第二十七話血濡れ熊の脅威
俺とギルマスであるエリスは深緑の森と言う場所に足を踏み入れた。
「ック!!シロさん、申し訳ありませんが、少し休ませていただけますか?」
ギルマスがこう言ってきたのは深緑の森に入ってに十分程してからだった。
『どうしたんだ?何かあったのか?』
「えぇ、貴方は神獣様ですので平気だと思うのですが、どうもこの森の魔素が思っていた以上に濃く、少し気分が悪くなってきてしまいました」
『分かった。魔素とかは良く分からないが、気分が悪いのなら休んだ方が良い』
「えぇ、しかしここは新緑の森。ゆっくり休んでいる訳には行きませんね。五分程度頂ければ戦闘できる程度までには回復させますので」
『いや、その時間すらもくれそうにないな』
「?それはどういうことですか?」
『ついさっきだけど、数十匹の群れが動き出した。どういう意図かは分からないけど、ここを目指してるっぽい』
「・・・数十匹の群れですか。因みに、大きさはどれくらいですか?」
『大きさまでは分からないけど、敵意があるのは確定。はぁ、できれば相手したくないな』
最初ギルマス・・・エリスは数十匹の群れと聞いて少し驚いたような表情をしたけどすぐにいつも通りの冷静な顔つきに戻った。
「この感覚から行きますと、おそらく熊。血濡れ熊の群れですね。しかし、数が異常ですね」
『ん?どういうことだ?』
「実は、血濡れ熊は群れたとしてもせいぜい家族単位である五匹程度なんですが、一体どう言う事なんでしょうかね」
「いつもであれば全く問題はありません。しかし、今回のこの数と言い魔素量と言い、妙ですね」
『そうなのか?まぁ数が異常だというのは分かるけど』
「それだけでも分かって頂けて良かったです。感知した気配は今はどの辺りまで近づいていますか?」
『此処から約五百メートル先の木の影にいる。が、どうやら取り囲むみたいだな』
「そうですか。いつもの状態ならに十匹くらいなら相手に出来ますが、今の状態だと一気に相手に出来るのは十五体までが限界です」
『一気に十五体も相手位に出来るのならば十分すぎると思うが、俺は残りをなんとかしてみる』
「えぇ、頼りにさせて頂きますよ。おや、どうやら話している間に随分と接近してきましたね」
「血濡れ熊は比較的大人しい魔獣の部類に入りますが、一度脅威と判断されたら非常に面倒です」
「そして、血濡れ熊の武器は大きく分けて二つ、一つ目は強靭な爪その一振りで巨木をへし折ったという記録が残っています。二つ目の武器は突進攻撃です。Aランクの冒険者がその一撃で再起不能にさせられる程の威力があります。私でも、くらったらしばらくは動けなくなってしまいます」
やばいな・・・ギルマスですらくらったらしばらく動けなくなるって、出来る限り近づかせない方が良いな。
「正面に見えてきました。あれが血濡れ熊と呼ばれている魔獣です」
ギルマスが言った通り正面から血のように真っ赤な毛の色をしたツキノワグマほどの大きさのある熊が見え始めた。