第二十四話【火の巻・総攻】カルト王宮奪還作戦~エルメスのネクタイを探せ
水源が浄化され、民衆の洗脳が解けた今、残るは「最後の膿」を出す作業のみとなった。
王宮の深部、司教とわずかな狂信者たちが立てこもる本丸
そこは、かつてカイルが「無能」を演じて震えていた場所であり、
俺が猫として転生し、この物語を始めた場所でもある。
『カイル、最終フェーズだ。経営において、最後の不良資産(教団幹部)を切り離す瞬間が最も激しい抵抗に遭う。だが、今の俺たちには「多様性」という最大の武器がある。
野良猫軍団とストーン王の残党、このハイブリッド軍勢の力を見せてやれ!』
俺武蔵猫は、カイルの肩で黄金に輝く聖剣の柄を見つめながら、鋭い指示を飛ばした。
王宮前広場 異形の共同戦線
夜明けの光が王宮の白い壁を照らす中、正面広場には奇妙な軍勢が集結していた。
先頭に立つのは、聖剣を掲げたカイル王子と、鎧を纏い直したバートランド卿率いる重装歩兵たち。
そして、彼らの足元や周囲の家々の屋根、壁面を埋め尽くしているのは、数万匹に及ぶ野良猫の軍団だった。
「信じられん光景だ。騎士が猫と肩を並べて戦う日が来るとは」
バートランドが感嘆の声を漏らす。
「彼らはただの猫じゃありません、卿。
僕たちの『目』であり、風を切り裂く『刃』です。作戦開始だ!」
カイルの声が響くと同時に、俺は「千の目」に合図を送った。
『黒鉄、第一門の「死角」を突け! ハナ、通信兵の目を眩ませろ!』
第一段階 猫による「インフラ破壊」
王宮の防衛兵たちは、洗脳が解け始めたとはいえ、依然として司教の強力な魔力によって強制的に操られていた。彼らが構える弩弓や魔導砲は強力だ。だが、それらは「人間」という敵を想定して作られたもの。
「ニャアアアアアン!!」
黒鉄を先頭に、数百匹の猫たちが壁を垂直に駆け上がった。
衛兵たちが慌てて狙いを定めるが、猫たちの小さく素早い動きに翻弄される。
「くそっ、猫め! 当たらん!」
「ギャッ! 目が、目がぁぁ!」
ハナ率いる猫たちが衛兵の顔面を引っ掻き、視界を奪う。
その隙に、別の猫たちが魔導砲の導線や弩弓の弦を鋭い爪で噛み切り、次々と無力化していく。
『これだ、カイル! 敵が「ハードウェア(武力)」で来るなら、こちらは「ソフトウェア(機能)」を壊す! これが猫と人間の共同戦線の強みだ!』
第二段階 人間の「突破力」
防衛網に穴が空いた瞬間を、カイルは見逃さなかった。
「今だ! 門を開けろ!」
バートランド卿率いる兵士たちが、巨大な破城槌ではなく、猫たちが中から解錠した門扉へと突入した。
カイルは聖剣を振るい、司教が放つ闇の障壁を次々と切り裂いていく。
「どけ! 僕は父から受け継いだこの国を、今度こそ守り抜く!」
カイルの剣筋には、五輪書で学んだ「水のしなやかさ」と「火の激しさ」が宿っていた。暗殺者の鎌をも退けた彼の剣は、もはや迷いによって止まることはない。
第三段階 王宮内部、種族を超えた信頼
王宮の廊下を進む中、待ち伏せていた暗殺者たちの集団が姿を現した。
だが、今度のカイルは一人ではない。
暗殺者が影から飛び出そうとすれば、天井に張り付いていた猫が鳴き声で位置を知らせ、兵士が盾で防ぐ。
兵士が包囲されそうになれば、猫たちが敵の足首を狙って噛みつき、体勢を崩したところを兵士の剣が仕留める。
「武蔵、すごいよ。猫たちが僕たちの動きを読んで、完璧にサポートしてくれている!」
『ハッ、これが「阿吽の呼吸」だ。
言葉は通じなくとも、同じ「夜明け」を願う意志があれば、種族の壁なんてものは存在しないんだよ』
俺はカイルの肩から飛び降り、殿を務める暗殺者の顔を蹴り飛ばした。
「ニャ(大将! 司教の奴、最上階の『空中庭園』に逃げ込んだぜ! 往生際の悪い野郎だ!)」
黒鉄が知らせに来る。
ついに俺たちは、王宮の最上階へと辿り着いた。
そこには、魔力を使い果たして醜く老いさらばえた司教が、狂ったように笑いながら、最後の大魔術を展開しようとしていた。首にはエルメスのネクタイをしている。
「来るな! 来るなぁ! この不浄な王子と、呪われた猫どもめ! 私は、私は神に選ばれたのだ!」
司教の周囲には、残った魔力で作られた無数の「影の刃」が渦巻いている。
だが、カイルの背後には、彼を信じて戦い抜いた人間たちと、俺を筆頭とする何万という猫たちの意志が控えていた。
『……幕引きだ、司教。お前の「独裁経営」は、たった今、全会一致で解任が決まった』
カイルは聖剣を構え、その光は王宮全体を包み込むほどに膨れ上がった。
猫の鳴き声と人間の咆哮が重なり合い、王宮の空に一つの巨大な「声」となって響き渡る。
サンライズ王国の誕生。その象徴となる「王宮奪還作戦」は、今、最終局面を迎えた。
TBC




