彼女、心配される
次の日の朝。
俺は燐華さんを迎えに行った。
怪我をした燐華さんを放っておくことができないので、今日から登校も一緒にすることにした。
燐華さんのマンションに入り、部屋の扉をノックする。
すると、すぐに燐華さんが開錠し、扉を開けた。
「おはようございます。よく寝れましたか?」
「ふわああ......。頭痛くてあんまり寝れなかった.....」
開口一番大欠伸である。
悪化するから酒を飲むなと伝えられているのに飲んでしまったのだから当然だ。
「駅付いたら起こすんで、電車で寝てください」
「ふわぁあーい......」
眠くてフラフラしている燐華さんの右手を握り、俺は最寄り駅へ向かい始めた。
怪我をしてから初の登校。
怪我はまだ治っておらず、燐華さんは頭に包帯を巻いたままだ。
そんな彼女を周りはチラ見する。
「なんか見られてるね......」
「そりゃ包帯ぐるぐる巻きなので.....」
二人で教室に向かっていると、燐華さんが怪我した原因ともいえる人物に呼びかけられた。
「り、燐華ちゃん!? どうしたのその頭!」
夏鈴さんが走って近づいてくる。
「うぅ気分が......」
「頑張ってください......!」
小声で燐華さんを励ます。
「怪我したの!? なんかフラフラしてるし......!」
フラフラしているのは怪我というより、寝不足と夏鈴さんのせいであるが、それを知る由もなかった。
「とりあえず一旦座ろうよ!」
燐華さんは夏鈴さんに手を取られ、連れていかれた。
それを俺は追いかける。
「ほら座って!」
燐華さんを休憩スペースのソファに座らせる。
「起きてられる? 横になる?」
夏鈴さんは太ももをポンポンと叩く。
「いや、大丈夫だから......」
「いいからいいから。遠慮しないで!」
少し強引だが、燐華さんを寝かせた。
周囲の視線を集めていて、燐華さんは少し恥ずかしそうだった。
俺は寝ている燐華さんの隣に座った。
「彼氏さんに聞きたいんだけど、どうしちゃったわけ?」
「実は、階段で転んじゃって......。一応大学には来れそうだったので来たんですが......」
「そうなんだ......。でも無理しちゃだめだよ......!」
夏鈴さんは意識が朦朧としている燐華さんの頭を撫でる。
慰めているつもりだろうが、この行動で燐華さんは弱っている。
「夏鈴ちゃん......。もう大丈夫だから......!」
燐華さんは無理やり起き上がると、頭を押さえた。
「燐華さん! 無理しちゃダメですよ!」
「いや大丈夫......。それより、教室に行こ......?」
燐華さんは立ち上がると、フラつきながら教室へと歩き始めた。
「夏鈴さん、燐華さんを連れて行かないといけないので、俺も失礼します」
「うん。ちゃんと面倒見てあげてね」
俺は立ち上がり、燐華さんを支えながら教室へと向かった。




