・ さ ん ・
あぁ・・誰かが私を・・呼んでる・・誰・・? 誰が私を呼んでるの・・・?
薄っすらと開けた瞳に映るは、顔色を失くした男性が覗き込むようにしてこちらを見ている姿。薄茶色の双眸は不安に揺れ、血まみれの自分の姿が映し出されている。
あれは・・私? じゃああそこに居るのは誰?
混濁する意識の中で慌ただしく、こちらに向かって駆けて来る男性とその後ろに居る自分と同じ顔の女性――・・・
あぁ、そうだ。あれは佳奈だ。私の異母妹。そして一緒にいる男性は恋人の一条大輔。でも変ね? 二人の方が恋人同士に見えるなんて・・・・
「―――――ッ?!」
自分の目の前の男性が必死に何かを叫んでいる。が、その声は、最早耳には届かない。
「――――――ッ!!」
ごめんなさいね、あなたが何を言ってるのか分からないの。・・・それにもう、あの二人の事は見たくない・・・
恋人である大輔と異母妹を焦点の中々合わない瞳で見つめながら、真奈の意識は緩やかに闇に呑まれて行った。そして白い壁に囲まれた病室で目覚めたとき、心を引き裂く辛い出来事に関する記憶を一切無くしていた。