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若すぎる隊長


 外で適当に昼食を済ませたレッドとスエヴィは、結果発表を見るため、再び王城を訪れた。例の会場の前には、試験を受けた傭兵ようへいたちがすでに大勢集まっていた。誰もが、今か今かと結果を待ちわびている。


 しばらくすると、中から大きな紙を抱えた兵士が出てきた。それはそのまま、試験会場の横の壁に張り出された。そこには、合格者の名前がずらりと羅列られつしてある。


「おいレッド、お前、隊長にされてるぞ。」

 それを一目見ただけで、スエヴィは言った。ほかを従えた一番上に、一行空けて書かれてあったからだ。


〝隊長 レドリー・カーフェイ〟と。


「もう決めちまうのか、そんなこと。それよりお前、自分の名前探したのか。」


「いいや。でも、あるだろ。」


「ああ。」

 レッドは呆れ混じりに答えた。


「見せたのか、わしを。」


「頼まれたんでな。」


「なるほどな。合格者は、このままそこの中庭だってよ。行くか。」


 そばにいる筆と書類を持った兵士に名乗った二人は、その兵士が合格者名簿に印をつけてうなずいたのを見ると、連れ立って中庭に下りた。


 石造いしづくりの噴水と、花を付けない植物だけで造園されたその中央には、選ばれた全ての者に言葉をかけるための台があった。会場にいた三人の試験官と二人の軍の上官、そして、あの亜麻色あまいろの髪の美女もいた。奇妙なことには、その彼女のそばに、受験で選ばれたとも思えない三人の若い女戦士の姿もある。


 試験官たちは、手元の資料を見ながら何やら話し合っているようだったが、名前をチェックし終えた兵士の報告を聞くと、一人が台に上がった。


「よく集まってくれた。諸君には、知ってのとおり、スフィニア王国までの王女の護衛に当たってもらいたい。そこで今夜、諸君の健闘を祈り、ささやかではあるが懇親会を催す予定である。任務の詳細については、のちほど隊長の方から説明を受けてもらう。では、諸君の隊長を務めてもらうことになるカーフェイ君、ここへ。」


 うたげと聞いて、合格者たちのあいだからは遠慮がちな歓声が上がっていたが、ある時、それは一瞬にしてサッと引いた。 


 レッドが、集団から一人前へ進み出た時だった。


 呼ばれて、半ばしぶしぶと踏み段を上がったレッド。それでも顔を上げて、「レドリー・カーフェイです。」と普通に名乗ったが、思った通りのどこか冷ややかな視線に出くわすと、それ以上言葉を続ける気がしなくなった。


 レッドはため息混じりに、「・・・よろしく。」とだけぶっきらぼうに述べ、そそくさと台から下りた。


 群れの中がざわざわと騒がしくなる。


小僧こぞうじゃねえか。それとも俺の目がおかしくなっちまったのか。」

「あんな若いヤツに任せて大丈夫なのかよ。」


「この仕事降りようか・・・先が不安だぜ。」


「静粛に。えー・・・あと、王女の用心棒を務めているセラン君だ。」


 試験官の男が振り返りながら場所を空けた。すると、後ろから出てきたのは、あの亜麻色の髪の美女である。


「シャナイア・セランです。」


 彼女は台の上に立ったそこで、愛想よくにこりとほほ笑んだ。

 

「俺、やっぱ降りるのよすわ。」

「俺も。」


 彼女はひとこと挨拶を加えて下がった。


 呼び止められていたレッドは、戻ってきた彼女と向かい合って立たされた。


「セラン君、カーフェイ君の言うことは聞くように。分かっているね。」

 試験官の男は、彼女に向かってたしなめるような言い方をした。


「はい・・・できるだけ。」

 先ほどシャナイアと名乗ったその美女は、軽い声でこれに答えた。


 このやり取りに、レッドはさらにため息をつきたい気持ちになってしまった。扱いにくそうだな・・・。


「カーフェイ君、セラン君、二人には明日、王女との顔合わせのあと任務の詳細についての会議に出席してもらうので、そのつもりでいてくれたまえ。」


 最後に二、三連絡を受けてから一同は解散した。

 だがほとんどの者が、胸に一抹いちまつの不安を覚えて帰ることになった。







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