』Dragon Sword Saga 外伝1  作者: かがみ透
第三章 伝説の剣 Ⅰ
9/21

バスター・ブレード(3)

多少の残酷表現を含みます。

改行、表現その他、読みやすく直しました。(2016.8.15)

 数日後、レオンは家の外で薪を割っていた。

 本日の食事当番は、ケインの方であった。


(ふ~ん、いい匂いじゃないか。あいつ、最近料理上手くなってきたな)


 近頃、レオンはケインの夕飯が楽しみになってきていた。


 斧を振り上げ、薪を割るが、薪は最後まで割れず、斧も途中までしか切り込まれていない。


 微妙に手元が狂ったのか?

 自分の右手を眺めながら、指を動かす。

 少し、(しび)れているような気がする。


(最近、ごくたまにだが、右手が痺れることがあるような……)


「レオン、晩飯出来たぞ!」


 窓からケインが顔を覗かせた。

 レオンは、痺れを振り落とすように手を振りながら、家の戸口に向かう。


「なかなか美味いじゃねえか」


 肉の煮込みをかじりながら、レオンは称賛していた。


「肉屋のオバちゃんに聞いたんだ」


 ケインが得意になって、手を腰に当てた。


「おお、あのオバちゃん、いろんな料理知ってるからなぁ。ケイン、お前、『おかみさん』に向いてんじゃねえの? 顔だってさ、昔っから、目がデッカくて、女の子みたいだったしさ」


 レオンがからかう。

 途端に、ケインは膨れっ面になった。


「なんだよー、カオのことは言うなよ。これでも、コンプレックスなんだからな!」


「美少年だったって、褒めてやってんじゃねえか」


「美少年とは違うことくらい、俺だってわかってるよ! 男らしくない顔だってだけだろ? 小さい頃、よく女に間違われてたんだ。『ママそっくりのかわいい女の子ねえ!』な~んて近所のおばさんにも言われたしさー。


 それがいやだったこともあったけど、産みの母さんがまだ亡くなる前に、ちょっとだけ剣を教えてもらって、――多分、母さんは、自分の命があと僅かだってわかってたんだろうな。いざという時のために、俺がひとりでも自分の身を守れるようにって、思ったんだろう。


 俺は、女の子みたいって言われるのが(しゃく)で、病気がちな母さんを守れるように、強い男になりたくて、稽古してた。でも、野盗には、全然通じなかったけどな」


 ケインの話を聞いているうちに、レオンも、彼との出会いを思い起こしていた。


「そう言やあ、お前、いい構えしてたもんな。あの時、その構えを見て、もしかしたら、こいつはすげえチビなんじゃねえかって思って、ちょっと戦闘振りを拝見してたら、まだあんまり実戦には慣れてなさそうだったから、慌てて止めに入ったんだったな」


「あっ、ひどいな! いたいけなコドモが虐待されてんのを、黙って見てたのか?」


 ケインが笑う。


「それにしても、お前のかーちゃん、すげえな! 女戦士だったのか? 剣を教えられるなんて、そんな女、滅多にいねえぞ」


「ううん、母さんは普通の人だったよ。俺がまだ三歳くらいの時に聞いたことだから、ちゃんとは覚えてないんだけど、母さんのお父さん、つまり、俺のじいちゃんは、武道の達人だったんだって。俺の父さんだった人も、じいちゃんの弟子の一人で、一流の武道家で剣士だったらしい。会ったことはないんだけどね。それで、かあさんも護身くらいはできたらしいよ」


 レオンは、突然真顔になり、ケインをじっと見つめた。


 それには気付かず、ケインはパンをかじり、煮込んだ肉を頬張った。


「……ケイン、お前が生まれた村は? 確か、お前は病気の母親と、旅の途中で立ち寄った村に、そのまま住んでたよな? その前にいた村の名は……?」


 ケインの顔をじっと見据え、レオンは慎重に尋ねた。


「そうだなあ、何ってったっけなあ。……確か、ネル――いや、違う、ルーヴェなんとか……忘れちゃったよ」


 そう言ってスープを啜る彼をしばらく見つめ、レオンは、まるで答えを聞くのを恐れてでもいるかのように、躊躇(ためら)いがちに、再び尋ねた。


「……お前、いくつになる?」


「やだなあ、レオン、俺のトシ、忘れちゃったのか? 一五だよ」


 ケインは煮込み汁を最後まで啜り終えると、席を立った。


 レオンはずっと黙りこくってしまい、食事の手も止まっていた。


 それへ、ケインは、ちらっと目をやっただけで、そのまま自分の分の器だけを、流し台へ運んだ。


(……もしかしたら、……いや、そんなはずは……だが、でも、……いや、しかし……)


 レオンの思考は、同じところを、ぐるぐると回っていた。




 とっぷりと日が暮れていた頃、一台の幌馬車が、森の中、典型的な山賊の格好をした男たちに、襲われていた。


 幌馬車が転倒すると、二〇人もの山賊たちは、大きな段平や斧を、逃げ始めた二人の男女と、ひとりの子供に向けて、追いかけっこでも楽しむかのように振り回していた。


「待て!」


 山賊が、声のする方を振り向く。

 暗がりの中から現れたのは、闇のような黒い髪を後ろで束ねた、浅黒い肌の男だ。

 手には、段平にしては大き過ぎる剣を持っている。


「なんだ、てめえは!?」


 賊たちは、凶悪な顔で、レオンを睨む。


「俺は、お前たち賊に関しては、ハナが()くんだ。ちょっと荷馬車の音が聞こえたもんで、こんな夜遅くだから心配して様子を見に来てみれば、案の定ってわけだ。ついでに薪でも拾っておくか」


 と、わざと大袈裟に、肩を竦めてみせた。


「なんでえ、キコリか? ふざけた野郎だぜ!」


 禿げ頭の男が、バカにしたように言った。


「罪もない人々を襲うのはやめな。暴れたいんだったら、俺が相手になってやるぜ」


 レオンがにやっと笑い、手にしたバスターブレードを、挑発するように振ってみせた。


「へん! 誰が、お前みたいなつまんねえキコリ野郎なんぞ、相手にするか! こっちの方がいいに決まってんじゃねえか!」


 そう言った禿げ頭の賊が、目の前の女を押し倒した。その途端——


 男の横顔に、レオンの飛び蹴りが食らわされた。

 賊は、悲鳴を上げながら、ごろごろと転がった。


「……や、野郎! よくもやりやがったな!」


 捕まえていた男と子供を放り出し、賊たちは、すべて、彼を取り囲んだ。


「そうそう、そうこなくっちゃな!」


 レオンは山賊に向かい、フッと笑ってみせた。

 女は彼に助け起こされ、連れの男と子供のもへと走る。


 どうやら家族のようだ。

 レオンは、目の端にその様子を見て安心し、賊を見据える。

 その時だった。


 ぐるるるるるるるる……! 


 獣のうなり声に近いものが、辺りに(こだま)した。

 山賊たちも驚いて、辺りを見回す。


 レオンが小さく舌打ちした。


「魔獣か!」


 彼の低い呟きに、賊たちの中には「ひっ!」と叫ぶ者もいる。


「夕方ならまだしも、こんなに日が暮れちまってたら、そりゃあ魔物も出るわな」


 レオンのセリフに、怯え出す賊の数も増えていく。

 そして、森の奥から、『ざわめき』がやってきた!


「ひゃあーっ!」

「うわあああ!」


 賊のひとりが恐怖に耐えられず絶叫すると、火がついたように、次々と騒ぎ始めた。

 レオンは、剣を掴む手に力を込める。


 『闇に棲まうものたち』は、今、その姿を(あらわ)にした!


 ヒトなど簡単に飲み込めそうなほどの、大きく鋭く尖った(くちばし)を持つ、巨大なトリであった!


 といって、羽のようなものは一切なく、代わりに、固そうな赤い皮膚が全身を覆う。足の爪も鋭く、翼の角にも、同じような角張った爪を生やす。


 その巨大トリに続くものは、ヒトよりも少し大きい程度であったが、上半身がトリ、下半身がヒトで出来ているという、おぞましい姿で、その数は何十匹といたのだった。


「なんだ、こいつらは!?」


 山賊たちが悲鳴のような声を、それぞれ上げる。


「ミドル・モンスターだ! 召喚した魔道士が、近くにいるはずだ!」


 レオンが叫び、油断なく辺りを見渡す。

 ふと、巨大トリの嘴の脇が、赤く濡れているのが目につく。ヒトの衣服のような切れ端が、爪の先にもついていた。


「召喚した後、喰われたな!? ちっ! 誰だか知らねえが、生半可な魔術で、モンスターなんか召喚すんな!」


 レオンが、憎々し気に、モンスターを見上げる。


「いやだあ! 俺は抜けるぞ!」


 モヒカン刈りの男が、武器を放り、走り出す。

 その途端、トリ顔の獣人モンスターたちが、さっと男を追いかけた。

 瞬く間に、男は囲まれてしまい、絶叫と共に、姿が見えなくなっていった。


「ああっ! アル!」

「アルが喰われた!」


 半狂乱になった賊たちが、逃げ惑う。


 巨大トリは、バサッバサッと翼を羽ばたかせた。恐れおののく人間たちに向かい、強風が襲いかかる。


 レオンはバスターブレードを構え、一気にモンスター目がけて突進した!


 が、トリの本体に斬りつけるまではいかず、盾にした翼を傷付けたに過ぎなかった。


 彼の腕には、強い衝撃が走り、危うく剣を落としてしまいそうになる。


「……またか!?」


 レオンの剣を持つ手は、薪を切っていた時のように、再び痺れていた。


 山賊たちの上げる悲鳴が、徐々に少なくなる。


 巨大トリの耳障りな雄叫びが、辺りに響き渡り、山賊を相手にしていた獣人モンスターたちが、わらわらと集まる。


(来るーー!)


 ただならぬ気配を感じたレオンは、剣を左手に持ち替えると、悲鳴を上げる三人の家族連れを後ろに庇い、魔獣の前に立ちふさがった。




「なんだ? 今の変な声は?」


 ケインは、寝室のベッドのシーツ直す手を止めた。


 近くに見える森が、なんだかざわめいているような気がして、不審に思い、窓の外に目を凝らす。


「なあ、レオン、森の方でーー」


 レオンの寝室を覗きにいくが、彼の姿はない。


 ケインは落ち着かない気持ちになり、剣を手にすると、ざわめく森へと駆け出していった。


「おーい、レオン! どこだー!」


 森の中へ入ろうとして、ケインはピタッと足を止めた。


「……血の匂い……!」


 それは、戦場で嗅ぎ慣れた匂いであった。彼は、妙な胸騒ぎがして、走り出す。


「なんでこんなところで、血の匂いなんか……? もしかして、野盗か!?」


 いくらもいかないうちに、また足を止める。


 ヒトの頭が落ちていたのだった!


 恐怖のために開き切った目と口、バラバラになった腕や足には共通する、何かに喰いちぎられたように(えぐ)れた跡。

 革のベルトの切れ端、斧、段平——辺りには、山賊だったものの残骸が、飛び散っていたのだった。


「こ、これは……、人間の仕業じゃない!」


 ケインは、レオンの名を呼びながら、奥へと入って行くと、子供の啜り泣く声が遠くから聞こえてきていることに気付いた。


「わあ〜ん! わあ〜ん!」


 子供の姿は見付からないが、その声は、正面の岩の辺りから聞こえてくるように思えた。


「おーい、誰かいるのか!」


 ケインが歩み寄っていき、岩の前まで来て、ハッと息を飲んだ。


「……レオン!」


 ケインの半分くらいの高さの、その岩だと思っていたものは、レオンの座っている姿であった!


「レオン! ……レオン! どうしたんだ!? 何があったんだ!?」


 ケインは、必死に彼を揺さぶった。レオンの目が、うっすら開いた。


「……よう、ケインか……?」


 レオンは、にやっと笑おうとして、苦しそうに片目を瞑る。


「レオン、どこかケガしてーー」

「うわ〜ん!」


 いきなり、ケインの(ふところ)に、小さな子供が飛び込んだ。

 それまで、レオンが抱いていた子供だった。


「この子は?」


「……守りきれなかった……その子だけしか……」


 苦しそうに、レオンが呻く。


 泣いている子供を抱えると、ケインは、ハッとして、レオンの後ろに転がっているものを見つめた。


 それは、二体の変わり果てたヒトであったものの姿だった。


 その奥には、巨大なトリのようなものが、全体を黒ずんだ緑色に染めて、転がっている。

 その周りにも、黒ずんだ物体が、てんてんと散らばっていた。


「な、なんだ、あのでっかいトリは! それに、あの黒いやつらはーー!」

「モンスターだ」


 うろたえるケインに、レオンが呻くように答える。


「あれがモンスターだって!? あんなデカいヤツが、モンスターだっていうのか!?」


「……あれは、夜になると、山や森をうろつく下等なモンスターどもとは……わけが違う。……もう少し強力なモンスターだ。あんなものは、滅多に出て来るモンじゃねえんだが、……呼び出したヤツは喰われちまったらしい。……それより、その子をーー」


 ケインが、レオンに肩を貸そうと、彼の身体を起こすが、彼は、そのまま俯せに倒れた。


「……レオン?」


 ケインは、ハッと息を飲んだ。レオンの背には、深い傷が三本、斜めに走っていた。


 段平や斧などの刃物で斬りつけたような、きれいな切り口とは異なる、何かで抉ったような、まるで、巨大な野獣の牙か爪のようなものの跡であった。


(さっきのでかいモンスターにーー!)


「待ってろ、レオン! 今、『せんせい』のところへ連れていくからな!」


 ケインはレオンを担ぐと、泣いている子供の手を引っ張りながら、出来る限り急いで森を抜けていった。




「まったく、悪運の強いヤツじゃ!」


 村の医者である魔道士の家に着いた時、レオンは、寝台の上に横たえられ、白髪頭に白い口髭を生やした、太った老人の治療を受けていた。


 治療といっても、老人が両の掌を、レオンの怪我の部分に(かざ)しているだけで、レオンの背を抉った深い傷は、みるみる塞がっていったのだった。


「おぬしたちの見たものは、おそらく、ミドル・モンスターじゃな」


 『治療』をしながら、老魔道士は、真剣な表情になる。


「最近、よくない噂を耳にしたのじゃが、モンスターを召喚した魔道士が、次々と、自分の呼び出したものに喰われていっているらしい。制御出来ぬのなら、始めから召喚しなければいいのじゃが、どうやら、召喚したものとは違うものが出て来てしまっているというのじゃ。


 『魔道士の塔』が調べたところによると、どうも『時空の(ひず)み』というものがあちこちに出来ていて、そこを通って、少々厄介なレベルのモンスターどもが、この世界に現れ始めているそうなのじゃ」


 ケインは、驚いて、老魔道士の顔を見つめた。

 レオンは驚いてはいなかったが、話には聞き耳を立てている。


「ほれ、もうだいたい良いぞ。発見が早かったからの。もうちっと遅かったら、傷口が化膿してしまい、治療中もっと苦しむことになったじゃろう」


 太った老人は、俯せているレオンの背を、音の出るほど強く叩いた。


「ちぇっ、なんでえ」


 レオンは、面白くなさそうに口の中で呟き、起き上がって、ぼろぼろになった衣服を着ようとして、やめた。


「まったく、ムチャすんなよ。もうい加減オヤジなんだからさ」


 ケインが、ほっとしたように、その様子を見て、わざとからかうような口調で言った。


「ケイン、その子をリディアのところへ連れていっておあげ。まだ施設におるじゃろうからな」


「うん」


 ケインは、老人に頷くと、泣き止んで放心してしまった子供の手を引き、部屋を出て行った。


「さて、レオン、そっちの手を見せてみよ」


 ケインの姿が見えなくなると、老人は、真剣な表情になり、レオンを見た。


「ちっ、せんせいの目はごまかせねえか……」


 レオンは諦めたように笑うと、素直に右手を差し出した。

 魔道士の老人は、その手を取ると、しばらく無言で見つめていた。


 (はた)で見ている分には想像もつかないことであったが、老魔道士は、レオンの手に、全神経を集中させていた。

 つまり、魔力を使い、『診ている』のだった。


「……どうだ?」


 心配そうに、レオンが魔道士の顔を見る。

 魔道士は、溜め息をついてから、口を開いた。


「剣を振るのは、これからは、大分難しくなってくるじゃろうな。このての病気は、ワシの魔力を持ってしても、完治は出来ないじゃろう。もっと上の魔道士なら、可能かも知れぬが……。どうじゃ、『魔道士の塔』へ行ってみるかね? もっとも、このままでも日常生活には差し障りはないが」


 レオンは老人の話を黙って聞いていたが、やがて、首を横に振った。


「いや、いい。あんたには、いつも良くしてもらってて悪いが、俺は魔道士なんぞが集まってる得体の知れねえところには、行く気はしねえ。死ぬほどの病気でもないんだったら、なおさらだ。例え、そうだったにしても、無理にあがこうとは思わねえ。


 俺は、ヒトは、自然にしてるのが一番いいって思ってるからな。得体の知れねえ魔術なんかで生き長らえても、そんな不自然なことをする方が、後で怖い目を見るような気がするぜ」


「まったく、おぬしの魔道嫌いも筋金入りじゃな! まあよい。さっきも言った通り、死ぬほどの病気というわけではないからの。ただし、その手で剣を振るのは、もう無理じゃ。特に、その大剣はな」


「わかってるよ。これからは、左利きに転向するよ」


 レオンは老魔道士に向かい、苦笑いした。

 老魔道士は、笑いもせずに、それを見ていた。


「それより、せんせい、さっきの話だと、その……さっき俺が戦ったデカい魔獣は、これから頻繁に現れるかも知れないのかい?」


「おそらく、そうじゃろう」


「ーーとなると、ケインにも、対魔物用の剣を持たせてやんなくちゃなんねえな。だが、並の鍛冶屋じゃあ、そんなモン作れないだろうから、腕のいい鍛冶屋ってのを、探さねえとな。それも、結構、魔の世界にも精通しているような、そんなヤツいるのか?」


「おるとも。ごく少数ではあるが、東方のある小さな国とか、中原のアストーレ王国あたりにも、そんな鍛冶屋がいるらしいということは聞いたことがある。その鍛冶屋を当たってみるか?」


「東方にしても、中原にしても、ここから、大分あるなぁ。そこへ向かう最中に魔物に出てこられでもしたらーー」


「または、普通の剣でも魔力を吹き込めば、魔物にも効くという。だが、ワシ程度の魔力では、たかが知れておるし……。それこそ、『魔道士の塔』の上級魔道士の方に頼めば、絶対なのじゃろうが、……たくさん金を取られるかも知れぬぞ。あそこは、結構がめついからのう」


 老魔道士は、太った身体を揺すって、ひとりでおかしそうに笑っていた。

 レオンは、黙って腕を組み、考え込んでいた。


「そうそう、それと、もうひとつ方法はあるぞ」


 老人は、何かを思い付き、明るい声を出した。


「おぬしのバスター・ブレードのように伝説の剣なら、魔物斬りなど簡単じゃ。金はかからんが、その代わり、……命の保証はないがのう」


 老人は冗談めいた口調であったが、目は、真剣にレオンを見ていた。

 レオンも顔を上げ、はっとしたように、老人を見る。


「……伝説の剣のひとつ、『マスター・ソード』の眠っている地は、ここからそう遠くはないはずじゃ」


 老魔道士は、もう笑ってはいなかった。


「……マスター・ソード……!」


 レオンと老魔道士の目が、正面からぶつかり合った!


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