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武蔵猫★三代目にして会社を倒産させたダメ社長の俺は死んだらカルトに嵌った独裁ハイシティ女王の王宮に住む黒猫になっていました  作者: 黒澤カール


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第二十七話【風の巻・解呪】スパイ防止法と相互監視で組織は腐る

司教は消え、魔石は砕けた。

だが、空中庭園の空気には、まだ教団が数十年かけて染み込ませた「他流派」

すなわち、人々を疑心暗鬼に陥らせる「虚偽の兵法」の残滓が、薄汚い霧のように漂っていた。


『カイル、気を抜くな。五輪書「風の巻」には「他流を知りて、自流を知る」とある。

 司教という教祖が消えても、奴が植え付けた「カルトの嘘」という思考の癖は、まだ女王や民の心にこびりついている。最後の一撃は、剣ではなく「言葉」だ』


 俺武蔵猫は、カイルの足元で、未だに「私はスパイに唆された大罪人だ……」と震える女王ハイシティを仰ぎ見た。


「武蔵、そうだね。お母様を、そしてこの国を本当に救うには、司教の論理ロジックそのものを論破しなきゃいけないんだ」


風の巻:他流派の正体を暴く


 女王ハイシティは、地面に這いつくばりながら、消滅した司教がいた場所を見ていた。


「カイル、聖剣の光は眩しいけれど、私の心はまだ暗いの。

 あの人が言っていた『スパイはどこにでもいる』

 『人は誰も信じられない』という声が、耳から離れないのよ……」


 これこそが教団の「他流派」恐怖による統治の神髄だ。


 俺はカイルの肩に飛び乗り、女王の瞳をまっすぐ見つめるよう促した。


『カイル、五輪書の教えを説け。

 奴らのやり方が、いかに矮小で、いかに「兵法の道」から外れていたかを!』


「お母様、よく聞いてください。司教が言っていた『スパイ防止法』や『相互監視』。

 それは、国を強くするための法ではありませんでした。

 それは、組織を腐らせ、競争力を奪う『病』だったんです」


 カイルは聖剣を地面に突き立て、堂々と語り始めた。


「五輪書は教えてくれました。真の強さとは、敵を疑うことではなく、己の拍子を整えること。

 司教は、民を疑わせることで、自分たちを『唯一の正解』に仕立て上げた。

 でも、それは他人の足を引っ張るだけの『負の経営』です。

 そんなもので国が豊かになるはずがない!」


洗脳の霧を晴らす一撃


 カイルの言葉が、風の巻の極意「他流の浅薄さを知る」ことによって、女王の心に楔を打ち込んでいく。


「司教の流儀は『縮小の兵法』です。


一方、僕が武蔵から学んだのは『拡大の兵法』だ!

猫も人間も、商人も騎士も、それぞれの個性を活かし、大きな流れを作る。

 お母様、あなたが恐れていたスパイなんて、どこにもいなかった。

 いたのは、ただ、愛を求めて怯えていたあなたの民だけだったんです!」


 その瞬間、女王の脳裏に、司教が植え付けた「スパイの幻影」がガラガラと崩れ落ちるイメージが走った。


「……ああ……。そうね……。私は、自分の影を恐れて、隣人を斬っていたのね……」


 女王の目から、どす黒い涙が溢れ出した。

 それは、長年彼女の精神を縛っていたカルトの魔力の最後の一滴だった。

 空中庭園に、澄み切った本物の「風」が吹き抜けた。


風の巻:己が真実の確立


『よし、カイル。他流の嘘を暴き、己の正道を貫いたな。これが風の巻の奥義だ。……見ろ、下を』


 カイルがバルコニーから見下ろすと、王都を覆っていたどんよりとした雲が晴れ、水源から流れる「真実の水」を飲んだ民衆たちが、互いに手を取り合っている姿が見えた。


「武蔵、みんなの顔が見えるよ。もう誰も、隣の人を怯えた目では見ていない」


『ああ。スパイ防止法という「他流」は、今日この瞬間、サンライズ王国の「信頼の経営」に敗北したんだ。……さあ、宣言しろ。この風に乗せて、新しい時代のルールを!』


 カイルは聖剣を抜き放ち、風に向かって叫んだ。


「これより、ハイシティ王国のすべての負の遺産を廃棄する!

 スパイ防止法は廃止だ! 密告は禁ずる!

 代わりに、互いを助け合い、報告・連絡・相談ホウレンソウを徹底する

 『信頼の法』を公布する!」


 その宣言は、風に乗って王都の隅々まで届いた。

 

「ニャア(大将、いい風が吹いてきたじゃねえか)」

 黒鉄が、風に髭を揺らしながら満足げに鳴いた。


 カルトの嘘という深い霧は、カイルが掴んだ「自流(真実)」の光によって、跡形もなく消え去った。

 女王ハイシティは、震える手でカイルの裾を掴み、ようやく「母親」としての顔で微笑んだ。


「……ありがとう、カイル。そしてその不思議な猫さん。

 あなたたちが、この国を……私を救ってくれたのね」


『……フン。礼なら、これから始まる「再建(リストラ後の再生)」で返してもらうぞ、元社長』


 俺は少し照れ臭くなりながら、カイルの肩で丸くなった。


 「風の巻」が終わり、物語はいよいよ最終局面


 すべてのことわりが一つに帰す「空の巻」へと向かう。


 サンライズ王国の空は、どこまでも高く、どこまでも澄み渡っていた。


 TBC



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