プロローグ
─────全部が気持ち悪い。赤の他人も。クラスメイトも。先生も。家族も。
「】自分もやろ?』(》
「………ッハっ!!」
「…………!?」
目が覚めると俺、マツバウメは全く見たことのない場所に立っていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ウメは突然の出来事に体が固まった。
だが頬をつねらなくたって体には風が当たり、足にはひんやりとした固いものが感じられる、これは夢なんかではないとウメはすぐに分かった。
一応ウメは履いていたクタクタのズボンのポケットを漁り、スマホを探したがポケットには紙くずしか入っていない。
「………はぁ。」
目が覚めたら知らない場所にいて、スマホもない。
これは…無理やなと絶望感と諦めで頭が回らずボーっとしていた時だった。
「!?」
人間のお尻から生えたフサフサの尻尾、頭から生えた動物のような耳。
「なんやあれ…。」
こんな理解しがたい状況でもウメは本当に驚いた時は声が出てしまうもんなんやなーなんてことが頭によぎっていた。
ありえない状況だが、コスプレにしてはやっている人が多すぎる。それに、衣装のような質には見えない。本当に動物が人間になったみたいだった。
ウメは意外と冷静に物事を考えられている自分にも少し驚いた。
だが、さすがに異変を感じ、やはり夢だと一瞬疑ったが、ウメに明晰夢なんてできないし、疑いはすぐに晴れた。
だとしたらウメは寝る直前になんらかの病気にでもかかり、なにか幻覚のような症状でも出ているのかと考えた。
別にウメは転生だという考えが出なかったわけでは無い。そんなこと現実にあるわけがないから頭にはよぎったものの、疑いもしなかっただけだった。
「あの…!そのお洋服はどちらで購入したのですか!?」
…一瞬、時が止まったように感じた。人が大勢いる中でもよく通る、迦陵頻伽という言葉を彷彿とさせるような芯のある声でウメは呼び止められたのだった。
振り返るとそこには光が当たり綺麗にツヤが出ている金色の髪、陶器のような白い肌、長い手足、現実離れした美しい女性が照れくさそうに立っていた。
現実離れと言ったら一番は、この女性にもキツネのような耳と尻尾がついてることだ。
ウメは話しかけられた驚きと、状況の理解できなささにとまどった。ウメは焦りと不安に駆られ、"癖"が出てしまい、返事をできずにいた。
────あ、これやばい。
バタッ!!!
「うぇ!?!……か…?!どうし………」
ウメは薄くなっていく意識の中、倒れた自分を見て慌てふためく彼女の姿がうっすらと見えた。