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【完結済】俺の彼女が人として終わっているんだが  作者: Melon
1章 俺の彼女は終わっている
7/47

彼女、警備する

 時刻は十九時。

 酒代とタバコ代が最近厳しくなってきたため、仕方なく日雇いの警備のバイトを始め、近所の私立高校の警備員をすることになった。

 仕事内容は警備員室での監視カメラの見張りと見回りだ。

 燐華さんは新人であるため、先輩社員と二人で勤務していた。


「おー、あんたみたいなねーちゃんがなんで警備のバイトなんて応募したんだ?」


 警備会社の先輩に聞かれる。


「いやー高給だったんで......。それに......」


「それに......?」


「酒も飲めそうですし!」


 燐華さんはポケットからパック酒を取り出し、飲み始めた。


「バ、バカ野郎! なに仕事中に酒飲んでいるんだ!」


 先輩が燐華から酒を奪い取る。


「えーいいじゃないですか......。人いないんですし......」


「......確かに」


 社員は既に帰っていて自分たち以外は誰もいない。

 どうせ人なんて来ないだろうから、何をしても問題ないんじゃないかと二人は思った。


「じゃ、ちょっくら宴会でもしましょうよ。パック酒でよければもう一個ありますし、つまみも用意してますよ」


 燐華さんはつまみを取り出し、食べ始める。


「先輩もいかがですか」


 先輩にパック酒とつまみを渡そうとする。


「お、ありがとな」


 先輩は酒とつまみを受け取り、酒を飲み始めた。

 燐華は先輩から酒を返してもらい、飲んだ。



 日付が変わり、時刻は二時を過ぎた。


「......よし、開いたぞ」


 校舎の裏口の扉が開く。

 その扉から、一人の少年が学校に侵入した。

 この少年は成績不振で、今回のテストで確実に高得点を取る必要があった。

 そんな時、用務員が落とした鍵を拾い、深夜の学校に忍び込み、テストの問題を盗み出すことにしたのだ。

 足音を立てないようにコッソリと職員室へ向かっていく。

 そろりそろりと歩いて向かっていたが、突如足を止める。

 コツコツと足音が聞こえてきた。

 少年が息を潜め、柱の影に隠れる。

 チラっと覗いてみると、警備員の男が懐中電灯で道を照らしながら歩いていた。


 しばらく経つと足音が遠ざかったため、隠れるのをやめた。

 再び職員室へ向かおうとしたその時。


「おわっ!」


 少年は何かに躓き、転んでしまう。


「いってぇ......! なんなんだよ......!」


 立ち上がって振り返り、足元を見ると、警備員の服装の女性が倒れていた。


「おわあああ!!!」


 驚いた少年は大声で叫び、尻もちをついてしまう。


「んぅ......。うるさいなぁ......」


 女性が目をこすりながら起き上がる。

 倒れていた女性は、燐華だった。


「なんだなんだ!」


 先程の警備員が全速力で駆けつけてきた。


「おい! 何やってるんだ!」


 警備員の男、燐華の先輩が二人に聞く。


「いやぁートイレでお酒飲んじゃったら気分良くなっちゃってー。そのまま寝てましたぁ......」


「......そんで、そっちのお前は?」


「お、俺は......」


「......時期的に、テストを盗みに....とかか?」


「うっ......!」


「図星......か。......馬鹿野郎! 何考えてんだ!」


 突如先輩が大声で叱理始める。


「ズルばっかして努力せずにいたら、こいつみたいになるぞ!」


 先輩は燐華を指差す。


「いいのか! こいつは仕事中に酒を飲むようなろくでなしだ! どうせ普段からクソみたいな生活をしているに決まってる! こいつみたいな人に後ろ指差される人間になってもいいのか!」


「え、先輩も一緒に飲んで......」


「う、うるさい! とにかく、今日のことは黙っててあげるから、帰って勉強しなさい!」


「で、でもよ......。今から勉強しても......。それに、家じゃどうしても集中できなくて......」


「じゃあ、私達と勉強してく?」


 床にあぐらを書きながら酒を飲んでいる燐華さんが言う。


「どうせ明日土曜日だし、問題ないでしょ? いつもと違う環境で人に教えてもらえれば、特別感あって記憶に残りやすいかもよ? ね、いいですよね?」


 先輩に聞く燐華。


「......ま、まぁこいつがいいって言うなら......。どうだ、ボウズ」


「......じゃ、じゃあ......」


 少年は一緒に勉強することを受け入れ、勤務終了時間まで勉強した。



 少年を家に返した後、燐華さんは警備員室で酒を飲んでいた。


「いやー、仕事終わりに飲むお酒は格別ですねー」


「お前ずっと飲んでただろ......。まぁいいや。それより、これが今日の給料だ。受け取れ」


 先輩が机の上に封筒を置く。


「いやーありがとうございますー」


 燐華は封筒を手に取り、中身を確認する。


「......ちなみに、何に使うんだ?」


「酒とタバコです!」


「......やっぱりろくでもないやつだな......」


「それじゃ、お疲れ様です!」


 燐華はどの酒やタバコを買うかを考えながら、笑顔で警備員室を後にした。

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