第十八話 ギルマスからの依頼
俺とノールはまたギルマスの部屋に来ている。
何でかって? あんな満面の笑みでしかも黒いオーラみたいなものが背後から出てるのにどうやって逆らえと?
まだ全身の毛が逆立ったままなんだけど、どうしよう。
「えっと、では、まず最初にお聞きしたいことは序列の順位についてです。あ、心配なさらずとも大丈夫ですよ。前回同様、防音魔法を発動しているので、声は外には絶対に漏れませんから」
うん、それは良いんだけど、そろそろその真っ黒オーラ?を引っ込めて貰いたいんだけど・・・。
なんかノールもさっきからずーっと無言で小刻みに震えてるし。
『えっと、ギルマス?』
「はい、何でしょうか?」
『無意識なんだろうけど、そろそろ威圧?の様なモノを解いて貰いたいんだけど?』
「も、申し訳ありません。知らず知らずの内に威圧を放っていたようです」
ギルマスはハッとしたような顔をして、威圧を引っ込めていった。
「さて、話は戻りますが、神獣様の序列順位を教えていただけますか?」
『あ、あぁ、でも、実際に見て貰った方が良いんじゃないか?』
「あ、うん。そうだね。教会で鑑定結果が書いてある紙を貰ったし」
「そうでしたか。では、その紙を見せていただけますか?」
「うん、いいよ」
ノールが返事をしながらギルマスに鑑定結果の書かれた紙を手渡した。
ギルマスが、紙を受け取り、そしてノールや教会のおじさん同様、フリーズした。
が、流石はギルマス、数秒フリーズしただけで再び動き出した。
「えっと、神獣様、これ、マジですか?」
『うん、マジだよ』
するとギルマスは盛大にため息をついた。
「私の想定のはるか上の順位ですかそうですか」
ヤ、ヤバイ、ギルマスの目が死んだ魚のような目になってる・・・。
「はぁ~、これ、下手に報告出来ないじゃないですか・・・。どうしましょう」
ギルマスが疲れ切った顔を俺に向けてくる。
おい、俺にそんな顔を向けるんじゃない!!ただでさえ、ギルマスのあの笑顔で毛が逆立ってるのにこれ以上俺にどうしろと?!
『教会のおじさんも結構驚いてたみたいだけど・・・序列第三位だと何か問題でもあるのか?』
あ、ギルマスがまた固まった。
「あの、神獣様、それ本気で言ってます?」
ギルマスが、無言で俺の目を見てくる。
「はぁ、その目は本当に何も知らない様ですね」
「序列十位から五位までの力がこの世界半分を破壊させることが出来る程の力を持っていると言われているのです。無論、序列入りしている者達は全て一人で大国を相手にすることが出来るほどの力を持っている様ですが」
「そして、序列第四位以上の力は完全に未知数なのです」
「私が今確認した序列第二位から第四位までの人物を口頭だけですが言っておきます」
「まぁ、貴方も含めて、二位から四位は神獣ですがね」
「序列第二位は、龍神第三位は貴方である神狼、そして第四位は神虎です」
『ん? 第一位はどんなのなんだ?』
「えぇ、それを今説明しようとしていたのですが、先に言われてしまいましたね」
ギルマスはふぅ、とため息をついてから
「実はですね。第一位なのですが、まだ発見されていないのです」
「え?発見されてないってどういうこと?」
今まで黙っていたノールが急に会話に入ってきた。
「・・・第一位は現在も空席なのです。理由は私にはわかりませんが、どうやらずっと空席のままの様なのです」
『つまり、全くの謎、と言う事だな?』
「えぇ、残念ながらそう言う事です」
「さて、序列の話はここまでにして、本題に入らせていただきます」
「端的に申し上げます。私からの依頼を受けていただけませんか?」
「本来でしたら、Cランク以上の冒険者に依頼しているのですが、現在このギルドにはCランク以上の冒険者は全員他の依頼を受けてしまって誰もいないのです。ですから、どうか貴方達に受けて頂きたいのです」
「えっと、どんな依頼か聞いても?」
「えぇ、それはもちろん私がしっかりと説明致します」
「依頼は、この町の近くにある森に生息している。フォレストウルフの討伐と、森の調査です。本来であればCランク以上の冒険者に依頼しているのですが、先ほども言った通り、Cランク以上の冒険者が今いないのです。なので、今一番ランクの高いノール君と神獣様にお願いをしているのです」
「・・・ボクは、受けてもいいよ?」
「神獣様は如何ですか?」
『俺も別にいいけど、俺は殆ど手はださないけど良いか?』
「・・・それは、何故でしょうか?」
『ん?俺が勝手に作った氷の弓矢の威力を知りたいからっていうのと、ノールがそれをしっかり扱えるかっていうのを見たいっていうとこだな』
「わかりました。それでは、よろしくお願い致します」
「それでは、この紙を受付に持って行って下さい。くれぐれも、油断はなさらないでください」
そう言うとギルマスは俺とノールに頭を下げてきた。