第二十一話 フォレストウルフの討伐と空間魔法
「グルル」
絶賛フォレストウルフの長らしき狼に睨まれてます。
あれ?おかしいぞ?俺特に何もやってないんだけど?
あぁ、あれか?弱そうだから先に仕留めようっていうあれか?
よし、ならその考えに乗ってやろう。先に仕掛けてきたのはそっちなんだから文句はないはず。
で、肝心のノールはと言うと・・・。
「お~凄い!この弓物凄く使いやすい!!」
「今まで同時に二本までしか打てなかったのに今は同時に五本まで一緒に打てる!!」
ノールは次々とフォレストウルフの急所を狙っては命中させていく。
「これで残りはシロとにらみ合ってるでっかいのだけ」
「でも、シロだけで大丈夫みたいだし、ボクは後ろから見させて貰うよ」
という声が聞こえた。
え?いくら何でも早すぎない?俺がこのフォレストウルフを観察してる間に十匹倒しちゃったと?
しかも今まで二本同時って、一本放つだけでもかなり力使うのに、さらに五本同時って、どんな筋力してるんだ?
それにしても、このフォレストウルフの群れの長は全く喋らないな。あの群れの長が特殊だったのか?
と他のことを考えているとまたあの機械音声基、天の声が聞こえてきた。
≪スキル、並列思考、並列処理を獲得しました。≫
おぉう、またスキルが勝手に増えた。
「グルル・・・」
で、この狼は何時まで威嚇してくるんだ?
そろそろ諦めてほしいんだけど・・・。
まぁ、凍らせて持って帰ればいいか。
そう考え、目の前のフォレストウルフを凍らせる為、右前足を上げ、下した。
すると、パキパキッという音を立てて目の前のフォレストウルフの足が徐々に氷へと変わり、あっと言う間に凍り付いた。
あ、でもどうやって運べばいいんだ?ノールを乗せるとなると氷漬けにしても運べないから意味ないじゃん・・・。
どうするか。
悩んでいると
「空間収納とかって言うスキル?か魔法は無いの?」
『いや、そんなこと俺に聞かれても困るんだけど』
≪スキル、空間収納及び、空間魔法を獲得しました。≫
ん?今の、俺に向けた言葉じゃないな、と言う事は・・・。
そう思いノールの方を見ると
「え?何?今の頭の中に聞こえた声は?」
訳が分からないと言った顔をして俺の方を見てきた。
「ねぇ、シロ、今の声って何なの?ボクにしか聞こえないの?」
『いや、俺にも聞こえた。多分、今の言葉からすると、空間魔法とスキルの空間収納を使えるようになったみたいだぞ?』
「え?誰が?」
『ノールが』
「えっと、なんでボク?」
『それは俺に言われたって返答に困るんだが?』
「あ、うん、そうだよね。まぁ、兎に角ギルマスに報告した方が良いよね?」
『そうだな、ついでに空間収納にフォレストウルフを仕舞ってくれないか?』
『元の大きさに戻れば、町まで十分くらいで着けるはずだ』
「ちょっと待って、どうやって仕舞うの?ボク、スキルのとか魔法とか使った事ないよ?」
『え?そうなのか?』
「そうだよ。ボクは今までずっと弓を使った狩りくらいしかやったことなかったんだよ?」
『う~ん、箱にしまうようなイメージでやってみればいいんじゃないか?』
「・・・分かった。やってみる」
すると、十匹のフォレストウルフの死骸と氷漬けになった一匹が目の前から消えた。
「あ、本当に出来た!」
『よし、ならさっさと報告に戻った方が良いな』
「うん、この森のことも報告した方が良いよね?」
『もちろん、さぁ、早く乗れ。あ、途中で落としたらごめん』
「え?今なんて?!」
ノールが背中に乗ったのを感じ、元の大きさに戻り、一気に加速し町に向かっていった。
あ、なんかさっきよりも速く走れてる気がする。この速度を維持し続ければ十五分くらいには町に着けるかもな。
~十分後~
お、もう町が見えてきた。そろそろスピード落とした方が良いのか?それとも。
まぁ今は報告の方が優先だろ?よし、門番には悪いけど強引に通らせてもらうか。
あれ?ノールが静かなんだけど、何かあったのか?まぁ、ギルドの手前で確認すればいいか。
そうして、俺はギルドの手前で止まりノールに声を掛けた。
「うっぷ、き、気持ち悪い」
うぇ?!ちょ、ちょっと待って!!
「シロが、悪いんだからね?ボクがあんなに止まってって言ったのに全然止まってくれなかったんだから!!」
え?そうなのか?全然聞こえなかった。何かブツブツ言ってるのは分かってたけど。
「そう言えば、なんで門をスルーしたの?」
『あぁ、急ぎだったからスルーしても大丈夫かと思った』
「・・・・・」
あれ?ノールが無言なんですけど?めっちゃ背中ペチペチ叩かれるんだけど、まぁ確かに門を強引に突破したのは悪いとは思ってるけどさ?一応緊急で報告して方がいい案件だし?
「シロ、取り合えず後でギルマスにでも一人で怒られてね?ボクは悪いけど先に宿に帰らせてもらうよ」
「あ、ついでに報告もしておいてね?キミがあんなスピード出さなければボクは気分なんて悪くならなかったんだからさ」
『わ、分かった』
『それじゃぁ、カードだけ俺に渡してくれ、じゃないと多分建物の中にも入れないだろうから』
そういうと、ノールは俺の口にカードを押し込んできた。
っちょ、鬼か?ノールは鬼の子か何かか?
「それじゃ、報告よろしく」
そういうとノールは宿のある方向に向かって歩いて行ってしまった。
そして俺はギルドの扉を体で押して入ると、一気に俺に冒険者全員の視線が向けられたが気にせずに受付まで歩いて行き、机の上にノールの冒険者カードを置いた。
「え?」
受付嬢は困惑した表情を浮かべながらもなんとか声を出した。
「!!ギルマスを呼んできますのでそこで少しお待ちください」
「冒険者の皆様、そこの獣には一切手を出さないでください!!」
そう受付嬢は念を押し、ギルマスを呼びに行った。