メス堕ち済みtsヒロインの純粋な恋
放課後の教室、自分の机に大量のチョコレートを積み上げた親友に向かって、
「やっぱ今年も大量だね。これ、使いなよ。」
そう言って僕は手提げ袋を東に渡した。
「ああ、ありがとう。でも今年はそんなに無いぞ?」
「どうして?」
「そっか、お前には言ってなかったか、いや何、去年もらった手作りチョコの中にな、、、髪の毛が大量に入ってて、あれがトラウマだからちょっと手作りはもう受け取らないようにしたんだ。」
「、、、そっか、、、。」
「ん?どうした?」
「い、いや、なんでも無い!やっぱモテ男は大変だね〜。」
そう言いながら僕は鞄から取り出したものを自分の後ろに隠した。
「そうだな。」
そういう東はやけにソワソワしていた。そんなことがあったのも関わらず東はバレンタインが待ち遠しかったかのような態度が滲み出ている。そんな反応を見て気づかない僕では無い。きっと東は好きな人ができたのだろう。やっと東にも好きな人ができたのかと感慨深くなる。こいつは昔からモテるくせに好きな人はいなかったからね。でも、寂しくなるね、、、少し前の話をしようか。
事は半年前に遡る。
「おはよ〜、、、」
僕はいつも通り朝食を作っている母に向かって挨拶をした。
「おはよう、恋、、、って、あなたどうしたの!その格好!」
なんだろう、僕、寝てる間に何かしたのかな、でも僕って寝相はいい方だったはずなんだけどな、、、そう思いながらも姿見の前まで行き、自分の格好を確認した。
「なんのこと、、、って、なんで僕におっぱいがついてるのさ!?」
そう、どうやら僕は女の子になってしまったみたいだ。肩あたりまで伸びた黒髪に、ぱっちりした目に、吸い込まれてしまいそうなくらい美しい、やや潤みのある真っ黒な瞳。身長は元とあまり変わっていなさげだが、、、いや、少し視点が低くなったかな?5センチは確実に縮んでいそうだ。しっかりと細いウエスト、そして、男である僕についていたらおかしい二つの塊に目がいった。鏡に映った僕は、自分で言うのもおかしな話だけれど、とても可愛かった。
「まあいいわ。息子が娘になっただけだもの。見た目が変わろうと、性別が変わろうと可愛い我が子には変わらないんだから。」
母のその言葉にうるっときたが、やはり困るものは困るだろうと、ツッコミを入れる。
「お母さん、、、それでも困る事は困るんだよ、、、」
まあこんな感じで僕は女の子になってしまったんだけれど、うちの親が特殊なのか、身内は普通に適応していった。そのうち知られてしまうと分かりきっているのに隠しておく必要もないので、その日のうちに東とその家族を呼び、僕が女の子になってしまったことを伝えた。
「お邪魔しま、、、す、、、」
挨拶の途中で目が合い、最後の方が聞き取り辛いくらいに細くなった東に向かって、僕も挨拶を返した。
「いらっしゃいませ。」
できるだけしとやかに、美しく。すると、後から入ってきた東に母親が声を上げた。
「あら、真咲さん、どうしたのこの可愛い女の子!」
「今日はこの子を紹介しようと思って呼んだんですよ〜」
「え〜!そうなんですか!ほら東!挨拶しなさい!」
「こ、こんにちは、いつも恋にはお世話になっております。茨崎東です。」
東はとても緊張しているのか、言葉が堅く、たどたどしく、落ち着きがないように見えた。正直、こんな東を見るのは初めてなので、とても面白い。
「もう東ったら、いくら可愛いからって見惚れすぎよ。」
「なっ!ち、ちげーし!変なこと言うな!」
母にいじられ必死で言い返す東。僕はとうとう我慢の限界に達した。
「ちょっwもう限界wwwwww」
「だめw私ももう無理w東くん面白すぎるわよw」
と、母と僕は同時に吹き出した。それを見て唖然とする東の顔があまりに間抜けだったので、僕はさらに吹き出した。しかし、流石にそろそろ説明をしてあげないと可哀想なので、ネタバラシをすることにした。
「wwwごめんごめんw僕だよ僕www恋だよw朝起きたら女の子になってて、それを説明しようとしただけなんだwwwにしても東www面白すぎるwww」
途端、東の顔が真っ赤に染まり、
「なっ、、、!お前ー!」
「ごめんってw」
演技をして揶揄ったんだけど、これ実はお母さんの提案だったんだよね。だけど何故か僕だけがものすごく怒られたなぁ、、、でも思い出すとまた笑えてきたwそれはそうと、やはりいきなり性別が変わると大変で、色々手続きをしてたら夏休みは終わってしまっていた。具体的には毎日病院に通って検査を受けたり、役所に行って戸籍に関する手続きをしたり。、、、海、行きたかったなぁ、、、
そうして秋になって、僕の制服は男子用から女子用に変わった。まだ少し暑い中、学校へ行くと、学校ではびっくりするくらい注目を浴びた。さらには名前も知らない男子から告白されることもあった。もともと男だったってこともあって、セクハラ紛いのこともされた。まあ、まだ胸を触らせろって言ってくるくらいだったから良かったけど、確か、、、
「おい真咲〜おっぱい触らせろよ〜俺ら友達だろ〜?」
放課後、呼び出されたと思ったらいかにもなチャラ男がいて僕がくるなりとんでも無いことを言い出した。
「いや、君誰だよ。僕、君みたいなチャラい人と友達になった記憶無いんだけど。」
そう、こいつは僕のことを友達と言ってくるが、そもそも面識がない。この体になってからは普通の告白はおろか、僕が元男だから気軽にそういった行為をやらせてもらえると勘違いしてやってくる輩が増えてきた。
「おいおい、つれないこと言うなよ〜いいだろ?ちょっとくらい。」
今回みたいなしつこいのは少ないけど、僕には東がいる。あいつも名前を出すことを許してくれているのでお言葉に甘えて使わせてもらっている。
「嫌に決まってるだろ。僕が男だろうが女だろうが、君みたいにチャラい相手に体を触らせるのは絶対に嫌だね。もういいだろ?僕は帰る。東も待たせてるし。」
僕がそう言うと、
「うるせぇ!」
と、僕の体を無理矢理校舎に押し付けて、襲ってきた。
「痛っ!やめろ!離せ!」
僕は必死に抵抗するが、女の子になったからだろうか、運動能力が前の半分にも満たない僕は、逃れることができず、ただただ暴れることしかできなかった。
「俺に従ってれば良かったものを、、、泣いて謝っても許してたらねぇからな!」
チャラ男の手が僕の制服に伸びる。終わったと思い、恐怖で目を瞑った。
「助けて、東、、、」
無意識に出た言葉だった。諦めが混じった、か細く弱々しい声。
「うちの恋に何やってくれてんすか!」
東の声がした。僕は徐に閉じていた目を開ける。そこには、昇降口で待っているはずの東がいた。チャラ男の手は僕に届く数センチ前で東が掴んでいる。
「帰れ。恋に手を出したら絶対に許さない。」
そう言って東は掴んだ手を押し返した。
「クソッ!」
と、チャラ男は走って逃げていく。
「どう、、、して、、、?」
僕は東に付き添ってもらいながら保健室に向かう途中、そう質問した。
「なんか嫌な予感がしたんだ、そしたら、お前が助けを呼ぶ声が聞こえた気がして。それで急いで行った。それに、親友だろ?俺ら。親友を助けるのは当然のことだ。」
「、、、ありがとう。」
僕は礼を言うしかできなかった。
でも、この時だと思う。自分が本当に女の子になってしまったんだと自覚したのは。
それからの僕は自分の態度を改めて、女の子らしく振る舞うようになった。最初の方は僕がモテるのを妬んでいた女子とも和解して、女の子の体について色々教えてもらった。最近はその子たちがガードマンみたいなことをしてくれているから、告白されたり、セクハラされる事はかなり減った。彼女たち曰く
「恋ちゃんはガードが緩いから私たちが守らなきゃ!」
とのことらしい。女の子に守ってもらうなんて、元男としてのプライドはズタボロだよ。まあ、そんなわけでようやくこの体にも、周りにも馴染んできた僕なんだけれど、最近、僕は悩みができた。いや、正確には、あの時助けてもらってからだろう。どうやら僕は心まで女の子になってしまったらしい。というのも、僕は東のことが異性として好きになってしまったのだ。初めは気づかなかった。いや、気づかないように蓋をしていた、、、らしい。
「恋ちゃんは、元男だから男に惚れるわけがないんだーって、自分の気持ちに蓋をしてるだけだよ!」
「あー、それうちもわかるわー、正直めちゃくちゃお似合いカップルだと思うけどそこなんだよねー。」
「それなー、寧ろあれで恋してないっていう方が無理があるっていうかー。」
「ちょっとうちらで背中押しちゃう?」
「あー、それ、ありよりのあり。」
「そうと決まれば早速やっちゃおー!」
というやり取りが彼女たちの間であったようで、
「ねー恋ちゃん、ぶっちゃけ茨崎君のこと好きでしょ?」
と、ファストフード店で喋っている時に唐突に聞かれて、
「ち、違うよ!あいつとは大親友で幼馴染で、、、とにかく!僕は元とはいえ男なんだよ?僕があいつのことを好きになるわけないじゃ無いか、、、!」
僕は焦って色々言ってしまった。
「いや〜もうそれ答え言っちゃってるようなもんじゃん。てかうちら恋愛的な好きなんて一言も言ってないけど〜?」
「その反応を見る限り、やっぱ好きなんじゃん。」
「ねー?てか、恋ちゃんは今女の子なんだから別に男が好きでも問題ないんだよ?自分の気持ちに正直になりなって。」
「僕は、東が好き。」
そう言って、今までの気持ちがスッと整った気がした。
「僕は、東が好き。親友としてでも幼馴染としてでもなく、一人の女の子として、東が好き。」
「それでいいんだよ。」
「そうそう、変に迷うことなんてないの。」
「大丈夫、恋ならいけるって。」
「うん、ありがとう。みんな。僕、頑張るよ。でも、わからないこともいっぱいあるから、僕に力を貸してもらっていいかな?」
「もちのロンよ。」
「うちら、友達じゃん?」
「取り敢えずバレンタインっしょ!」
「やっぱ手作りチョコが一番グッとくるっしょ。恋ちゃん、胃袋を掴みに行こう。」
「うん!」
僕はもう迷わない。ちゃんと東に告白するんだ。僕の友達が背中を押してくれるし、怖いものなんてない。
僕はそれから、彼女たちとチョコを作り始めた。料理慣れしてないこともあって、かなり苦戦したのだけれど、なんとかそれっぽくチョコを作ることができた。あとは渡すだけだ。って、そう思ってたんだ、、、。
居た堪れなくなった僕はトイレに行ってくる。と、その場から去った。教室のドアを抜けた僕は、早足で倉庫裏に行き、その場に体育座りをし、蹲る。涙が溢れて止まらない。せっかく作ったチョコを握りしめる。知らなかった。東が手作りチョコを断るようになっただなんて。知らなかった。東に好きな人が出来たなんて。僕は惨めで惨めで仕方なくなった。ふと、握っていたチョコを見る。強く握りしめたせいか、作ったブラウニーは無惨な姿になっていた。これでは東に渡すこともできないな、と思い、近くのゴミ箱に捨てようとした。
「捨てるなら俺が貰っていいか?」
そんな声が聞こえた。僕が一番好きな声、僕が今一番聞きたく無い声。ゆっくりと声の主の方へ向くと、東がいた。台詞とは裏腹に罰の悪そうな顔をして。
「だめ。もうそれ、ぐしゃぐしゃだから。」
僕はそれを拒絶した。きっと僕が親友だから。だから情けをかけてくれているんだ。でも僕はそんなぐしゃぐしゃになったチョコレートをあげたくなんてなかった。
「でも、捨てようとしてたんだろ?なら別にいいだろ。」
「でも、、、」
食い下がってくる東に、僕は言葉が詰まる。
「でもじゃない。俺は、お前が俺に作ってくれたチョコが欲しいんだ。」
「なんで、、、?」
僕が親友だから?
「だって俺は、恋、お前が好きだからだよ。女になって初めて会ったあの時から、俺はお前が好きなんだ。しかもその手、これを作る時にやったんだろ?キッチンに立ったことのないお前が、俺のために、手をこんなにしてまで作ってくれたんだろ?俺は普段なれないことをしてまで俺のために作ってくれたそのチョコが手作りは受け取らないって失言した時にこそっと隠したお前のそのチョコが欲しい。」
「、、、そんなに言われたら、あげるしかないじゃないか。ばか、、、」
僕がそう言った途端、東は僕に抱きついてきた。
「!?」
僕がびっくりして固まっていると、
「「「恋ちゃんに何してくれてんだこのモテ男!!!」」」
と、暁ちゃんたちが飛び出してきた。
「みんな!?どうしてここに!?」
「いや〜あんなん見せられたら流石にキレるよー。恋ちゃんが頑張って作ったチョコを、知らなかったとはいえ拒絶したんだから。」
「にしてもすごかったよねー?恋ちゃんが出てってすぐにこいつの胸ぐら掴んで、恋ちゃんがお前のことを思ってチョコを作ってきたんだぞ!男なら好きな女の努力に気づけこのデレカシー無し男!って怒鳴ったんだよねー?」
僕が出て行った後にそんなことがあったのか、、、なんか申し訳ないな、、、
「ちょ、恥ずかしいから恋ちゃんの前では言わないでよ!」
「まあまあ、でもそのおかげでちゃんと、、、ではないけど渡せたんだしいいじゃん。ほら、私たちは邪魔だろうから戻るよ。」
「そうだねー、ほら、いくよ暁ちゃん。」
「恋ちゃん、頑張るのよ!」
「う、うん、ありがとう。僕、頑張る。」
「んじゃね〜」
そう言って暁ちゃんたちは後者の方へ戻って行った。残された僕たちは、ゆっくりと話し始めた。
「お前の友達、凄いな、台風みたいだった。でも感謝してるよ。」
「僕も、助けてもらってばかりだ。」
暫く沈黙が続き、ようやく東が口を開く。
「なあ恋、」
彼が僕を呼ぶ。
「なに?」
僕は返事をする。
「俺と、付き合ってくれないか?」
ずっと欲しかった言葉、ずっと待っていた言葉、嬉しさに反応が遅れる。
「、、、うん、もちろん。」
少しの間を開けて僕は答える。
僕たちは何も言わずに校舎へ戻ろうとした。指先が触れる。彼はゆっくりと僕の指に指を絡ませ、優しく、しかし力強く握った。未だ空けない寒空の下、まだほんのりと温かい右手が冷え切った僕の手を温めていた。