・ ぜ ろ ・
見切り発車のシリアスです。
すいません、サブタイトル変えました。
あぁ・・やっぱり・・・・
ホテルから出てきたばかりの男女を呆然と見つめつつ、頭ではその場を離れるようにと足に指示を出すが、まるで根が生えたみたいに動かない。
目の前を歩く男が女性の腰を引き寄せ仲睦ましく歩く。――本来ならばそれは自分であるはずだった。だが男性が引き寄せている女性は自分ではない。たとえ自分と同じ顔をしていてもそれはまるっきりの別人。
――異母妹の佳奈だ。
同じ父親のDNAと母親が双子のため、これまた同じDNAを持って産まれて来た。ただし、正式な嫡子は佳奈――所為、私は愛人の子供・・・。
それでも彼は『一生懸命なキミが好きだ』と照れながら告白して来た。のに、わずか一週間で彼は佳奈と身体の関係を結んだ。その後も彼らは身体の関係を続けている。そして彼は何もないかのように私を抱く。
――大切な宝物のように、真綿に包むように、この上なくやさしい手付きで・・・。
啄ばむように何度も何度も、キスを交わす二人の姿に止めどなく涙が溢れ、目の前が滲んで行く。そして心は声にならない悲鳴を上げ、張り裂ける。
もう嫌だ・・・見たくない。なのに磁石のように体が吸い寄せられる。一歩、二歩と近づくも、悲痛の叫びは彼らに届くこともなく、涙を流し続ける私に気づかない。
どこか遠くの方で鳴り響くクラクション。急いでブレーキを掛ける音が微かに耳に入り、かろうじてそちらに顔を向ける。途端にドンッという衝撃が身体を襲い、そのまま弾き飛ばされ宙を舞う。
宙を舞いながら薄れいく意識の中で彼らに視線を向ければ、やっとこちらに気づいたのか、驚愕の顔をしてこちらを見た彼と目が合った。彼が必死に何かを叫んでいたが、それを理解するまもなく、私は完全に意識を失った。