第七話 絶望と驚き
え?…今……なんて?
ボク以外の住人が…居ない?
う……そ……ウソだ。嘘だ!!
だって…この村には村長だって、それに、ボク以外にも子供はたくさん……。
他の大人達だってたくさん居たはず……。
「生きてるのがボクだけって……一体どう言う事??」
「ボク以外にもこの村には沢山人が住んでるんだよ??」
『それでも……俺の言った事は間違いなく…事実だ」
『……この小屋?周辺では俺とお前以外の生命反応は感じない』
「そ……そんなッ!!」
「何も出来ないボクだけが生き残るなんて……」
「ボクが生き残るくらいなら…ボク以外の人が生き残れば良かったんだ!!」
『・・・・・』
これ以降神狼はずっと黙っている。
………こんな事になるくらいなら、いっそボクは…。
◇◇◇
これはかなりまずいかもしれないな……。
野性の勘?ってやつなのか……生き物の気配がこの小屋?みたいなところ以外全く感じられない。
でも、なんで急に?
俺何もしてないはずなんだけど?
兎に角このことを受け止めて貰わないと何も進まない。
でも……今の姿って完全に子犬サイズなんだよなぁ。
「ボクが生き残るくらいなら……ボク以外の人が生き残れば良かったんだ!!」
この言葉は……出来れば聞きたくはなかった。
この言葉を聞いたのはこれで二度目だったか…。
確か……この世界に来る前にも一度、似たような言葉を聞いたことがある。
……今は、しばらくはそっとして置いた方が良いか。
◇◇◇
………。
……眠ってるのかな?
それならこっそり離れる位の事ボクにだっては出来るはず。
そう思いボクはゆっくりと動き出した。
この村に私兵を派遣してきたであろう伯爵の屋敷に向けて。
「怖い……でもッ……それでもボクは!!」
『やっぱり、伯爵?とか言うやつの所に行くのか?』
ッ!!
一体……何時から?
「そ…そんな……確実に寝ていたはず!!」
『確かに寝てた……でも、それに結構焦ったんだぞ?』
「関係ないでしょ?ボクがどうなったって……」
『関係大ありだ!確かに今までだったら関係なかった。でも、契約したのを忘れたわけじゃないよな?』
「ッ……確かに契約はしたよ? 殆ど強制的にだったけど」
「でも関係ないよね?」
『いや、残念だがそれが関係してる』
『契約したせいなのか……それとも自称神様の悪戯かは分からないけど……』
『お前が今、何を思っているのか。次に何をしようとしているのか。お前の考えてる事が勝手に俺の頭の中に流れ込んでくるんだよ』
『それに、まだこんなに暗い……出歩くには危険すぎるだろ?』
『もし、俺がお前と同じ状況だったら絶対に出歩かないな』
『それに……この地帯を無傷で通れる気はしない』
『ところで、気づいてるか?』
「何に?」
ボクは気付けていなかった。
ボクと神狼様が沢山の魔物達に四方八方全て隙間なく囲まれている事に……。
『魔物?……とか言われてる存在に全方位囲まれてる』
『引き返すだけなら簡単にできる……だが進となると無傷ではいられない』
『お前なら、どっちを選ぶ?』
『今のままじゃその伯爵とか言うやつにはどうしたって勝てない』
『でも強くなれば勝てる可能性はある……違うか?』
……。
冷静になって考えてみれば……。確かに、神狼様の言う通りだと思う。
「……分かったよ。神狼様の言う通りにするよ」
「でも、どうやって引き返すの?」
「魔物に全方位囲まれてるんだよね?」
『・・・多分どうにかなると思う』
『お前の力を使えば……或いは』
『自分の詳細・・・ステータスを見ることは出来るか?』
自分の詳細?ステータス?……聞いた事が無い単語を言われボクは混乱する。
「どう言う事?ステータス?って何?」
『……んー。自分の能力値を知る術はあるか?」
「魔道具って言われる道具なら知ることは出来るみたいだけど……村にはそんな高価なものはないよ」
『う~ん……じゃぁ、今の俺の状態でどこまで凍らせられるかは全く分から無いが、やるだけやってみるか』
『うまく行けば魔物は大体凍り付くはずだ』
『一応念の為だ。目は瞑っておいてくれると助かる』
「……分かったよ!!」
そう言ってボクは目を瞑った。
眼を瞑って直ぐにほんの僅かほんの少しヒンヤリとした風を感じた。
もう目を開けて良いと言われ目を開けるとそこには……。
「え……何?これ!?」
目をゆっくり開けて周囲を確認すると……信じられない光景がボクの目の前に広がっていた。
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