彼女、夏鈴と二人で入浴する
燐華と夏鈴は、脱衣所に入った。
狭い空間で苦手な夏鈴と二人きり。
燐華にとって、精神的に苦痛だった。
燐華の呼吸が少しだけ荒くなる。
一方夏鈴は、そんな燐華に気が付かずに服を脱いでいく。
「あれ? 燐華ちゃん脱がないの?」
「え? あ、ごめん......」
「あぁそっか。体痛くて脱げないのか」
夏鈴は燐華の服を脱がしていく。
「あれ? 震えてる?」
体の震えに気が付いた夏鈴が聞く。
その時、燐華の心臓は大きく動いた。
「寒いなら早く入っちゃおうよ」
夏鈴はどんどん燐華の服を脱がしていき、二人は風呂場へ入った。
脱衣所はお湯の湯気で暖かかったが、燐華の震えは止まらない。
「まだ寒い? じゃあシャワー軽く浴びよっか」
夏鈴はシャワーのお湯を出し、燐華の背中を流していく。
そして、しばらく流した後、シャンプーで燐華の頭を洗い始めた。
「痒いところはないー?」
夏鈴が燐華の髪を洗っていく。
怪我して以来初めて本格的に洗うので、汚い髪を洗わせてしまっているのではないかと申し訳ないと燐華は思っていた。
「ねぇ夏鈴ちゃん......」
「ん?」
「なんでこんなに私に優しくしてくれるの......? 夏鈴ちゃんに何かしてあげたことなんてほとんどないのに......」
「......あのね。私、寂しかったんだ」
突然そんなことを言うので、燐華は驚いた。
「寂しかった......?」
「うん......。私、気が付いたら記憶がほとんど無くて、どんな人間かもあんまり覚えてなかったの。でも、両親の他に、燐華ちゃんっていう名前は覚えてた。だから、きっと私には仲が良い友達がいたと思ってたんだ」
燐華は複雑な気持ちになりながらも話を聞く。
「でも、燐華ちゃんは周りにいないし、入院生活で学校にも行けないしでずっと寂しかった。でも、大学で燐華ちゃんと再会できた。燐華ちゃんと出会えて嬉しかったの。仲が良かったと思う友達と再会できて......。それで、寂しくなくなって......。あれ......?」
夏鈴の目から涙が零れ始める。
「ぐすっ......。ごめん、なんか涙が......」
夏鈴は無理やり笑顔を保とうとするが、それでも涙は止まらなかった。
「夏鈴ちゃん......」
燐華は思っていた。
今からなら本当にやり直せると。
お互い友達として、この先を歩んでいけると。
そのために、トラウマを必ず乗り越えなければならないと。
「夏鈴ちゃん大丈夫だよ......。これからも私が一緒にいるから......」
「本当......?」
「うん......。だから、泣かないで......」
その言葉を言った瞬間、夏鈴は燐華に抱き着いた。
「夏鈴ちゃん......?」
「ありがとう......! 本当にありがとう......!」
夏鈴は燐華に抱きながら涙を流し続けた。
そんな夏鈴を、燐華は優しく抱きしめた。
この頃には、既に燐華の体の震えは治まっていた。




