第二十五話仮契約と次の街に向けて
「とその前に色々と準備しないといけませんね」
「ちょっとギルドまで取りに行ってくるのでその間に解除しておいてください」
そういうとギルマスはギルドまで走って行ってしまった。
『まぁ、そうだよな。何も持たずに王都まで行くわけじゃないよな。・・・なんか安心した』
『よし、さっさと解除しちゃうか。・・・あれ?どうやって解除すれば良いんだ?』
う~ん、まぁ、氷が溶けるようなイメージで良いか?
左足を上げ、一気にその場に降り下ろすと凍りにバキッという何かが折れたような音と共に青色の魔法陣が足元に展開し、すぐに粉々に砕け散った。
感覚だけど、多分これで解除されたはず、早くて三十分、遅くても今日中には全員動けるようになているはずだ。
さて、ギルマスが戻ってくるまでにまだ少し時間があるどうするかな。
此処から王都までに生き方は分からないし、そもそもノールさえ見つかれば王都まで行く昼用は無くなるわけだし、本当に、どこに行ったんだ?ノールは・・・。
そんなことを考えているとギルマスが戻ってきた。
「お待たせしました。さぁ、私の準備は整いました。神獣様は大丈夫ですか?」
『ん?あぁ、大丈夫だ。いつでも出発できる。途中でノールを見つけて確保出来たら俺は王都までは行かないからな?』
「えぇ、分かっています」
「それに、あのフォレストウルフが見張っていると言う妙な気配と言うのも気になりますしね」
「いきなりで申し訳ありませんが、私と契約しては頂けませんか?」
『ん?なんで契約する必要があるんだ?それに、二重契約とかって出来るのか?』
「それは分かりません。何しろ初めての試みなので」
『うーん、仮契約なら可能だとは思うけど、やってみるか?』
「えぇ!!是非!!」
うお!!ギルマスが急に顔を近づけてきた。
『言っては見たけど、仮契約の仕方が分からない』
「あぁ、それならば私が知っていますので大丈夫ですよ。これでも世界序列には入っていますので、仮契約くらいは可能です」
あ、そうなのか。まぁ、仮契約なら、大丈夫かな?すぐに解除できそうだし、ノールを見つける間だけなら、仮契約、してみても良いかも。やり方は知らないけど。
「仮契約の仕方は至って簡単です。仮契約したい方がその者の名前を呼ぶ。ただそれだけです」
わ~お。滅茶苦茶簡単だった。っていうか本当にそんな簡単なのか?めっちゃ不安なんだけど?
「では、私の名前を呼んでください。あ、先に言っておきますが、真剣にやらないとどうなっても知りませんからね?」
……ギルマス、それはもっと早く言ってほしかった。なんで直前で言うんだよ!!
「…やはり、私が神獣様の名前を呼びましょうか?」
『あぁ、そしてくれると助かる。前にも話したと思うけど、ノールと契約できたのは本当に偶然だったし』
「えぇ、この前軽く説明して頂いたので大丈夫です」
「では、呼ばせていただきます。貴方は神獣様ですので、名前の他に種族名と識別名を呼ばせていただきますね」
「神獣種、神狼。シロさん、私と仮契約を結んで頂けますか?」
『あぁ、構わない』
俺が了承すると俺の体が薄っすらと発光し、金色の魔法陣が足元に展開された。
『ん?なんだこれ?』
「あ、そのままじっとしていたください。数分すれば魔法陣は勝手に消滅しますので、魔法陣が消えたら動いて大丈夫です」
『分かった』
ギルマスが言った通り、数分したら魔法陣が勝手に消えた。
『そういえばギルマス、王都まではどのくらいかかるんだ?』
「あの、一応仮とは言え、契約したのですから名前で呼んでいただけますか? そうでないとあまりにも不自然です」
『あ、うん。わかった』
「・・・さて、王都までどのくらいかかるか。でしたね?」
『あぁ』
「そうですね。馬車で五日、徒歩だと一週間以上かかります」
『マジか?!そんなにかかるのか』
「えぇ、大体それくらいの日数はかかります。王都までどれだけ離れていると思ってるんですか?」
「さぁ、分かったら行きますよ。当然途中で他の街や領地にも寄ります。もしかしたら居るかもしれませんし」
『・・・それもそうか』
「しかし、今から出発しても野営は確定です。次の街まで最低でも二十キロは離れていますので」
『野営かぁ・・・』
「心配しなくても大丈夫です。と言いたいところですが、面倒な事に最近街道にも魔物や魔獣の出没が報告されておりまして・・・」
『まぁ、それは何とかなるとして、次の街の名前はなんていうところなんだ?』
「ラーズと言う名前です。この王国で四番目に大きな街です。しかし、大きな街と言うだけあって警備が厳重ですので、確実に貴方と私は止められてしまいます。下手すると入れないかも・・・」
え?それって不味くない?入れないこもって・・・。でも、行くしかないな。もしかしたらノールがそこに居るかもしれないわけだし。
『入れなかったらギルマス権限で何とかなるだろ?』
「・・・一応は可能ですが、監視は間違いなく着けられますよ?それでもいいのですか?」
監視・・・それは困る。自由に街を出歩けないじゃん。
「あ、言っておきますが、私が居ないと街に出ることも出来ませんので。覚えておいてくださいね?」
と満面の笑みで告げられた。