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武蔵猫★三代目にして会社を倒産させたダメ社長の俺は死んだらカルトに嵌った独裁ハイシティ女王の王宮に住む黒猫になっていました  作者: 黒澤カール


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第一話:ダメ社長・武蔵の死。気づけばハイシティ王宮の「喋れる猫」に。

三代目にして会社を倒産させたダメ社長・武蔵。

すべてを失い、死んだはずの彼が次に目を覚ましたのは――

独裁女王が支配する暗黒国家の王宮、しかも「一匹の黒猫」だった。


かつて平和だったストーン王国は、カルト宗教に操られた女王によって歪められ、重税と恐怖が民を縛っていた。

絶望の中にいた第三王子カイルだけが、なぜか猫の言葉を理解できる。


武蔵は前世で唯一信じていた兵法書『五輪書』を手に、王子の軍師となることを決意する。

現状把握から始まり、情報戦、組織づくり、心理戦――

王宮の野良猫たちを配下にした最強のスパイ網で、腐敗した王族とカルト教団を静かに追い詰めていく。


これは、一匹の猫と一人の王子が、兵法と経営の知恵で国を再建し、

嘘に支配された王国を“夜明け”へ導く、異世界王道再生譚。

その日、俺の人生は「倒産」という冷え切った二文字で幕を閉じた。


 俺は鈴木武蔵たけぞう、五十四歳。  祖父が興し、父が守った精密機械メーカーの三代目社長。

バブルの残り香を頼りに放漫経営を続け、時代の波を読み違えた末路は、数億円の負債と社員たち、株主たちからの罵声だった。

「もうすぐ潰れるぞ。バカは死ななきゃ治らないのか!」

「お前は名前負けだな!名ばかりの武蔵だ。宮本武蔵の足元にも及ばない」

「ご先祖様に申し訳ないと思わないのか?」などなど、、、。


去り際に放たれた役員の言葉が、冷たい雨とともに肺の奥まで突き刺さる。


確かに経営学なんて学んだことはないし、いつも先代から番頭さんのように頼っていたベテラン

の役員にすべて任せていた自分が悪いということは痛いほどわかっている。

遅すぎるかもしれないけど先代の愛読者だった宮本武蔵の『五輪書』を読み始めて

武蔵の兵法を経営に活かそうと心を入れ替えたところだ。


で、株主総会の終わった夜、降りしきる雨の中、俺はその愛読書を胸に抱いて傘もささずに大通りを歩いていた。早く家に帰って暖かい風呂にでも入ろうと思って横断歩道を渡ったそのとき、目の前に大型ダンプカーが爆走してきて俺に激突した。


「死んだな」 視界が真っ白に染まる。 心臓の鼓動が止まり、意識が永遠の闇へ溶けていく――はずだった。だがしかし、、、。


「……ミャ?」


 耳を打ったのは、情けない猫のような鳴き声だった。  

 まぶたを開けると、そこには見たこともない豪華な装飾が施された天井があった。シャンデリアが輝き、壁には異世界の英雄らしき肖像画が並んでいる。


(ここはどこだ? 天国か? それにしても、視界が異常に低い……)


 起き上がろうとして、俺は凍りついた。  自分の手があるべき場所に、ふっくらとした黒い毛玉がある。五本の指ではなく、ぷにぷにとした感触の「肉球」だ。


「ミ、ミャーーー!?(嘘だろ、手が、手が肉球になってる!?)」


 慌てて鏡のついたドレッサーに飛び乗る。そこに映っていたのは、鋭い黄金と銀色の瞳を持った、艶やかな漆黒の仔猫だった。  


おいおいまじか!三代目ダメ社長が、猫に転生した。


あまりに突飛な現実に脳がパンクしそうになるが、鏡の隅に映り込んだ「あるもの」を見て、俺はさらに息を呑んだ。


 俺の足元に、あの『五輪書』が落ちている。  日本語で書かれたはずの表紙が、なぜか見たこともないようなアラビア文字のような文字として翻訳され、「地の巻」という文字が淡く光っているように見えた。でもなぜか俺には意味がわかった。


すると、、、


「――お前、どこから入り込んだんだ?」


 背後から響いたのは、震えるような少年の声だった。  


振り返ると、そこには金髪で色白の、しかしどこか生気のない瞳をした少年が立っていた。


豪華な刺繍の服を着ているが、その肩は小さく縮こまり、周囲を極端に恐れているように見える。


少年は俺を抱き上げた。その手は細く、震えていた。


「……可愛い黒猫だ。でも、このハイシティという王国の王宮にいたら、お母様に見つかって殺されちゃうよ。今のこの国では、自由な生き物はすべて『スパイ』だって疑われるんだから」


少年の名はカイル。ハイシティ王国の第三王子。  彼がぽつりぽつりと独り言のように漏らす言葉から、俺はこの世界の恐ろしい現状を知ることになった。


かつてここは『ストーン王国』という、質実剛健で民を想う王が治める平和な国だったそうだ。


だが、カイルの母である王妃ハイシティが、隣国のカルト宗教「深淵の目」に洗脳され、王を嘘の噂で失脚させた。彼女は自ら女王を名乗り、国名さえも自分の名に変えてしまい戦争国家へと変えてしまったのだった。


今のハイシティ王国は、女王の傲慢とカルトの支配、そして「スパイ防止法」という悪法によって、民の所得は吸い取られ、軍備増強だけが進む暗黒国家。


女王に媚びる第一王子、第二王子とは違い、心優しいカイルは「無能」のレッテルを貼られ、この離宮に幽閉同然の身となっていたのだ。


「僕にもっと力があれば……。でも、僕にできることなんて何もないんだ」


 カイルが涙をこぼし、俺の背中に顔を埋めた。  その瞬間、俺の中に熱い何かが込み上げた。


(……会社と同じだ。トップが狂い、側近が私欲に走り、真面目な人間が馬鹿を見る。俺が潰した会社も、今のこの国と同じ末路だった……!)


 前世での俺は、何もできなかった。社員の涙も、父の遺産も株主の資産も守れなかった。  だが、今、俺の前には絶望している少年がいる。そして俺の手元(足元)には、最強の兵法書がある。


『――泣くな、坊主。負け犬のまま終わるつもりか?』


 俺の思念が、カイルの脳内に直接響いた。  カイルは飛び上がり、俺を放り出しそうになった。


「えっ……だ、誰!? 誰が喋ったの!?」


『下だ。お前の膝に乗っている、この猫だよ』 俺はドヤ顔(猫なりの精一杯の威厳)で、カイルを見つめた。


『驚くのも無理はない。俺は一度死に、この姿になった。名はタケゾウいやムサシだ。……カイルと言ったな。お前がこの腐った国を変えたいと、本気で願うなら……俺がお前の「軍師」になってやる』


「猫が……喋った。軍師……?」少年は目を丸くして俺を見た。


『そうだ。俺は三代目で会社を潰したダメな男だったが、だからこそ「組織がどう壊れるか」は誰よりも詳しい。お前が信じるべきは、カルトの神じゃない。現実を戦い抜くための「兵法」だ』


 俺は肉球で、足元の『五輪書』を叩いた。


『いいか、カイル。これが俺たちの「地の巻」だ。今日から、この王宮を舞台にした「組織再建」を開始する。……猫の手も借りたいほど、忙しくなるぞ?』


 カイルの瞳に、困惑と、そして微かな希望の光が宿る。  


三代目ダメ社長の魂を持つ黒猫と、絶望の王子。  


種族を超えた奇妙な「師弟」による、国家再生の逆転劇が、今ここから始まった。


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