第八話面倒事
出口に向かって歩いていると、急にがたいの良い男がノールと俺の前に立ち塞がった。
うわぁ、面倒事の予感…。
「何の用?」
ノールが立ち塞がった男に問いかける。
「あの数のホーンラビットを本当にお前一人で仕留めたのか?」
あぁ…当たってしまった……。
「そうだよ?おじさんだって見たでしょ?」
「ボクが持ってきたホーンラビットには歯型やひっかき傷はなかったでしょ?」
ノールが説明すると男は何故か俺の方を見てくる。
「この犬が魔法で仕留めたんじゃないのか?」
「どう見たって、あの数はお前だけじゃ無理だ」
「嘘じゃないよ!!ボク一人で仕留めたんだよ!」
「その時シロは丁度、魔法で矢を作ってたんだから」
「もし、その話が本当ならその矢を此処で見せてみろよ」
めっちゃ絡んでくるなぁ……。
「不正したってことで、その金は俺が貰う」
「ボクは不正なんていしてない!!」
こいつ、かなり面倒臭いタイプだな。
しかも流れ的に勝負しろとか言ってきそうだな……。
「だったら俺と勝負して勝てたら、俺が土下座してさらに金貨一枚くれてやるよ!」
はい。面倒事確定しました。
「だが私闘はここじゃ禁止だ。だからパーティー戦でやらせて貰うぜ?」
「お前はその犬と……だろ?」
「まぁ、こっちは五人だけどなww」
「どうだ?受けるか?」
男がこれでもかってくらい煽ってくる。
……はぁ、メンドクサイ。
「いいよ、受けるよ」
「よし、決まりだ!闘技場に行くぞ!」
勘弁してくれ……。どう思いながらも渋々闘技場までついて行く。
っていうか、勝敗は誰が決めるんだ?
そんなことを考えながら闘技場に入るとギルドの受付が十人ほどが観戦席に居た。
あ、受付の人達が見届け人なのな。
で?肝心の絡んできたパーティーの編成が、女の魔法使い二人、男の弓使いが一人、フードを被った治癒師?みたいのが一人、リーダーの剣士という五人組。
「ルールの確認を致します。相手を殺す攻撃は厳禁、万が一殺害した者は登録の剥脱の上、奴隷落ちです!」
「さらに、その殺害を隠蔽。もしくは殺害した者の逃走を手助けした者も同罪と言う事をお忘れなく!!」
「それでは、冒険者パーティー暁の光と新人ノールと契約獣の決闘を開始致します!!」
「なお、勝敗の判断はパーティー全員の戦闘不能、もしくは降参のみとなります。先程も言いましたが相手を死に至らしめ雨様な攻撃は厳禁です!!」
「最後になりますが、暁の光が負けた場合は金貨一枚をノールに、勝った場合は小銀貨五枚と銅貨八枚ということで双方異論はありませんね?」
「「ない(よ)!!」」
「それでは、決闘……開始!!」
開始の合図と同時に、暁の光の魔法使い二人が詠唱を開始し、弓使いが俺に狙いを定める。
絡んできたリーダは、後方で待機している。
あの男は後方待機、まずはあのアーチャーからか?
「シロ、氷の壁は作れる?」
おれ?声出すのって不味いんじゃ?……、まぁ小声なら大丈夫か。
『やったことは無いが……やるだけやってみる』
『あぁ、それとおそらく俺を最初に潰そうとしてる』
「わかたよ、氷の壁を作ったらシロはそのままで大丈夫、ボクだけで魔法使いと弓使いは何とかできるから」
「あ、でも、攻撃の対処はお願いね?」
まぁ、妥当・・・な方なのか?
「まずは、弓使いからだよ。両手両足を封じさせて貰うよ」
えぇっと、氷の壁か。
取り合えずやってみるか。
あの炎の時と同じ感じでいいのか?
そう思いつつ少し魔力を練り左足に集中させ、軽く上げ地面に勢い良く振り下した。
すると、丁度ノールの胸のあたりまで凍りの壁が形成された。
「はぁ?!なんだよ、それ!!グアッ!!」
弓使いの男が驚いている間にノールが四本同時に矢を放ち言ったとおりに四肢に命中させた。
「ッ!?何が…起きたんだ?」
弓使いの男は痛みに耐えながらそう言葉を零した。
「≪ファイアーボール≫」
「≪サンダーボール≫」
そんな声と共に俺に向かって野球ボールほどの大きさの炎の玉と雷の玉が杖から放たれ俺に向かって飛んできていた。
えぇっと……炎は多分凍らせれるとして、雷って凍るのか?
考えてても仕方ない、やってみるか。
さっきと同じ様に魔力を練り左足に集中させ軽く上げた。しかし先程とは違い。少しだけ魔力を多く練り魔力を左足に纏わせた。左足から僅かにだが冷気を感じたがそのまま勢いよく降り下ろした。
足を下したその地面から冷気が零れ、一気に火の玉と電気の玉を包み、ゴトッという音とがし、地面に落ちた。
「う、嘘!?」
「そ、そんな……なんで!?」
そんな女性二人の声が聞こえたと思ったら魔法使い二人が氷漬けになっていた。
あれ?……加減間違えた?
ま…まぁ、取り合えず残りはあと二人、リーダーの方は近接戦特化として、フード被った奴がわからないんだよな…。
フード被ってるせいで顔も見えないし、声も出してないから男か女かもわからない。
っていうか全く攻撃してこない。
ノールの方にチラッと目をやると、リーダーの方は、服を固定されて身動きが取れない状態にされていた。
あ、これもう終わりだな。
ノールが最後に氷でできた矢を弓につがえ、顔辺りに向け放った。
矢はリーダーの顔の数センチ横の壁に深々と刺さった。
「シロ、終わったよ?」
あれ?そこのフードの方は?
そう疑問に思っているとノールが近づいてきてこう言った。
「そのフードの人は決闘が始まってすぐに、シロを見て立ったまま気絶したみたい」
えぇ……何か呆気ないな。面倒だったけどちょっと楽しかったかも。
そう言えば……リーダーの方は?
と思い目をやると、白目をむいて気絶していた。
うわぁ……えげつない。
「暁の光はパーティー全員気絶及び戦闘続行不可により勝者はノール!!」
受付の人が宣言し、決闘は終了した。
「シロ、終わったからその二人の氷解除していいよ」
そう言われやれやれと言った感じで二人の氷に触れ、氷を解除した。
これ……間違いなくこのギルドのトップから呼び出される流れじゃん……。
一人勝手に意気消沈しながらも闘技場を後にした。
誤字報告助かります。有難うございます。