第八話 起きない
そこに広がっていた光景は、ボクと神狼様の周りを取り囲んでいたであろう魔物達が草木と一緒に凍り付いていたというものだった。
辺りが薄明るくなってきていたおかげで全体の確認は出来なかったけど、凍っているというのは確認することができた。
「え?……なにこれ」
目の前の光景にそんな言葉しか出なかった。
「何を…したの?」
ボクは思わす神狼様にそう問いかけていた。
『……』
しかし、神狼様は何も答えなかった。
「神狼……様?」
慌てて神狼様の方に振り向くと、神狼様の頭が上下にコクコクと動いていた。
「え?…眠ってる!?」
「どうすればいいの?」
完全に眠ってるみたいだ。……少し突っついてみたけど起きる気配が全く無い。
幸い子犬サイズだから運べはするけど……。
起きるまで待ってみようかな。
日が完全に昇り切れば起きてくれるはず。
三時間後……。
「………」
「起きない…もう完全に日が昇ってから結構時間経ってるんだけど?」
「突っついてみたけど全く起きる気配がない…」
突いた時に分かったけど、神狼様がめちゃくちゃモフモフだった。
ずっと触っていたい……そう思えるほどにモフモフだった。
「本当に、何時まで寝てるんだろ……神狼様」
神狼様が眠ってからさらに時間が経った。
青かった空は日が沈みかけ黄金色に染まっている。
『……ン?』
「…………」
『あれ?……此処は、何処だ?』
「あ…起きた」
やっと起きた……半日以上寝てる気がする…。
っていうか……ずっと起きてたせいか今度はボクが眠い。
「神狼様…眠り…過ぎ……だよ」
あ……ヤバイ、もう、耐えれない。
こうしてボクの視界が暗転し、ボクの意識は薄れて行った。
「え?……なにこれ?」
その言葉を最後に俺の意識は暗闇の中に沈んでいく。
次に目を覚ました時は、日が沈みだし、太陽が空を黄金色に染めている時だった。
『あれ?……此処は、何処だ?』
無意識で呟くと……。
「あ…起きた」
その声がしたと思ったらな夢たそうな声が聞こえてきた。
「神狼様…眠り…過ぎ……だよ」
限界だったのかすぅすぅと寝息が聞こえてきた。
『あぁ……まじか」
どうやら俺が眠っている間に結構撫でまわされたみたいだ。
所々毛並みが乱れまくってる。
っていうか……抱き枕にでもされたのだろうか変に締め付けられるような感じがある。
そんな状態から抜け出すために身体をねじらせて、腕の中からなんとか抜け出す。
『さて……どうしようか』
さっきからずっと悪意のような殺気のような……そんな気配が周りからヒシヒシと伝わってくる。
これ……やばいかも?
多分、人だよな?
殺気みたいなのを出してるのは……魔物か?しかも一匹だけじゃないな?
戦闘はなるべく避けたいし、面倒事はもっと嫌だし…どうするか。