隗より始めよ
「…………!??」
「あ!起きました!?さっきは驚かせてしまって本当にごめんなさい!」
目が覚めるとウメはベッドにいた。
そして横には先ほど声をかけてきた女性が不安そうな目でこちらをチラチラと伺ってくる。
「…別に、倒れたのは俺ですし。こちらこそ迷惑をおかけして申し訳ありません。」
そんなことよりウメはこの人が誰なのか、なぜ耳やしっぽが生えているのか、この世界は自分の幻覚なのかが気になって仕方がなかった。
「!!………てっきり先ほどの状況を見てお話をするのは難しいと判断していたのですが、心配する必要はなかった様ですね!」
「…あれは少し…驚きに驚きが重なって倒れてしまっただけです。すみません。…それよりここはどこなんですか。」
「家です。」
「は?」
明らかに大きすぎるベッド、高い天井、クッションの様な素材の壁、大きい窓、ベッドから見えるものはこれぐらいだが、これが家だとするのならば、ウメはヤバい人に関わってしまったと思った。
「……あの…質問したいことが結構あるんやけどいい?」
「……あなた、変わったお話の仕方をするのですね!」
ウメは動揺からか、無意識に敬語が崩れていた。
「俺は関西生まれやし…ー。いやてかここは日本じゃないん?あなたの家なのはわかったけど…」
「……よくわからないですが、とりあえず私のことはフェルラでいいです!」
「え、名前かっこいいな。じゃあフェ、ルラ?ここがどこなんかまず教えてくれん?」
「ここはバザム王国の中央区域にある私の家です。」
ウメの脳内では「これは俺の学が足りへんからわからんのか」それとも「もうこれは現実ではないんか」の意味のないディベートが始まっていた。
────というか耳と尻尾は?
「……あの、もしかしてまだ体調が、?看病している感じではもう大丈夫だと思ったのですが…」
「………その耳と尻尾はコスプレ…ではないやんな?」
「え……コス、プレ??なんですか?」
フェルラは初めて聞いた様な反応だった。
関西弁を知らないのは置いておいて、コスプレを知らないのはまだあり得ることか、とウメは思った。
「…ちょっと近くで見ていい?」
「?はい。もちろんです!」
ウメはフェルラの頭に付いているキツネのようなふさふさの三角の耳を観察した。
近くでよく見ると、分かりにくいが頭と耳はしっかりとくっついていた。
髪の毛で隠れているから最初は何も思っていなかったウメだが、いざ耳が頭の上に繋がっているのを見ると、なんだか少し気味が悪いと感じ目を逸らした。
「……あの…。」
「…あ、あぁ。ごめんごめん。ちょっとボーっとしてたわ……。」
ウメは頭では今の状況がありえないことを理解しているのに、気持ちがが異常なほど落ち着いていて恐怖を感じた。
────まぁ、いつか目覚めるやろ。
「……私もあなたに聞きたいことがいくつかあるのですが、よろしいでしょうか。」
「え、いいけど、なにや?」
許可をもらえると思ってなかったのか、フェルラはもとより大きい目をもっと大きく見開いてウメを見つめた。
「あの、!あなたのお名前はなんですが?」
「マツバ ウメ。」
ウメの名前を聞いたフェルラは足をもぞもぞ揺らし、緊張した様子で黙っていた。
「マツバウメさん……ウメって呼んでもいいですか!」
「え、うん。別にええけど、じゃあおれもフェルラって呼んでもいい?」
「!!もちろんです!」
ウメはこんな金持ちそうな人を馴れ馴れしく呼んでもいいものなのかが少し気になったがフェルラはニコニコ喜んでいたのでOKとした。
「あの…えっと…う、」
突然フェルラがもじもじと何か言いたげにウメを見つめた。
「?なんや?質問か?」
「い、いや~えーっと…あのー」
中々言い出さないフェルラにウメは少々苛立ってきた。
「別に何も思わんから何でも質問していいで。」
「ほ、ほんとですか!?絶対!ですね?」
──なんか、フェルラって見た目もやけど話し方とかちょっと違和感?あるな。
フェルラはフーっと深呼吸をしてウメの目をしっかりと見つめた。
「ウメは空間魔法が使えるんですよね…!?」
……
「……どゆこと?」