第三十一話エリスの序列順位
「この剣は・・・」
エリスがそう言ってそのまま黙ってしまった。
『エ、エリス?何か不味かった?』
そう聞くも全くの無反応。あれ?本当に大丈夫か?
・・・しばらくこのままにしておいた方が良いか?と考えてたら、突然エリスが俺の方に振り返った。
「シロさん。この剣、とんでもない代物ですよ?おそらく伝説級。いえ、もっと上な感じがします。一体どうしたらこんなヤバイ代物を作り出せるんですか?!」
『え?いや、そんなこと言われたって俺はその折れた剣をイメージして作っただけなんだけど?』
「では、この刀身と持ち手の部分をよく見てください!!」
エリスは興奮しながら剣を鞘から抜き刀身を見せてきた。
剣の大きさや刀身の細さは折れた剣と見比べてもそれほど差は無い。しかし、氷で作った剣の方は鞘から抜いた状態であるためか刀身から白い冷気を確認することが出来た。
『ん?剣には詳しくないから良く分からないけど刀身から冷気は漏れてるのは分かるけど・・・。氷から作られた剣なんだから冷気が出ても何もおかしくないんじゃないか?』
「いえ、本来であれば氷から作られた武器なんて神聖国に一本しかないって言われている物なんですよ?しかもその剣は刀身が半分ない状態だと言われているんですよ?」
『そんなこと言われたって作れちゃったんだからしょうがないんじゃない?』
「これでは人前では剣は抜けませんね」
はぁ、とため息を零しながらエリスはつぶやいた。
「取り合えず、この深緑の森の抜けましょう。続きはそれからです。幸いなことにこの森に居る序列入りの魔獣はシロさんが追い払ってくれたみたいですし」
『追い払った?俺が?』
「はい。間違いなくシロさんが追い払っていましたよ?まぁ、私は見ての通り吹き飛ばさて気絶してたわけですけどもね。だからこそ断言できます。私が交戦、シロさんが会敵した魔獣は間違いなくこの森、深緑の森の序列入りした魔獣です。それに、どうやら私は手を抜かれていた様でしたし」
「そのことから間違いなく私よりも序列順位は上であることがわかります。おそらくですが、あの魔獣は序列八十位代だと思います。私の世界序列は九十位ですので」
『え?エリスの序列順位って九十位だったの?』
「はい。あれ?言ってませんでしたっけ?」
『うん。聞いてない』
「!!それは失礼しました。では改めて自己紹介させて頂きます。私の名はエリス。種族は見た目通りのエルフで、適正は剣術と魔法の二つ。メインは剣の方で魔法はあくまでサブ程度で使っています。世界序列は先程も言いましたが九十位。ノール君を見つけるまでの間ですが、よろしくお願いします」
と改めて自己紹介された。
『これって俺もした方が良いか?』
「いえ、大丈夫です。私はある程度のことは知っていますので」
「では、一気にこの場所を抜けてしまいましょう。と言いたいところなんですが、どうも先程から視界が歪んで見えてしまっています。おそらく先の戦闘のダメージがまだ残っているようです。急いでいるのであれば、申し訳ありませんが私を背に乗せて運んでは貰えませんか?」
『・・・分かった。回復するまでの間ならおそらくこの森にある川辺りにまで行けると思う。あ、それとここを真っ直ぐ突っ切れば良いんだよな?』
「そうなんですが、それが出来れば苦労はしませんよ?真っ直ぐ突っ切れば良いと言っても途中には当然序列並の魔獣や魔物が居るんですよ?」
『ん?氷結無効が無ければ意味ないと思うんだけど?』
「・・・それはそうですけど、シロさん。くれぐれも私のいた町みたいなことにはならない様に加減してくださいね?」
とめっちゃ真顔で言われた。
『わかったから、さっさと乗ってくれ、じゃないと先に進めない』
「で、では、失礼します」
そう言うと、倒れるように乗ってきた。このことから相当疲弊していたのだとわかる。
「川の近くまでお願いします」
それだけ言うとエリスは寝息を立てて眠ってしまった。