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転生したら狼になってた  作者: 白黒
第二章
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第四十七話スタンピードの報告

エリスの反応に戸惑っているとマルセが口を開いた。


「天使…またとんでもない存在が出て来ましたね」

「ねえ、シロ君。その天使の派閥とかって聞いてない?」


あれ、二人は天使を知ってるのか?って言うかフレディアナさんや、目が死んだ魚みたいになってるんだが大丈夫か!?


『派閥?って言うのは知らないけど今回来た天使の上司は三大天使の一人、≪平等と均衡を司る天使≫のジークって言ってた』

「≪平等と均衡≫……比較的緩い派閥だね。良かったねエリス、厳しい派閥の天使だったら問答無用で君と言う存在は消されてたよ。ついでにシロ君、次に来君の元に来そうな派閥の天使とかって言ってなかった?君が会った天使は」

『……言ってた』

「?今の間は何?もしかしてなんかやばい感じのが来るの?」

『その天使の話だと…次に接触して来るであろう天使がちょっと……いやかなりヤバイらしい』

「ふ~ん。因みにどの派閥の天使?」

『……接触を図って来るであろう天使は……三大天使の一人、≪秩序と執行を司る天使≫ヴァルディエル本人らしい」


ヴァルディエルの名前を出した瞬間フレディアナの顔色が急に悪くなった。マルセは絶句しエリスはガタガタと震えだしていた。あ、エリスでもヴァルディエルの名前を知ってるのか?もしかして結構ヤバイ感じの奴なのか?


「ヴァ……ヴァルディエルって、世界序列第五位で三大天使の長を勤めてる天使の名前だよ!?」

「ヴァルディエル、私でも知っています。秩序や神への不心得者を感知すれば問答無用で不心得者に罰を下す。言わば神の代弁者と……でも、まさかそれが御伽話の中だけで語られる天使だったとは」

「エリスさん。天使は空想の存在ではありませんよ?確実にこの世界…天界に存在しています。シロさん、今回降臨した天使の階位などは分かりますでしょうか?」

『いや、階位までは分からないけど、自分で雑用係って言ってた。でも…』

「でも、何かな?」


一度言葉を区切るとすかさずフレディアナが聞いて来た。


『雑用をする様な天使には見えなかった。何より下位の天使が時を完全に止めれる程の権限があるとはどうにも』

「……成程ね。確かにおかしな話ではあるね。下位の天使が時を操れる程の権限を渡されているのは絶対に在り得ないよ。時間関係の権限を渡されるのは中位の中でもほんの僅か。今回降臨した天使は上位の天使もしくは中位の中でもかなり力の強い天使だと思うよ?」


うわぁ……マジかぁ。ってことは先刻、結構危なかったんじゃ!?


「それに、問題は≪秩序と執行を司る天使≫のヴァルディエルだよ。私も昔一度会った事あるけど、人の話を全く聞かないわ、唐突に攻撃を仕掛けてくるわで大変だったよ。しかも今は世界序列第五位になってるし……」

「まぁ、シロ君。頑張ってね?私じゃもう手も足も出ない位強くなってるから」


いや、頑張れって言われても何を頑張れと!?


『……出来れば会いたくないな』

「シロ君。それは無理だよ?先刻の天使でも何の前触れもなく私達の前に突然現れたみたいだし、じゃぁそのさらに上の三大天使、しかも長であるヴァルディエルが出来ないと思う?」


あ……終わった。


「シロさん……強く生きてください!!」

「……ご健闘をお祈りしています」


くそっ!!見捨てられた!!エリスなんて目も合わせようとしないし……。マルセ……目が泳ぎまくってて逆に怖い位なんだけど、大丈夫か?まぁ、これくらいならまだ良い。でもフレディアナ…お前なんで笑ってんの!?目なんて瞳孔まで開いてて怖いんだけど!?


「と、言う訳だから諦めて。まぁ、君神獣だし大丈夫でしょ、根拠はないけど」


て……適当過ぎる。せめて根拠位は欲しいんだけど!?


「コホン。さて、そろそろ本題に入っても良いでしょうか?」


マルセが咳ばらいをしながら告げる。

あ……完全に忘れてた。急に天使が乱入して来るし、さらにはその天使がさらっと重要なことを言って行くしで俺の頭の処理が追い付いてないんだけど……。


「それでは【スタンピード】到達直後から説明して頂きましょうか。一応嘘を看破できる魔道具を持っていますので嘘は通用しないと思ってください。ですので、実際より討伐数を少なく報告するなんて事は不可能だと思ってください」


マルセは指に嵌めている指輪を指さしながら言う。

あ……これ絶対誤魔化せれない奴だ。


「シロさん。お願いします」


……エリスさんや、またしても説明放棄ですか?


『……はぁ。【スタンピード】の先頭が門前五十メートル位まで来た時に俺の攻撃で殲滅しただけだ』

「……やはりですか。あの強大な魔力の放出は貴方の…ん?先頭?残りの方はどうなったのですか?」

『第二波は半分くらいをエリスが一人で片付けた。もう半分…と言うか残り全ての魔獣達は突然出て来た悪魔に消された。一瞬で、しかも血を一滴も流さずに』


説明をしているとフレディアナが急に話に入って来た。


「シロくんの言ってる事は本当だよ。その魔道具も反応してないし、私も見てたからね。悪魔が残った魔獣達を消し去った所を……まぁその悪魔はシロ君によって粉々に破壊されて消えたけど」

「そうですか……やはり、悪魔が今回の【スタンピード】に関わっていましたか。して、その会敵した悪魔に名前もしくは爵位などはありましたか?」

『……在った。恐らく名前もあると思うけど教えてはくれなかった。爵位は男爵だって言ってた』

「……成程、で、その男爵級悪魔は討伐出来たと受け取っても宜しいでしょうか?」

『いや、あの悪魔は恐らく生きてる』

「?悪魔を粉々に砕いたのでは?」


マルセは何を言っているのか分からないと言う様に首を傾げる。


「君は知らない見たいだから教えておいてあげるよ。男爵級より上の悪魔は全て身体を破壊されても精神体の方を破壊しない限り死ぬことは無いんだよ。今回の男爵級悪魔も身体の方を囮にして精神体の方は逃げ出したんだよ」


フレディアナの説明にマルセは納得した様に頷いた。


「そう言えば……数年前に一度、悪魔を討伐したパーティーが討伐したはずの悪魔と再び会敵したという報告が上がったことがありましたが……成程、納得がいきました。精神体だけが逃げ出し、時間をかけ再び身体を取り戻し自分を一度討伐したパーティーの前に姿を現したと」

「しかし、神獣であるシロさんの攻撃でも精神体を破壊できないとは……思った以上に厄介な存在の様ですね、男爵級以上の悪魔と言うのは」

『一度、最上位悪魔と戦闘になった事があったけど、そいつと比べたら大分弱かったどな』


ポロっと最上位悪魔の事を零すとマルセと一緒にフレディアナまで固まった。


「……シロ君?君、今なんて言った!?」

「最上位悪魔とか聞こえたのですが!?」

『ん?最上位悪魔より大分弱いって言っただけだけど?まぁ弱いのは当たり前だろうけど』

「シ……シロさん。貴方最上級悪魔と戦闘になったんですか!?良く生き延びれましたね!!」

『……まぁ、あの時は無我夢中だったし……でも、その最上級悪魔は復活することは無いと思うけど』

「ん!?どれはどう言う事かな??君が戦闘になったのって最上級悪魔だよね!?何で復活しないと思うの!?」

『戦った時は白い毛並みの時じゃなくて黒い毛並みの時だったし、その時の俺を見た最上級悪魔はピクッて少しだけ反応を示したからその状態で攻撃したら死体どころか灰すら残らなかった。悪魔の体……丁度心臓辺りに在った光が消えたのが見えた。まぁ、その時は最上位悪魔じゃなくて下級悪魔レッサーデーモンだと思ってたけど』


あれ……マルセとフレディアナが固まってる?突いてみるもまるで反のを示さない。……再起動するまで気長に待つか。


「ッハ!!私としたことがあまりの事に情報処理に時間が掛ってしまいました」

「……成程ね。ようやく受け入れる覚悟が出来たよ。結果から言うと君は最上位悪魔を退けたどころか消滅させてしまったと……にしても白い毛並みと黒い毛並みに炎と氷……ね。何故君の体がそんな事になってるのかは私でも理解できないよ。でも、そんな事を出来るのは間違いなく神だけだね。しかもその中でもかなりの力を持っている神に限られてくるね。まず下級神や中級神じゃ不可能だよ。出来るとしたら≪裁法神≫レベルの神ぐらいだね」

「言っておくけど≪裁法神≫は神の中でも最上位に位置する神の一柱ひとりだよ。もし戦いになんてなったら私程度なら瞬殺される自信があるよ」


……そんな自信があっても困るのだが??

まぁ、とんでもなくヤバイってのは分かった。


「うん。その顔、しっかり理解してくれたみたいだね。≪裁法神≫のヤバさ……基最上位神の力の強さを。その気になればこの世界を一息で終わらせれる力を持っている神もいるくらいだからね。敵対したら間違いなく消されるよ」


物騒過ぎるだろ!!なに?神の業界って結構殺伐としてるの!?


「シロ君。今物騒だって思ったでしょ?」


うっ……鋭いな、フレディアナ……。


「大丈夫。私もそう思ってるし、気まぐれな神も中に入るみたいだよ?」

「まぁ、その気まぐれの代表格の一人がさっき話に出て来た裁法神なんだけどね。今のところは大人しくしているみたいだけどその内君の元に来るかもね」


何それスッゴイ迷惑!!

って言うかまるであったことがあるみたいな言い方だな。


「……さて、また話が脱線しちゃった戻すよ?」

「はい」

「お願いします」

「で、シロ君がその悪魔を粉々にして、致命傷を負ったエリスをシロ君が治療したすぐ後に私が来たって訳。最初はエリスから聞こうとして言霊を使ったんだけど見事にシロ君に解除されちゃってね。流石に私も焦ったよ?今まで言霊を強制的に解除された経験なんてなかったからさ。それに、強制的に解除されたのになんともなかったって言うのが私は一番びっくりしたね。少なくとも強制的に解除した側に何かしらのダメージがあると思ったんだけど……」


フレディアナがじっと俺の方を見ながら話す。そんな見られても困るのだが……。


「まぁ、それは良いとして、問題はその後だよ。急にあのドラゴンが沸いて来たんだよ…しかもそんな予兆や魔力の流れは一切なかったのにだよ!?」

「……確かにそれは変ですね。いくら人為的に引き起こされた【スタンピード】と言ってもドラゴンが出てくる程となれば必ず何かしらの予兆が現れます。それが無かったという事は……」

「そのドラゴンが幻術、或いは使役されている可能性がありますね」

「いえ、幻術と言う事は無いと言い切れます。あの魔力は本物でした。しかし、ドラゴンにしては随分と攻撃が洗礼されていました。私は吹き飛ばされはしましたが、随分と加減されたような感覚がありました。訓練されたドラゴンでなければ不可能な芸当です!!」

「……そうですか。ドラゴンが手加減を…確かに不可解ですね」

「まぁ、そのドラゴンは君が知っての通り氷漬けになってるけどね」

「……氷漬け…ねぇ」


マルセが俺の方に視線を向ける。


「まぁ、その前に私が≪極大魔法≫を赤竜レッドドラゴンに直撃させたんだけどね」

「……あの異常なまでの魔力の収束は貴女でしたか」

「報告はこんなところだね。さて、それじゃあ私の冒険者登録の方をお願いするよ?」


マルセの方はまだ納得しきれていない様子だったがフレディアナが強引に終わらせた。


「……まだ聞いておきたいことが沢山ありますが、まぁ良いでしょう。で、フレディアナさん?本気で冒険者登録をするおつもりですか?」

「もちろんだよ。冒険者ギルドに登録しておけば何かと便利だし、上位のランクになれば一般人では入れないところにも入れるようになるからね。それに、君達ギルドの関係者からしてもメリットがあるんじゃないかな?」

「……確かにその通りです。世界序列二十位の貴女が冒険者になれば少なからず貴女の恩恵があります。ですが、万が一貴女が暴走した場合はどうするのです?」

「あぁ、それに関しては問題は無いよ?登録するときに私を契約で縛ればいいんだよ。例えば……緊急時以外≪極大魔法≫を使用しない。とかね」


フレディアナの提案にマルセとエリスは盛大にため息を吐いた。

「「はぁ……」」

「あのですねフレディアナさん?何故≪極大魔法≫なんてものを街中で使う事を想定しているのですか!?第一に、≪極大魔法≫なんてものをそうポンポン放たれていたら国は一瞬で灰になりますし、規模を考えてください!!」

「?いや、私だって≪極大魔法≫なんて燃費が悪くて広範囲なものは撃てても一日二回が限界だよ?私にだって魔力には限りがあるんだよ?それにこれは例えばの話。いくら私でも街中で理由も無しに魔法は使わないよ!!まぁ、私の知り合いにそんな事をやりかねない奴は居るけど……」


知り合いに居るのかよ!!怖いなお前の知り合い!!


「……はぁ、胃が痛いです。が分かりました。私が直接貴女の冒険者登録をしましょう。万が一となればシロさんが何とかしてくれるでしょうし?」


あ…総括面倒だからって俺に圧しつけやがった!!……解せぬ。


「さぁ、それでは受付のカウンターの方に行きましょう。あ、言っておきますが最初はGランクからです。特例は一切認めませんのでそのつもりで居てくださいね?あ、念のためにシロさんとエリスさんも同行してくださいね?」

「えぇ、それはもちろんです」


こうして、フレディアナの冒険者登録が始まったのだった。しかし、フレディアナの冒険者登録は一筋縄ではいかなかった。

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