無造作に植え付けられたひまわりは咲く事もない
この作品は『なろうラジオ大賞4』参加作品です。
その鈴のような笑い声に私は振り返らざるを得なかった。
その声の持ち主はクラスきっての美少女
その笑い声は私の“想い人”に向けられたもの。
9月最初の朝の教室。
席に座っている彼女は
その肌を
夏に染め上げられていて
同じ色味の私の“想い人”を見上げ
長い髪をサラサラとなびかせて
皆で行ったどこかの海の話に興じている。
ほどなく二人の周りをギャラリーが取り囲み
私は人垣の間から
二人の手が机の上に重ね置かれているのを見る。
お互いを絡め
声にならない会話をしている二人の指たちの上を
彼女の髪がキラキラと降り注ぐ。
私はふと
自分の手を見る。
土くれの汚れが未だに落ちない指先。
無造作に植え付けられたひまわりとギラギラの太陽にチラ見せし続けた袖口は
手首の周りだけが焦げ付いて
それを隠そうとしてはめた腕時計の白を
いっそう際立たせている。
ああ、彼女たちの
素肌に染め残された“白”は…
きっと
官能の桜色に染まり
その秘密を
お互い見知ったのだろう
ドン!
私の目の前
机の上に
無造作に置かれた毛むくじゃらの手
ガハガハ笑うたびに
机まで揺り動かされる。
そのずっと向こうの
二人の指たちが
ねっとりした絡みの激しさを増していくのに…
と
エセウェストミンスターが
「キンコンカンコン」鳴って
人垣はバラけ、散開してゆく。
繋がれた二人の指も
引き伸びて細くなった飴がちぎれるように
別れを惜しみながらほどかれていく。
そして
私の机は毛むくじゃらの手と学生服のお尻に押され大幅に角度を変えさせられ
“無関心”の遺跡となる。
ああ!!
あちこちあちこち
三密しやがって!!
みんな感染して
学級閉鎖になればいいのに!!
あ、だめだ…
そしたら私
これ幸いと
市民農園に駆り出されて
ますます汚れ
焼かれるだけだ。
心の中で
諦めの深いため息をついて
机の角を掴んで引き戻した時
グ!ガ・ガ・ガ・ガと音が出て…
初めて私に注がれた視線たちは
非難めいた
冷たいものばかりだった。
既出の作品を『なろうラジオ大賞4』向けにアレンジいたしました(^^;)
ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!<m(__)m>