第二十六話 深緑の森へ
「さぁ、出発しますよ?」
『あぁ、で、森の中を抜けるんだよな?』
「えぇ、その方が早く着きますし、魔物を倒せば素材もゲットできますし、次の街、ラーズの冒険者ギルドで倒した魔物を売ることも出来ます」
『成程、それはいいかも。それと確認だけど、森の中なら狼サイズになっても問題ないだろ?』
「えぇ、それは構いません。見られたとしても私が何とか説得しますので」
「あ、でももしかしたらラーズに入る前に呼び止められる可能性はありますね」
『え?』
「その白い毛並みはこの国だけでなく世界的に見ても神聖な色とされています。もちろん黒い色もほとんど同じです」
「まぁ、黒い動物なんてそんなにいませんから大丈夫ですよ」
「あ、でも悪魔は殆どが黒ですね。まぁ、悪魔の識別は簡単にできますので問題ありません」
え?何それ初耳なんだけど?黒い動物がそんなにいないって、マジかよ。
・・・なるべくあの黒い状態になるのは避けた方が良いかも・・・。
「さて、ラーズへと続く森、深緑の森の入口まで着きましたよ」
おっと、どうやら話をしているうちに森の入口まで来ていたみたいだ。
「此処からは一切気は抜けませんよ? 下手をすれば大怪我です」
『は?そんなの聞いてないんだけど?』
「えぇ、今はじめて言いましたからね。この森の魔物や魔獣はかなり凶暴でして、格上の相手だろうと突っ込んできます。おそらく私に攻撃が集中するでしょうがね」
『マジか!!ギルマス・・・エリスさんも世界序列に入ってるんだろ?』
「えぇ、しかし私は下位の方です。この森には一体だけですが、世界序列に入っている魔獣が住んでいます。他にも世界序列には入っていませんが、世界序列並の強さがある魔獣や魔物も生息しています」
「シロさんは世界序列第三位ですから狙われることは滅多にないとは思いますが、警戒は怠らない方が良いですね」
「幸い、世界序列に入っている魔獣は話が通じるのでこの森から序列並の魔獣達を出さないようにしてくれています。だから街などをこの森の近くに造ることができたんです」
『そ、そうだったのか』
「あ、それと私のことはエリスと呼び捨てで構いませんよ?シロさん」
『あぁ、分かった。じゃぁ俺の事も普通にシロって呼んでくれ。さんはいらない』
「いえ、そういう訳には行きません!!貴方様は神獣、しかも世界序列第三位。とてもじゃありませんが呼び捨てなんてできません!!本当は様を付けるべきなんですが、流石にそれだと街に入って万が一人前で話してしまった時に様なんて付けていたら、間違いなく目立ちますし、下手したらそこの領主の耳にまで入るかもしれませんので。貴方様は出来れば目立ちたくないとお考えではありませんか?」
マジか!!なんで俺が思ってたことが分かったんだ?もしかしてギルマスって・・・心が読めるのか?
『す、凄いな。よく俺が考えていたことが分かったな』
「えぇ、前回私と戦った時に物凄く嫌そうな気配がしたのでもしやと思いまして」
『凄い観察力だな』
「いえいえ、シロさんにはかなわないですよ」
『ん?俺は匂いで何とかなってるだけだぞ?』
「あ、やっぱりそうですよね。前私と戦った時、私が攻撃をする前にもう氷の壁が出来かけていたので不思議に思っていたんですよ」
『全然そんな風には見えなかったけど?』
「えぇ、全力で顔に出ないように気を配っていましたので」
「さて、話はこれくらいにして森の中に入りましょうか。先程も言いましたが、油断は命取りだと思ってください。倒すのならば確実に止めをさしてください」
『あぁ、分かった』
「それと私の装備は剣一本です。予備も一応持ってはいますが、どうなるかはわかりません。万が一の場合は助けていただけると有難いです」
『そうならないことを祈りたいな』
「えぇ、本当に、そうですね」
こうして俺はギルマスであるエリスと一緒に森に足を踏み入れた。