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Drive us crazy  作者: 神代 鶫
「始まりの物語」
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トラブルメーカー

7月30日ということにガクブルしつつ、更新です。


 次の日の朝。外から聞こえる、キャラメルの洗濯の歌に目を覚ましたダリアは、ベッドから下りると窓を開けた。楽しそうに洗濯物を干すキャラメルを眺めていると、視線に気が付いたキャラメルは元気よく挨拶をする。


「ダリアさん、朝食の準備できてますよ~!」

「ああ、ありがとう。支度して下りるよ」

「はい!」


 身支度を整え、ダリアは部屋から出た。ダイニングルームにはエスメラルダとアプリコットがいて、朝食を食べながら談笑している。おはようと声をかければ、2人もおはようと挨拶をした。


「ダリアちゃん、隣にどうぞ。一緒に食べましょ」


 アプリコットは立ち上がると、テーブルの傍に置かれたワゴンからダリアの分を取って来てくれた。お礼を言い受け取ると、アプリコットの隣に座る。


「今ね、エスメラルダちゃんにエクレールちゃんのこと聞いてたんだよ」

「そういや、見当たらないな」

「基本的には起きてることの方が少ないよ。でも、この街だと寝られないみたい」


 今も本来の姿で寝ているのが感じ取れていた。ヴァルキュリアに協力する本当の目的がそれであることは、誰にも言っていない。


「そういや、眠り羊って言ってたっけ」

「寝ることで回復してるから、睡眠時間が長ければ長いほど体調も良くなるし、人間と違って寝だめ出来るから……まあ、寝ててくれた方がありがたいかな」


 エスメラルダの説明に、幻獣って面白いと、2人は思っていた。

 幻獣が人間と契約を交わし、一緒にいること自体がイレギュラーなのだが、幻獣に詳しくない2人はそれには気が付くはずもない。

 

「それより、あのマーガレットだっけ? どうなってるのかな?」

「あー……すぐには決まらないんじゃないか? さすがに悪魔と幻獣を間違えるなんて……誰も思わないだろうし」


 ――ピタリと、パンを口に運ぼうとした手を止めた。ダリアは気が付いた。――気が付いてしまった。シスターで無くなったら聖女教会を追い出されて……自分の所へ来るということに。


「ダリアちゃん?」

「え、ちょっと、大丈夫?」


 顔面蒼白になったと思ったら、ガタガタ震え始めた。せっかく離れられたのに、またあの苦労する日々が戻ってくるのかと絶望する。


「マーガレットガココニキタラ、オレハタビダッタトツタエテクレ」

「なんで片言……? ダリアちゃん、大丈夫だから落ち着いて。ほら、紅茶でも飲んで」


 アプリコットに手渡された紅茶が入ったカップを受け取ると、一気に飲み干した。


「……彼女にどんな目にあわされて来たの……?」

「話すと、長いぞ……?」


 知らない人についていって攫われそうになる。森に行こうと連れていかれて、クマに追いかけられて滝に落ちる。ちなみに、マーガレットは無傷だったが、ダリアは高熱で数週間寝込んだ。それから数日後、懲りずに森に行こうと言ってきたが断り、その結果、街に狼の群れを連れてきてしまい街はパニック。


「森に……」

「待って。森シリーズいくつあるの?」

「……あー……」


 思いつくだけ数えていくダリアだったが、両手で足りないことに気が付いた。

 森だけではない。魔法を使いたいと言い、魔導書を見ながらやったが大爆発を起こす。依頼を受けて来た街で、悪魔と戦闘の最中に街のシンボルであった時計塔を大破させる。そのせいで中止になったお祭りが出来ないことに納得がいかなくて、なんでどうして攻撃をし、おまえのせいだろと街を追い出された……等々、思い出すだけで眩暈がする。


「……よく、シスターになれたね」


 アプリコットの言葉に、エスメラルダが大きく頷く。ダリアも疑問に思い、カトリーヌに会った時に聞いてみたところ、悪魔祓いとしての能力は合格点であり、特に浄化の力はずば抜けて高かった。あとは、落ち着いてくれれば文句ない。と返された。


「まあ、仕事の報酬金は必要な分のみ受け取って、あとは寄付してるし……依頼が無いものに悪魔が絡んでていてもお金は受け取らないし……そういうとこも評価されたみたいだけどな」


 再会した時、本当に嬉しそうにシスターになれたと言っていた。そんなマーガレットがどうなるのか。処分が決定するまでなんか落ち着かない。そう思いながらパンをかじった。

 

「つーか、このパンうまいな。キャラメルが作ってるんだっけ? 何でもできるんだな」

「元々、貴族に仕える一族の末っ子だけどね、契約武器が扱えることが分かって、ここに来ることになったの」


 最初はモニカとアプリコットだけだったヴァルキュリア。しばらくして、モニカがキャラメルを連れて来た。仕える予定だった貴族から断りの手紙が届き、行き場を失ったキャラメルにとってはラッキーだったと言えるだろう。


 ――だが、何故断られたのか定かではない。


 使用人は、オールマイティーでなければならないという教育を受けてきたのは幸いだ。ファタモルガナとの戦いに、大いに役立っているのは間違いないのだから。


「そういえば、ヴェロニカとモニカはどうした?」

「2人なら、城に呼び出されてるよ。多分、自警団のことじゃないかなぁ?」


 ソニアの報告を受けて、急遽議会が開かれることとなった。自警団をどうするのか、早急に決断しなければいけないとなったのだろう。リリベットが来た今、問題が起こるのは避けたい。


「ファタモルガナの存在を知ってるのはごく一部の人間だけだから、ヴァルキュリアを自警団のような存在にしたいっていう目論見があるみたい」


 そうすれば、モニカ達がここに住んでいる理由を問われなくても済む。――しかし、自警団の仕事も加わるのであれば、人員は足りないことは間違いない。そこを含めて、モニカとヴェロニカは議会へ出席するのだった――――。


「森シリーズ」

 ダリアとマーガレットは自然豊かな街に住んでいたため、近くに森がありました。近づくなと言われたら行かねばならない。それがマーガレットです。森にいる生き物はみんなお友達。なんで、怒るの?


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