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Drive us crazy  作者: 神代 鶫
未来への物語
59/60

カミーユ

 煙の中から、無傷のカミーユが楽しそうに笑いながら現れた。


「乱暴だな、本当に。この能力はユプシロンだろ?」


 名前を呼ばれると同時に、杖で地を叩く。作り出された2体のゴーレムが、カミーユに襲い掛かった。


「アタシは、アンタを許さない! マザーを侮辱し、タウを利用しようとした……殺してやる!」


 カミーユが死ねば、タウが解放されるかもしれない。そう考えたユプシロンは、見つけても、待機していなければいけなかったのに、どうしても我慢できなかった。


「うーん。絶対邪魔してくるって分かってたからさ、実験が上手く行けば、自分で自分を殺させようと思ったんだけど」


 ゴーレムは爆発し、その欠片が飛んできたため、ユプシロンは防護壁を作る。やはり、マザーの言っていた通りだった。スペアボディを使って自分達を殺そうとしていたのだ。


「君達は価値がない。ただの駒として働いてくれれば良かったんだよ。ああ、本当に残念だ」


 カミーユが作り出した無数の針が、ユプシロンを殺そうとする。防護壁に突き刺さると、そこに大きな穴が開き、しまったと思った時には、針は穴を通り抜けていた。


「……?」


 ぎゅっと閉じた目をゆっくりと開くと、針は全て、風に捕らえられていた。


「――――よく分かったわ。彼女達を道具としてしか見てないってことが」


 静観していたエスメラルダの魔導書が輝いていた。この風は、彼女だ。捕らえた針は風圧で粉々に砕け散るが、風は勢いを増して行く。カミーユは、エスメラルダの能力の高さに目を輝かせていた。


「こんな凄いサンプルがいたなんて! これは、是非とも手に入れなくては――――」


 手足が、風にねじ切られる。地へと倒れたカミーユは、酷いなと言いながら再生させて立ち上がったところを、雷に打たれた。


「……これって、あの時の……⁉」

「マスターに手を出すつもりなら殺すわよ」


 エスメラルダの背後から現れたエクレールと目が合った。にっこりと微笑まれるが、あの時の事を思い出したユプシロンの顔が引き攣る。


「……へえ、幻獣を従えてるのか……」


 カミーユの身体が再生していく。再生するのも痛いんだよと笑いながら言うカミーユの身体から、強い力が溢れ出ようとしていた。それを抑え込もうとする干渉に抵抗する。


「追いかけてきたのか、ああ、しつこいな……っ!」


 セレスの干渉に気が付いたカミーユは、苛立ちを隠せない。


「うるさいうるさい! ぼくの邪魔をするな!」


 カミーユの魔力オドとセレスの干渉がぶつかり合うが、セレスの方が上である。飲み込まれそうになったカミーユは、持っていた錠剤を口に放り入れた。それは、まだ安全性が確認できていない薬であるが、使わなければ、ここで終わる。そんなつまらない人生など――――嫌だ。

 セレスは、舌打ちをした。カミーユの魔力オドがどんどん上がっていく。あっという間にセレスの干渉を取り込もうとしたため、干渉を切断せざるを得なくなった。


「あははははっ!」


 楽しそうに笑いだすカミーユを見て、エスメラルダはユプシロンに下がるように言った。完全に、魔力オドが暴走している。あの薬を服用したことで、彼自身がおかしくなってしまった。暴走した魔力オド魔力マナを吸収しながら暴れていた。


「エクレール、行ける?」

「ええ、マスター」


 行こうとした2人に、「待って」と声をかけたのは、アルファだった。いつの間にか、成功体が揃っており、少し離れたところにマザーと、彼女を守るようにナエマが立っていた。


「私達……augとしての役目を果たす」


 こちらを見てにたりと笑ったカミーユは、人形が増えたことを子供のように喜んだ。


「バラバラにしてあげるよ!」


 カミーユの背中から現れた、目を隠している女性が、成功体達へと向かって来てくる。強い殺意を感じ、反射的にエクレールが雷の壁を作ったとほぼ同時に、女性の長い髪の毛が刃へと変わり、成功体を殺そうとしたが阻まれると、壁を壊そうと攻撃を繰り返していた。


「――――どうすればいい?」


 エスメラルダの問いに、足止めしてほしいと返すと、成功体達は横一列に並んだ。手を繋いで、瞳を閉じれば、彼女達の身体の中にある精霊石が輝きだした。魔力が重なっていき、それはカミーユに襲い掛かると、耳を塞ぎ暴れ出す。


「あ、あああっ⁉ うるさい! うるさい、うるさい!」


 何が起こっているのかは、見た目ではわからない。それぞれの魔力が重なってカミーユに襲い掛かっているようにしか見えないが、カミーユは不協和音に襲われていた。雷の壁への攻撃をやめて、助けに行こうとしたが、壁は広がると女性を取り囲んだ。


「黙れ……黙れ!」


 苦しみながらも放った一撃を、エスメラルダが魔法で相殺する。


「人形、如きが……っ!」


 カミーユの視界に、遠くから自分を泣きながら睨みつけているジェシカの姿が入り、手を伸ばす。クローン達は、ただの戦闘型ドールと報告を受けていたため、ちゃんと調べなかった。調べていれば気が付いただろう。彼女達が作られた本当の目的――――その命を代償にして、カミーユから世界を救うという目的に。


「がっ⁉」


 魂が身体から引き剝がされる感覚に、胸を押さえる。自分の魂を光翼人こうよくじんに入れるために、色々な物を代償にした。その努力は今、水の泡と化していた。


 ――――こんなことは認められない。こんな、虫けら共に、台無しにされるなどありえない。まだまだ、遊び足りない。遊び、足りない――――。


 カミーユの最後の抵抗に、成功体達の身体が、限界に近づいていた。このままでは、何も出来ずに、消滅する……そんなわけには――――いかない。


 身体が崩れ始めたその時、風が吹き抜けて光が閃くと、カミーユの抵抗が無くなり、成功体達は最後の力を振り絞った。悲鳴を上げながら、グラントリーの魂が身体から追い出されていく。


「今です!」


 カミーユを斬ったのは、チャンスを伺っていた琴音だった。一緒に待機していたミスティが、胸の前で手を組むと身体が輝きだし、彼女の中の光翼人こうよくじんの魂が、本来の身体へ戻っていき、光輝いた――――。

augは、オーグメンテッドトライアドの略です。

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