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転生したら狼になってた  作者: 白黒
第二章
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第四十五話暗躍する者

俺とエリス、フレディアナが赤竜レッドドラゴンと戦っているその頃。

とある冒険者ギルドの一室、そこに四人の人影があった。

室内は薄暗く、ロウソクの火が一つ円卓の真ん中に置かれていた。相手の顔をはっきりと捉えることは出来ないが、四人は円卓を囲み話を始めた。


「さて、今回の【スタンピード】はどのくらいの被害が出るか、三人の予想を聞かせてくれるか?」


フードを深く被った男が三人に質問をした。


「さぁ?全く予想できませんね。ですが、これだけは言えます。この街が壊滅することは絶対にありません」


フードの男の質問に神官の恰好をした男性がいち早く答えた。


「成程、他二人はどうだ?」

「私は、壊滅とまではいきませんがこの街の半分は壊れるかと」


次に答えたのはシスター服を着た女が答えた。


「ほう、何故街の半分が壊れると思う?」

「そうですね。強いて言えばドラゴンならあのエルフと神獣様で何とかできると思いますが、≪絶望の魔女≫の相手はいくら神獣と言えど相当辛いはずです。しかも、≪絶望の魔女≫との戦闘中にドラゴンが来ればなおの事」

「確かに、だが神獣が死んでしまうのは不味い。もし仮に神獣が死んでしまうなんてことがあったら≪生命の木≫からどんな罰則を課せられるか分かったものではないぞ?!」

「それについては問題ありません」


今まで一言も発さなかった男が声を上げた。それと同時、不意にロウソクの火が揺れ顔をちらっとだが見えた。

その顔は、この街の冒険者ギルドの総括。マルセの顔だった。


「問題ない。とは?」


フードの男が問うがマルセは平然と答える。


「あの神獣は世界序列第三位です。≪絶望の魔女≫との順位には十以上の差があります。ですので、死ぬなんてことは万が一にもありませんよ。逆に≪絶望の魔女≫の方が心配になりますよ。仮に≪絶望の魔女≫がエルフの彼女……エリスさんに致命傷を与えてしまった場合どうなるか……。考えただけでも寒気がしますよ」

「そこまで強力か。して、その属性は?」

「あ、それ私も気になります」


フード男の質問にシスター服姿の女が同調した。


「教会関係者として、僕も聞いておきたいです。二匹の神獣様の属性はすでに公になっていますので」


さらに神官姿の男も気になっていた様だ。


「おや、三人とも気になるとは…まぁ予測していましたが「前置きは良いのでさっさと答えてください」……」


マルセの前置きなどどうでも良いとばかりにシスター服姿の女がマルセの言葉に被せた。


「……分かりました。属性は氷でした」

「氷ですか……あまりしっくりきませんね」

「そうですね。何というか……ハズレ感がありますね」


シスター服姿の女と神官姿の男が属性を聞いた途端に興味を失くしたようにぐったりとした。


「氷……下手をすれば他の神獣よりも厄介かもしれんぞ!!」


フード男は警戒を強めた。


「えぇ、その通りです。ただの氷であるならば何の脅威でもありません。しかしよく考えてください。神獣の生み出す氷ですよ?それがただの氷な訳がありません!!」

「それは、どう言う事でしょうか?所詮は氷でしょう?」

「その先入観は捨てた方が良いかと思います。つい先日の事ですが、私のギルドのとある冒険者のパーティーが神獣に絡んだのですが…まぁ、言わずもがな凍らされました」

「まぁ……自業自得ですよね」

「えぇ、そのパーティーだけなら良かったのですがね」

「……あの、私嫌な予感がしてきたんですが……」

「はい。その嫌な予感は正しいです。そのパーティー諸共一つのフロア丸ごと凍らされた挙句、私までも足を凍らされかけましたよ」

「一フロア丸ごと……ですか。良く抜け出せましたね」

「えぇ、エリスさんが咄嗟私に魔法をかけてくれたお陰で凍らずに済みましたよ。まぁその後教会に行かれてしまって戻って来て解除されるまで氷は少しも溶けませんでしたよ」

「……この街の冒険者ギルドの総括にそこまで言わせるとはやはり規格外ですね神獣様と言うのは」

「それもそうだが、氷が全く溶けなかったというのがやはり気になるな」


フード男ぽつりと呟くとマルセを含め他二人も黙ってしまった。

数秒の沈黙の後、マルセが思い出したように話し始めた。


「おっと、そう言えば忘れるとことでした」

「ん?どうしました?急に?」

「忘れかけていたと言う事はそう大したことではないのでしょう?そろそろ私は戻らせていただきます」

「あ、それでは僕も、教会を離れたままでは心配されてしまいますので」


シスター服姿の女と神官の姿をした男が椅子から立ち上がろうとしたが、それをマルセは止めた。


「待って下さい!!忘れかけていたのは私の失態ですが、教会関係者である貴方方にとってはかなり貴重な話だと思いますよ?創神教会の貴方方には特に」

「「どういう事でしょうか?」」


椅子から立ち上がりかけていたがマルセの言葉を耳にすると再び座り直した。


「簡単に説明しますと、その神獣……氷から武器を造り出したと言っていました。実際この目で確認しました。結論から言って、神器と言われたら信じてしまう程の出来栄えでした」

「「なんと!!その神獣様は神器クラスのモノを造れるというのですか?!」」

「えぇ、私も最初見たときは内心驚きました。炎や氷で造られた武器は折れたモノでも国宝級です。それがしっかりとした状態でありさらに鞘まで氷だったとは思いませんでした」

「その剣の刀身は……刀身は見たのですか?!」


シスター服姿の女が丸背に掴みかかる様な勢いで聞いた。


「っちょ…落ち着いてください。話しますから、そんなに興奮しないでください」

「コ、コホン。すみません。少し取り乱しました」


シスター姿の女は咳払いをすると、居住まいを正した。


「え~、肝心の刀身の部分ですが、見ることは出来ました」

「「「おぉ!!」」」


マルセの言葉に三人の感嘆の声を上げる。


「しかし、到底受け入れられないモノでした」

「と、言いますと?」


マルセの言葉に神官服姿の男が問う。


「その刀身からは……冷気が発せられていました。氷から作られているので本来であれば驚くことではありませんし当然のことです。しかし、問題はその量なのです」

「ん?量だと?どういうことだ?」


フードの男が何を言っているんだこいつは?という目でマルセを見る。


「本来、氷から発せられる冷気など微々たるもの。アルメ神聖国に保管されているあのは刃折れ剣ですら僅かに冷気が視認できるかどうかと聞きます。しかし件の刀身からはその倍以上の冷気を放っておりしっかりと視認できるほどの冷気と刀身を抜き放った瞬間に部屋の温度が二度ほど下がりました。これがどれ程の事か……貴方方なら理解できますでしょう?」


マルセの言葉に三人共黙り込んでいる。


「えぇ、理解できますよ。刀身を抜き放っただけで部屋の温度の二度も下げる異常性、視認できるほどの冷気。恐らくですが、その刀身からはかなりの勢いで冷気が放出されていたのでしょう?」

「だろうな。一瞬で部屋の温度を下げるほどの冷気。マルセ、お前の部屋は一瞬にして霞が掛ったのではないか?」


マルセは二人の質問に対しゆっくりと頷いた。


「えぇ、その通りですよ。何なら軽く霜が降りていたくらいですよ」

「まぁ、兎に角。僕達教会側はもう一度神獣様との接触を図ってみます。上手く行きそうなら創神教会の総本部にお連れしようかと思っています」


「残念ですが、おそらくそれは不可能です」


神官姿の男の言葉に直ぐさまマルセが反論した。

すると、今度はシスター服姿の女が一呼吸おいて質問した。


「……マルセさん?それはどう言う事なのでしょうか?」

「言葉通りの意味です。神獣であり、世界序列一桁の者ですよ?しかも【スタンピード】が仮に終息したとしても、精々私の所に報告しに来るだけで即この街から立ち去ると思います」

「ですから!!何故そんなことが言えるのですか!!」


シスター服姿の女は理解できないと言った顔をしながら声を上げた。

マルセはそんな声を気にも留めず居たって冷静に返した。


「あまり大きな声を出さないで頂けますか?簡単な事です。私や貴方方が完全に警戒されているんですよ。いえ、我々だけではありません。領主に至るまで。この街に滞在及び暮らしているすべての人間が件の神獣に裏ギルド、≪生命の木≫の関係者ではと警戒されてると言っているのです。恐らく……その警戒を促したのはエリスさんです。っと、名前だけ言っても貴方方には分かりませんね。七色の魔法剣士と言えばわかるでしょうか?」

「そ……そんな、警戒されるようなことなど我ら教会関係者は何一つありませんよ?」


マルセの答えにシスター姿の女は動揺を隠し切れない様だ。


「ただでさえ私は会った時にかなり気が立っている様でしたし、教会から戻ってきたときには更に酷くなっていました。まぁ、それは七色の魔法剣士にも言えますが」

「それに、件の神獣は既に契約した者が居る様子です。下手に刺激してこの街が壊滅とか…目も当てられませんよ!?」

「なんと!神獣と既に契約している者が居るという事か!」

「……先程も言いましたが、少し声を抑えてください。もし神獣に我々の声が聞こえたら……」


マルセのセリフは続かなかった。

突如として街の外から強力な魔力の放出感知したからだ。


「ッ!!この魔力は!!」


それはこの部屋に居た全員が感じた様でマルセ以外言葉も出せない様だ。


「この尋常じゃない魔力の収束は…まさか!!あの魔女、≪極大魔法≫を放つつもりですか!?」

「洒落にならんぞ!?各々自分の身は自分で守れ!!」


フードの男の声と同時にそれぞれ詠唱を始める。


「障壁!」

「「プロテクション!!」」


マルセ以外の三人が即座に詠唱を完了させ、防御魔法を発動させる。


「御三方、此処はギルドの中でもかなり重要な場所です。故に極大魔法の余波位であれば部屋が揺れることはありますが崩壊などは決して起こりませんよ?」


マルセは焦った様子もなく淡々と告げる。


「それはそうなのだろうが、儂を含め他二人は余りこの建物に施されている術式を信用しているわけでは無いのでな。まぁ、念のためと言う奴だ」

「いえ、構いませんよ。貴方方はそういう人達だと理解していますので……それで、貴方方は感知できましたか?」


マルセの質問に三人がゆっくりと頷く。


「あぁ、極大魔法が発動されたのと同時に背筋が凍り付きそうな程莫大な魔力がほんの一瞬だけだが放出された」

「と、言う事は…」

「…赤竜レッドドラゴンは少なくとも倒されたと見て良いでしょう」

「では、私は神獣の所に行きます。流石にそろそろ行かないと勘付かれてしまいますので…。それと、貴方方もご自身の仕事場に戻られて方が良いのでは?」


それだけ言うとマルセは部屋を後にした。


◇◇◇


「さて、急がないと不味そうですね。下手したらすでに気付かれている可能性も……」


マルセは部屋を出ると同時に自信に身体強化の魔法を施し、全速力でシロとエルスが居る街壁へと向かった。無事シロとエリスの元に辿り着いたマルセは目の前の光景に言葉を失った。

「ッ!!」


(こ、これは…一体どう言う?それに、何故≪絶望の魔女≫まで一緒に居るのです!?)


マルセが思考を巡らせていると不意に耳元で声が聞こえてきた。


≪何故≪絶望の魔女≫まで一緒に居るのか。随分と不思議がっているみたいだね?マルセ?≫


マルセは、自分の思考が読まれた事に内心動揺するが顔には出さない様に務めた。

そんな中また呑気な声が耳元に聞こえてきた。


≪あぁ、大丈夫だよ。神獣やあのエルフにはこの聞こえない様にしてあるから、心配はしなくて良いよ?≫

(心配しなくて良い?ハハ…これは、完全に私を脅しに来ていますね…裏を返せば、余計な事を言えば、もしくは考えようものなら有無を言わさずに私の隠し事をバラすと…参りましたね。これは…)

≪フフフ、正解だよ。流石は世界序列に入ってるだけのことはあるね≫

(はぁ、貴女に言われても皮肉を言われているようにしか感じませんよ。≪絶望の魔女≫、それで?神獣やエリスさんにまで内緒にすることとは何でしょうか?)

≪そうだね。用件だけ言うよ。君、裏ギルド≪生命の木≫の構成員の一人だよね?ついでに言うと君が先刻まで合っていた他の三人も≫

(……末恐ろしいですね。まぁ良いでしょう。何故私が裏ギルド≪生命の木≫の構成員だと思ったのです?)

≪……君、何故私が≪絶望の魔女≫だなんて呼ばれてるか知ってるよね?それに、私が元は何と呼ばれていたかも……言っておくけど私に隠し事は出来ないよ?≫


一瞬どう誤魔化そうかと考えたマルセだがフレディアナの隠し事は出来ないと言う言葉を聞いて直ぐさまその考えをやめた。


(ッ!!成程、貴女は私いえ、人間の思考を読めると言う訳ですか)

≪まぁ、そんなところだね。じゃ、くれぐれも変なことは考えたり口に出したりしないことだよ。おっと、そろそろ話しかけないと疑われるよ?≫


マルセはふぅ。とため息を吐くとシロ達の元へと一歩踏み出した。

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[気になる点] 信用しているわけでは何野でな ないのでなの間違いかと [一言] 楽しみにしてます
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