・ よ ん ・
真奈が目覚めるまでの話しです。
後半を付け足しました。
「――いくら謝罪したところでお嬢さんの身に起こった事を、無かった事になど出来ない事は重々承知しています。ですが本当に申し訳ありませんでした。」
病室に入ってくるなり加害者である彼はそれこそ土下座するほどの勢いで被害者である真奈の母親にひたすら謝り続けた。
「いいえ、警察の方のお話では真奈の方にも非が有るとの事でしたし・・・」
「いいえ、私です。私が悪いのです。いくら急いでいたと言っても前方不注意で事故を起こしたのは私なのですから。」
「沖田さんがすべて悪いわけではないんです。道路の真ん中をふらふらと歩いていたあの娘が悪かったのです。」
「ですが・・・」
「もうこの話は止めましょう。幸い怪我は思ったほどひどくはなかったようですし、後遺症についてはまだなんともいえないとの事でした。ただ・・・」
「傷跡は残るのですね・・・?」
言いづらそうに顔を伏せた真菜の母親にそっと聞くと微かに頷かれる。
「本当に・・・申し訳ありませでした。」
何かを耐えるように真奈の母親は首を横に振りながら、
「ちょっと失礼しますね。せっかく頂いたお花をこのままにして置くのはなんなんで・・・」
沖田が持って来た見舞いの花束を持ちながら真奈の母親は、少しの間真奈を頼むと言って病室を出て行った。そして病室に自分たちだけになるとくるりと向きを変え、ベッドで眠っている真奈に近づく。そっと手を伸ばし撫でるように額から頬へと指を滑らせ唇でその手を止める。柔らかな唇の感触と微かに指にかかる呼吸にホッとするも、その指の腹で唇をなぞりそっと呟く。
「残るほどの傷跡を付けた俺を恨むか? 真奈。けど俺はそれでも嬉しいんだ。その傷がまるで俺のモノだっていう証の様な気がして。」
仄暗い笑みを浮かべながら沖田は真奈の唇に己のそれを重ねる。ゆっくりと舌で輪郭をなぞり真奈の唇の感触を思う存分堪能する。温かくて滑らかで柔らかで・・・ついつい深いキスに移行しそうになるがそこはグッと堪える。そして名残惜しげに唇を離すと沖田は再び頬に手を沿えそっと呟く。
「――愛してるよ、真奈。」
愛しいものに触れ、その感触に蕩け切った沖田はドアの隙間から見られていたことに気づかずにいた。
やっと名前が出てきました。(苗字だけですが)誰のことかわかりますか?