第二十九話黒い影
「魔獣がこの場所に到達するまでまだかなりの時間があります。私は私で色々準備基この異常に濃い魔素をどうにかしますので、シロさんは血濡れ熊の方をどうにかして頂けますか?」
『やっては見るけど、言葉通じないし、っていうかこの血濡れ熊本当に大丈夫か?ここに来た時から物凄い静かだけど』
「血濡れ熊は大体こんな感じですよ。それに、かなり高い知能があるので、貴方が私と話しているように普通に話しかければ貴方に体を擦り寄せたリーダ格が説明してくれると思いますよ?」
『・・・わかった。やってみる』
「では、私は少し離れた場所で索敵とこの異常に濃い魔素の原因。ついでに対処法を探してきます」
「情報が何も無いよりはマシなはずですので」
『本当に一人で大丈夫なのか?」
「えぇ、これでも序列入りです。何かあればここに来るくらいは出来ますよ。では」
そう言うとエリスは奥に向かって走って行った。
『えっと、取り合えず何から逃げてたのか教えて欲しいんだけど?』
「GA!!」
『・・・』
ダメじゃん!!全く何言ってるかわかんないんだけど?マジでどうすんの?血濡れ熊って人語理解して返答するくらい知能高いんだよね?
「GA!」
『ん?あれ?何となく分かるような気がする』
「GA!!」
『・・・魔素が異常に濃くなった原因を見つけたから対処しようとしたら襲われたって感じなのか?』
「GA」
『えっと、それは肯定ってことでいいんだよな?』
そうだと言うように血濡れ熊は縦に首を振った。
『何に襲われた・・・!!』
襲われたんだ?と聞こうとたが突然何処かから放たれた殺気によって遮られてしまった。
突然のことで一瞬委縮してしまったがすぐさま殺気が放たれたであろう方向に視線を向けた。
しかし、視線を向け時には気配もなく匂いも無くなっていた。
今の殺気は?!いや、それ以前に一切の気配も匂いも無いんだ?普通だったら気配は消えても匂いはしばらくそこに残るはず・・・。同じ序列に入ってる者か?それとも、全く別の何かか?
それに、今の殺気のせいで血濡れ熊が全て気絶してる。口止めか、或いは警告か?ってことはエリスの方は不味いんじゃ?!いや、でもここを離れて万が一血濡れ熊が全滅させられたら何の意味も・・・。
考え込んでいると、ベキベキッ!!という音と共にエリスが目の前を通ってはるか後方まで吹き飛ばされていった。
目の前を通過した一瞬だけ見ることが出来たが、エリスの持っていた練習用の剣と細い剣が二本とも真っ二つに折れていた。
俺が呆気に取れていると、バキバキと木を薙ぎ倒しながら黒い大きな魔獣の影が姿を現した。