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「ギリギリセーフ! おはよ、沙羅」

 なんていって教室に入ってきた春香は、今日も自分のものじゃない笑顔を貼り付けていた。

「おはよ。いつものことだけど少しは早く来ようって思わないの?」

「間に合ったんだから良いじゃん」

 春香はケラケラと笑いながらそう答えた。

 今の笑い方も春香のものじゃない。


 春香は中学生になった位から、好きだったモデルの真似をし始めた。

『笑顔や笑い方だけじゃなくて、服装、趣味、好きな食べ物、苦手な食べ物、好きなタイプ、普段使うもの、○○の癖、まだ整形は出来ないけど将来的には顔も。○○のことを隅から隅まで知り尽くして、全部○○と同じになりたいんだ』なんていうのは本人の弁。

 どれだけガワを似せたって、中身は違うものなのにね。


 春香がそのモデルすら気付いてないような癖を知っているように、春香が気付いていないだけで、春香にだって癖はある。

 春香は、そのモデルに似てる、なんて言われると上機嫌になって声のトーンが上がる。

 その逆に、立て続けに自分の名前を呼ばれると若干不機嫌になって声のトーンが少し下がる。

 そのモデルを見ているときの春香は、そのモデルとは似つかない、蕩けるような顔をしている。

 ぱっと思いつくだけでもこれぐらい。ずっと見ているからこれぐらいだったら朝飯前だ。

 他にも癖は色々と思い付くけど、思いついた癖のどれもがそのモデル絡み。

 皮肉なことに、同じになろうとするほどそのモデルに心酔しているからこそ、そのモデルが関わってきた途端に元の春香が出てきてしまう。

 春香がどんなに本物と同じにものになろうとしたって、結局は出来の良い模造品止まり。

 見た目がほとんど同じになったとしても、本質が同じになることはない。それに、ほとんど同じになったつもりの見た目でも、私みたいにじっくり見ていれば本物との違いに気付くだろう。

 どこまでいったとしても本物とは違うものだ。

 そう、違うもの。


 そんな春香だから私は好きになったんだ。

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