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反撃の奇襲


 そこへ行けるまともな道はなく、ごつごつと突き出した岩のこぶをけながら、四人は慎重に近づいて行った。


 敵はざっと二十人程度。そのうち弓を持っているのは数名。都合よく、その全員が背中を向けている。


 反撃に向かう者たちは息を潜めてさらに距離をつめ、それぞれが分かれて岩陰に身を隠した。


 レッドは身振り手振りで指示を与え、部下たちも無言でうなずき返し、的確に隊長の意に沿って動いた。


 適当な位置で待機した三人は、敵の動きを見ながら隊長の合図を待った。


 軽く手を挙げるレッド。

 そして・・・サッと前方へ一振ひとふりした。


 ほとんど物音をたてずに岩陰から飛び出した四人は、敵の背後から静かに、かつ荒々しい動きで容赦なく襲いかかる!


「なんだっ⁉」

「ぐああっ!」


 絶叫が立て続けに上がる。弓兵、歩兵を問わず、手当たり次第に斬りつけられているのだ。思わぬ方向からの不意打ちに、剣に手をかけるすらない。


 だが真っ先にられることのなかった数人は、その間に武器を手にとっていた。弓を持つ者はただちに矢をつがえ、慌てて振り向くと、よく狙いもせずにいい加減に放った。


 レッドは、ルーサーに向けて弓を構えた男をめがけ、左手の剣を投げつけた。剣は瞬く間に飛んで行き、その男の背中に食い込んだ。男が倒れるのを見ることもなく、剣を手放したと同時にかかんだレッドの頭のあったところを、矢が飛び過ぎていった。レッドは小石をつかみながら体勢を整え、矢を放ってきた男の眉間みけんに石つぶてを命中させる。そして相手がひるんだ一瞬に右手の剣を振り抜き、その敵を袈裟懸けさがけに斬り裂いていた。


 その時、木立の方でも騒ぎが起こった。


 四人は同時に、全く予想していなかったわけでもない嫌な予感を覚えたが、その様子を見ることのできる余裕など誰にもない。


「くっ!」

 ジュリアスが短い痛烈な声を漏らした。


 だが剣を一本失ったレッドも、ほかを気にしている場合ではなかった。時には両手でより早く、より力強く、一つの剣を右に左にめまぐるしく振り回し、そら恐ろしい勢いで敵を斬りつけていく。


 彼らが素早く白刃はくじんをかいくぐって中へと切り込むと、思った通りに、弓兵は攻撃をためらった。そして代わりに剣を引き抜いたが、高い戦闘能力を買われてここにきた剣士たちにはやはり敵わず、その誰もがあえなく血を流して倒れることに。大きな岩が散在している足場の悪さは、それに抜群の運動神経で順応できる彼らにとっては、逆に好都合だった。


 レッドが近くで奮闘していたスエヴィと背中合わせになった時には、この敵の援軍は血の海で全滅していた。この岩場にいた敵の全員が絶命・・・である。


 レッドはジュリアスを見た。


 ジュリアスは、左腕で受けた矢の刺さり具合を、しかめっ面でみているところだった。まだ下手に抜かない方がいいかどうかと。


「わざとか。」

 レッドは感心しながらきいた。


「とっさにさ、胸に飛んできやがった。」


「俺は、まともに顔で受けるところだった。」

 スエヴィが忌々《いまいま》しげに吐きすてた。彼の右頬には派手なかすり傷があり、たっぷりと血に濡れていた。


「リーダー、助かったよ。」

 ルーサーが敬意を込めて言った。


「次は期待しないでくれ。」

 レッドはニヤッと笑って答えた。


 気付けば、向こうの戦いも収まっている。


 四人は、岩の陰から首を伸ばして様子を見た。


 今分かる限りでは、倒れているのは、最初に殺されたレイアス以外は敵ばかりに見受けられる。矢の攻撃が無くなると、剣を振り回すのが難しい木立の中ではなく、また道に戻ってやり合ったようだ。この奇襲はかなり効果的だった。


 ただ、一つ気になるところがある。


 その場から離れている者たちは、そろって眉をひそめた。


 片足を伸ばして座り込んでいる誰かを、ほかの大勢が取り囲んでいる・・・。


「様子がおかしいな・・・。」

 深刻な声でジュリアスが言った。


 レッドは、目の前の岩を飛び越えて走り出した。

 ほか三人もすぐあとに続き、敵がいなくなったその最短距離を急いで戻った。








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