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【完結済】俺の彼女が人として終わっているんだが  作者: Melon
3章 俺の彼女は仲良くなりたい
31/47

彼女、髪を乾かす

「あ......。ごめん、頭洗ってる時に......」


 夏鈴は恥かしくなり、慌てて離れる。

 そして、それ以降は無言で頭と体を洗った。


 それから、二人で湯船に浸かる。


「ねぇ、燐華ちゃん。記憶がないころの私ってどんな感じだった?」


「優しくていい子......。だったよ......」


 私をいじめて楽しんでいたなんて口が裂けても言えなかった。


「そっか......ふふ......」


 夏鈴は表情にはあまり出さなかったが、嬉しそうだった


「燐華ちゃんとはよく遊んでた感じ?」


「......うん」


 よくいじめて遊んでいたと言うことはできない。


「......そっか。ごめんね、全部忘れちゃって......」


「大丈夫、怒ってないから......」


「......ねぇ、これからも昔みたいに......。その、遊んでくれる......?」


「......うん」


「ありがと......!」


 その返事を聞いた夏鈴は、とても笑顔だった。

 それから、二人は軽く雑談し、風呂を出た。



 美湖さんと一緒に心配だという話をしていた時、二人が風呂場から出た音が聞こえてきた。

 俺と美湖さんは、すぐに会話を止めた。


 それからしばらくすると、タオルを首に掛けた燐華さんと夏鈴さんが出てきた。


「いやーいいお湯でしたよー」


 夏鈴さんが髪をタオルで拭きながらソファに座る。

 そして、燐華さんも同じようにソファに座った。


「あ、燐華ちゃん! 髪乾かしてあげる!」


 夏鈴さんは燐華さんの首にかけてあるタオルを手に取り、髪を拭き始める。

 しばらくの間拭くと、夏鈴さんはドレッサーの上に置いてあったドライヤーと櫛を手に取る。


 ドライヤーをコンセントに接続し、強にして乾かしていく。

 ある程度乾いてきたところで、弱に変更し、櫛で丁寧にとかしていく。

 ドライヤーの風に乗り、燐華さんのシャンプーの匂いが俺の鼻まで届いた。

 少しだけ甘い香りがするいい匂いだった。


 燐華さんの髪をとかすのは初めてのはずなのに、いつもの燐華さんの髪型に近づいていく。

 これは、夏鈴さんの知識と、普段から燐華さんのことを気にしているからだろう。

 手際よく髪をとかしていき、あっというまに終わってしまった。


「お、お上手ですね......!」


 あまりの手際の良さに美湖さんは感心する。


「そうですか?」


 上手いことに自覚がないのか、疑問を持っていた。


「うん。夏鈴ちゃん上手だよ......」


 燐華さんも褒める。


「そ、そうですか......?」


 二人に褒められ、照れる二人。


「それじゃ燐華ちゃん! 次は私の髪お願い!」


「いいけど、私下手だよ......?」


「いいよ! 燐華ちゃんに任せるから!」


「それじゃあ......」


 夏鈴さんからドライヤーと櫛を受け取り、同じようにとかしていく。

 下手と言った割には、燐華さんも上手だった。

 そして、いつもの夏鈴さんの髪型になるように仕上げた。


 これは、普段からトラウマである夏鈴さんを想像してしまい、記憶に刻まれているからこその再現度なのか。

 俺にはわからなかった。



 それから少し雑談をした後、夏鈴さんと美湖さんは帰宅した。

 部屋には俺と燐華さんの二人だけになった。


「燐華さん......。その、大丈夫でした......?」


 俺は風呂場で二人きりになったことを心配し、話しかける。


「うん。大丈夫だったよ......。むしろ.......。今までより希望が持てたよ......!」


「希望、ですか......?」


「うん。夏鈴ちゃんと仲良くなれる。お話してみて、そういう希望が持てたんだ」


 どういう会話があったのかは俺にはわからないが、俺は一安心した。

 そして、燐華さんが一歩前に進めそうで心の底から嬉しかった。


「もし、もしね? 夏鈴ちゃんの記憶が戻ったとしても......。それでもやり直せるくらい、上手くやっていけそうだなって思ったんだ......」


「......本当ですか? あんな短時間で何が......」


 そんな短時間の間に何があったのか気になった。


「夏鈴ちゃんは記憶が無くて、寂しがってた。それで、唯一覚えている友人......。ではないけど、私がいることを嬉しく思ってた。このまま仲良くなれば、たとえ記憶が戻っても、仲良くしたという思い出で上書きできるんじゃないかって......」


「そう、ですか......」


 俺は少し不安もあったが、夏鈴さんを詳しく知っている燐華さんが言うのだ。

 おそらく大丈夫なのだろう。

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