・ に い ・
第3者視点です。恋人サイドより長いです。
いったい何度キミが涙を流せば彼らは気づくんだろう。愚かな事をしていると言う自覚が、果たして彼らにあるんだろうか?
一条大輔。営業一課のエースで彼女――玖流真奈の恋人。そして大輔の浮気相手・・・彼女の異母妹の西園寺佳奈。
どんなに姿形が似ていても、その身に宿るものは大きく違う。勝気な性格の佳奈に対して自己主張が苦手な真奈。大輪のバラのように華やかな佳奈と、霞み草のように脇に転じる真奈。
真珠のような涙を一粒、二粒と零しながら、声を殺して泣く彼女を見たのは3ヶ月前だった。偶々見かけたその顔に訳のわからない衝撃を受けた。身体に電撃が走ったように痺れ、その小さな身体を抱きしめたいという思いと、何故そんなことを思ったのかという自分に戸惑った。
その日から彼らを見かけるたびに俺は、無意識に彼女を探していた。そしてこの思いを自覚するのに然程時間は掛からなかった。俺は彼女が好きだと・・愛しているのだ、と。
彼が何故、彼女の異母妹と関係を持ったのか、分からないし知りたいとも思わない。ただ、これ以上彼
女を泣かせるのなら・・・この思いを断ち切ることはしない。そう、それこそどんな手を使ってでも、彼女を手に入れる。そう誓ったのは3ヶ月前・・・そして今、彼女はまた静かに泣いているのだ。
ハンドルを握る手に無意識に力が篭る。車を止めて様子を見ていたが泣きながらふらふらと近づく彼女になんとも言えない思いが過ぎる。彼らは彼女に気づかない。気づこうともしない。それなら・・・
――奪ってもいいよな・・・?
名前がまだ出ませんが決して名がないわけじゃありませんよ?(汗