第二十話 神獣についてと加護
そんな音声が聞こえたすぐ後に別の声が聞こえてきた。
「驚かせてしまい申し訳ない。我等には敵対の意思はない。何分物凄い神聖な気配がした故、我が群れ一同で押し掛けさせて貰った次第だ。許してくれ」
ん?誰の声だ?と辺りを見渡すと、目の前のフォレストウルフが驚いたような顔をしていた。
「済まぬが、貴方様は我の声が聞こえているのか?」
するとまた機械的な音声が聞こえてきた。
≪スキル、念話を獲得しました。契約者であるノールも同様、スキル、念話を獲得しました≫
『最初に聞きたいことがある、お前はこの群れのボスか?』
「あぁ、そういう認識で構わぬ」
『成程、それじゃぁ、神聖な気配を感じて俺とノールの元に押し掛けたのは分かったけど、森の入口付近で感じた妙な気配もお前の群れの気配か?』
そう問いかけると、フォレストウルフのボスは耳をペタっと寝かせ、顔を横に振った。
「いや、我が貴方様の神聖な気配を感じたのはそこの人間を見張り役の仲間が見つけてからだが?」
「それと、さっきから気になっていたのだが、何故神獣様である貴方様と同じ気配がそこの人間からもするのは何故だ?」
『ん?そうなのか?』
「あぁ、これでもこの森の秩序を維持すると言う役割を持っているのが我だ、気配にはかなり敏感でな。間違いなくそこの人間から漂っている気配は貴方様の神聖な気配と同じもの、一体何故そんなことが起こっているのか我に説明してはくれないか?」
『あぁ、俺は構わないが、ノールは「ボクだって構わないよ」っと、どうやら良いらしい、まぁ、簡単なことだぞ?』
「貴方様からしたら簡単な事でも我等からしたら未知なことでな、どうしても警戒を強めてしまう。悪く思わんでくれ」
『俺とノールは契約をしてる。契約って言っても主従契約のような上下関係があるわけじゃないけど』
「なんと、主従契約以外の契約方法があるのか?」
フォレストウルフのボスが目を見開いて俺を見てきた。
『俺も良くは分かってないけど、可能だとは思う。実際に出来てるわけだし』
「ふむ、確かにその通りではあるが、まぁ今は良いとしよう。神聖な気配と言っても我が感じたのは本当に微弱であった、すまぬが貴方様の種族を教えてはくれぬか?」
『・・・まぁ、良いか。神獣って鑑定結果には出たけど、いまいち良く分かってないのが事実だ』
「成程、良く分かった。では、神獣について我が説明しよう」
「そこの人間もそれで構わぬな?」
「うん、それでいいよ。ボクも神獣様がどういったのか良く知らないから」
「う、うむ、良くそれで契約出来たな」
フォレストウルフのボスが若干戸惑いながら言った。
「まぁ気を取り直しいて説明させてもらうぞ?まず神獣と言うのは簡単に言ってしまえば神の使徒だ。他の場所では神の代行者と言ったり、神そのものとして崇める処もある程だ。それに神獣は必ずと言って良い程に世界序列に入っている。序列の説明はした方が良いか?」
『いや、ここに来る前に説明して貰ったからそれは大丈夫だ」
「そうか、では世界序列については省かせてもらう。大体神獣は世界序列十位圏内に入っているのは確実だ。おそらく、貴方様も十位圏内に入っているはずだ」
「うん、入ってたね第三位だったっけ?」
「ほぉ、第三位とは、これで序列二位から四位までが全て神獣と言うことだな。いや~、これは史上初の事ではないか?」
「と言う事は加護や称号も相当のモノなはず、一つだけで構わぬ、我に教えてはくれぬか?なに、心配する必要はない、ただの好奇心だ」
『・・・言って良いのかよくわからないけど、悪意は感じないから良いか。えっと、確か、獣神の加護があったはず」
「ほぉ、どうやら我の予測は当たっていたな。獣神様加護を持っていたか」
「では、称号の方はどうだ?わからぬモノがあれば我が知っているモノがあるかもしれぬ」
「えっと、じゃぁ、歩く天然記念物って称号は何なんだ?』
「ん?」
『え?』
しばらく、俺とフォレストウルフのボスとの間に沈黙が流れた。
「すまぬ、今なんと?」
『え?いや、だから歩く天然記念物っていう称号があるんだけど?』
「す、すまぬ、我も聞いたことの無い称号故、しばらく反応できなんだ」
『あ、うん、俺も良く分からないし、結構反応に困ってる』
「ふむ・・・おそらくだが、貴方様の固有能力に由来した称号ではないか?」
「悪いがそれ以外に思いつかぬ」
・・・・・あ、もしかしてあれか?あれなのか?
『あ、何となくわかったわ』
「そ、そうか、なんだ、その、気を落とすでないぞ?」
そう言いながらもなんとも言えないといった顔を俺に向けてくる。
「それと、これは我の個人的な願いなのだが、我に貴方様の加護を貰えぬか?」
は?何言ってんの?
「実はな、貴方様もこの森の入口で感じた通り、この森の何処かに不穏な気配が発生しているのだがまだその場所は突き止められてはおらぬ、故に、我が貴方様の加護を貰えればいち早く貴方様に教えることが出来るのだが、どうだろうか?」
『あ、うん、それはいいんだけど、どうやって加護を渡すのか全く分からないんだけど?』
「それは我が知っているので大丈夫だ。なに、簡単な事、我の額と貴方様の額を合わせて貴方様が同意すれば加護は与えられる」
『そ、そんな簡単に?』
「あぁ、すまんが、我はこれ以外の方法は知らぬ」
あ、そうなんだ。まぁ、加護なら問題ないよな。うん、問題ないって事にしとこ。
『あ、もし、こっちが不利になるような事をしでかしたりしたらその時はどうなるんだ?』
「それに関しては問題ない。そうなった場合は即刻、加護は消滅し破った者の身体に耐えがたい激痛が走り、良くて気絶で済むらしい」
おぉ、怖っ、何?良くて激痛って?え、もしかして最悪の場合死んだりとか?は流石にないか。
「いや、あるぞ?我は見たことはないがな」
は?今とんでもない事をさらっと言ったぞ?この群れのボス。
「まぁ、よっぽどおかしなことをしない限り死ぬことはないだろ」
「それでは、頼むぞ」
『あぁ、分かった」
俺の額とボスの額が重なりまた、あの機械音声が聞こえてきた。
≪確認しました。この森に生息するフォレストウルフの長に神狼、フェンリルの加護が与えられました。≫
「おぉ!何と、神の声か!まさか我自身が聞くことになるとは!!」
ボスの尻尾がこれでもかってくらいにブンブン揺れまくってるが、気にしないでおこう。
「なんか良く分からないけど、フォレストウルフの討伐はどうするの?」
あ、忘れてた。
「ふむ、そうだな。おそらくだが、あの町の人間は我等のことなど気にも留めておらぬはず、我らの討伐など、この森の調査をさせる為の口実に過ぎぬはずだ」
「う~ん、でもそれだと一応失敗扱いになるかもしれないし」
「ふむ、ではこの森の反対側に我の群れとは違うフォレストウルフの群れが丁度来ていたはずだ。奴等を討伐すれば問題無かろう?」
『別に討伐数は言われてない訳だし、一匹で十分だろ?』
「わかった。それじゃぁ行くよ、シロ」
『あぁ』
そうして、俺とノールは反対側に来ていると言っていたフォレストウルフの群れのところまで行くことになった。