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Drive us crazy  作者: 神代 鶫
「始まりの物語」
17/60

神託を受けたサムライ娘

 モデルナの腕の痛み半端ねぇ。と、いうわけで復活です。そろそろメインキャラが揃ってきたかなー。揃ったところでキャラ紹介ページを追加します。もちろん、読まなくても平気です。


 港に大きな客船が停泊していた。革のトランクを手にした袴姿の女性が船を降りる。その姿に、人々は興味津々であった。

 美しい漆黒の髪をハーフアップにし、白の袴の裾から覗くレース。シフォンフリルの伊達衿、レースのブラウス。帯締め飾りは黒のリボンに白の花。そして、ブーツを履いている和洋折衷な女性。腰には2ふりの刀が差してある。――ジャクリーヌでは珍しい格好であることから、どうしても目立ってしまうのだが、その視線を気にすることなく、女性は歩き出した。

 彼女の名前は「琴音」。やまとの国出身である彼女は、世界を識るために旅をしている途中、神託を受けてジャクリーヌにやって来たのだ。


「……なるほどなー……」


 霊力が高い彼女は、ファタモルガナが見えていた。しかし、ファタモルガナは彼女を襲ってこない。目の前を通り過ぎていったファタモルガナを、とりあえずは気にしないことにして街中へと向かった。

 街を視てから、対処法を考えなければならない。そう思った琴音は、大通りを歩きながら、細くて薄暗い裏路地も視て行く。


(ここまで酷いと、時間がかかりそう)


 神に託されたのだから頑張ろうと気合を入れた彼女の目に、エプロン姿の女性が困っているのが目に留まって声をかける。

 琴音の格好に一瞬驚いたが、女性――カラルナは知り合いの子供が行方不明になったことを教えてくれた。

 琴音は特徴といなくなった時の状況を聞く。


「いつも、ランチをしに来るのに来なくて……」


 探しに行きたかったが、お店が混んでて行けなかったこと、家を訪ねたが誰もいなかったこと、いそうな場所を探しても見つからないこと説明する。

 海が危ないことは知っているため、1人では近づかないから海に落ちたとは考えられない。

 ――カラルナは焦っていた。


「その子のご両親は……?」

「……父親は漁師で……その……」


 話しにくいことを聞いてしまったのだろうかと、琴音は謝った。カラルナは違うんですと首を振る。


「帰ってくるのは朝だけで……あとは船の上なんです。母親は病院に入院していて、ルイゼに会ったことすらなくて……だから、みんなでルイゼが大きくなるまで守ろうと決めてたのに……っ!」


 妻の病院代。娘にかかる必要なお金。少しでも稼がなければならないのだ。ルイゼの両親は、ジャクリーヌの他の漁師たちからの人望が厚い。ルイゼの面倒を見るのを嫌がる人などいない――当然、カラルナもだ。

 泣き出したカラルナの肩に手を置き、琴音は大丈夫と声をかけた。


「絶対に見つけます。任せて下さい」


 琴音は式札しきふだを取り出すとカラルナの手に乗せた。ルイゼのことを考えるように伝える。頷いたカラルナが、目を閉じてルイゼのことを考え初めて数秒、式札しきふだは鳥へと姿を変えた。


「行け」


 式神である鳥は琴音の声に応えるように、空高く舞い上がる。


「カラルナ!」

「ヴェロニカさん!」


 そこへ、ルイゼがいなくなったと聞いたヴェロニカがやって来た。全力で走って来たのだろう。大きく肩で息をしている。


「……ルイゼが……いなくなったって……っ!?」

お昼前までは、目撃されてるの。いつものように、家の前で遊んでいたって……。でも、その後から誰も見てなくて……」


 その横で、琴音は式神と視覚を共有する。式神は、旋回して屋根に止まった。



「……見つけた」

「え?」

「遺跡の中に誰かと一緒にいます」


 困惑するヴェロニカに、カラナルは琴音が手伝ってくれていることを説明した。

 

「助かるわ! でも、遺跡って……まさか……」

「この街の地下にある遺跡ですけど……よく立ち入ろうと思いましたね。あ、そっか、見えないのか……」


 ヴェロニカはカラルナに、ヴァルキュリアのメンバーを呼んできて欲しいとお願いすると、わかったと頷き、カラルナは走って行った。


「……確認だけど、何が見えないの?」

「えっと……この街にいる幽霊みたいな化物のことです」

「あなた、ファタモルガナが見えるのね」


 あの化物の名前が、ファタモルガナということを理解した琴音は頷いた。

 地下にある遺跡に、ファタモルガナが徘徊しているのを感じとっている琴音に、ヴェロニカはファタモルガナについて簡単に説明した。

 そして――遺跡。ジャクリーヌは遺跡を潰した上に作られているのだが、遺跡には入ろうと思えば入れるのだ。しかし、入口は閉鎖されている。


「さて、問題はどうやって遺跡に侵入するかよね」

「ご案内します」

「え?」


 走り出した琴音の後を追う。たどり着いたのは、裏路地にある空き家。ここから遺跡に入れると言う。

 空き家のドアノブに手をかけた。鍵はかかっておらず、人の気配もしないため、中を覗いてみると、残された家具が傷んで埃が被っていて、蜘蛛の巣が張っている。

 琴音は式神をもう1体呼び出した。犬の姿をした式神は、時計が置いてある棚に乗り、針を回す。


「……何の音?」


 奥の部屋に置いてある大型置時計グランドファザークロックがゆっくりと右へスライドし、階段が現れた。

式神は、琴音を見てから階段を下りていく。


「行きましょう」

「ええ」


 式神の後に続いて、2人も階段をゆっくりと下りていくのだった―――。


 「大和」か「倭」で悩みましたが「やまと」って何か和な感じがしてステキ……。

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