第十一話 名前
「う……ん?」
「あれ?ボクは……」
五人組が離れて行って少しして目を覚ました。
さて、面倒だけと色々と説明しないとな。
『起きたか?』
話し掛けはしたが、まだ眠たそうに目を擦っている。
もふもふだぁ~などと言いながら俺の尻尾のあたりに顔を擦り付けて来る……まだ寝ぼけてる。
『寝ぼけてる場合じゃないぞ?」
「ふぇ?…あれ?……神狼様?」
『眠気は取れたか?』
「うん、まだちょっと眠いけど大丈夫」
段々と眠気が取れてきた様だ。
『それはそうと、お前に説明したい事が色々あるけどその前に……お前の名前を教えてくれないか?』
「あ、そういえば教えてなかったっけ?」
『教えて貰ってないな。直ぐに寝ちゃったし』
「ん~。ボクはノールだよ」
「神狼様の名前は?」
『……名前は無い、一度も付けて貰った事が無い』
自称神様に名前つけられたけどあれは無しで良いだろう。
「じゃぁ、ボクが名前考えてあげるよ!!え~っと……」
「≪シロ≫、なんてどうかな?」
『………』
Oh……なんてこった!!ネーミングセンスがあの自称神様と同レベル……。
『一応……名前の由来を聞いても?』
「うん、雪みたいに真っ白だからシロ」
「だめ・・・かな?」
『………』
ま、まぁ。あの自称神よりしっかりと考えてくれてはいるみたいだが……。
≪神獣 神狼、個体名をシロに確定しました≫
唐突に声が聞こえた。しかも勝手に確定された……解せぬ!!
≪なお、名を変更することは出来ません≫
ふぁ!?そんなの初耳なんだけど!?……もういい諦めるか。
んじゃついでに先刻の黒いバージョンの時の呼び名も考えて貰うか。
ってあれ??いつの間にかノールがあの五人組の所に!?どうやって見つけたんだ??しかももう仲良くなってる!?早ッ!!えぇ……俺の苦労は一体!?
ってか楽しそうだなおい!!まぁ話し終わるまで少し待つか。
暫くすると話が途切れた。
『ノール、話は終わったか?』
「うん、終わったよ」
「ボク、シロと一緒ならあの人達と一緒に行っても良いよ?」
『……そうか』
『ノール……それとそこの五人組。ちょっと見て貰いたいものがある』
「何??見て貰いたいものって」
「……何かあるのですか?」
ノールってコミュ力高すぎない!?……妬ましい。
『まだ完全に制御は出来てないけど先刻と同じ状態になってみる』
そう言い、全身に力を込める。が、先程の様に黒く変化する気配が一向に無い。
あれ??何でだ?……何か特殊な発動条件みたいなのでもあるのか?
「何々?失敗?」
「そ、そんな!!こんなことって!!」
「どうしたの?何かあったの?」
「えぇ、ほんの一瞬ですが……しかし本来では絶対に不可能…あってはならない事です!!」
「何を感じたんだ!?俺達にも分かる様に説明してくれ!!」
「……ほんの一瞬ですが神獣様の体から全く別の気配がしました」
「魔物の様な……いえ、そんな言葉では言い表せません!!ですが一つだけはっきりと言えます。神獣様よりも強大な力です!!」
『失敗したかと思ったけどどうやら一人だけ感じ取れたみたいだな。……発動条件はまだ分からないけど、先刻、俺の毛が真っ黒になって目が真っ赤になった時と同じ事をしようとしただけだ』
「……そ、そうですか……急に強大な力に当てられてビックリしました」
「すまない……何故か分からないが、震えが……止まらない!!」
「わ……私もだわ……まるで心臓を握られているかの様な感じで悪寒が止まらないわ!!可能なら今すぐ解除して欲しいわ!!」
『りょ……了解』
ゆっくりと込めた力を抜いていと剣士達の震えが収まて行く。
「ふぅ、ようやく震えが止まった。あのままだったら発狂してた自信があるぞ」
「私も同じ意見ね。で、このあと貴方達はどうするの?」
「ボクはシロが一緒に行くなら行くよ」
『分かった……行くか』
『で?一体何処に行くんだ??』
「とりあえずは俺達が所属してるギルドがある街を目指す」
『分かった。だが、道は分かるのか?』
「問題は無いわ。この近くには村があるし、村まで道のりは完璧に覚えてるわ」
おう……何という記憶力。俺も欲しい位だ!!
「村??もしかしてその村って……!!」
『あぁ……多分ノールが居た村のことだろうな』
伯爵の私兵はいないとは思うけど……油断はしない方が良い。
何時何が来ても良い様に冷気だけは常に纏っておくか。
「さぁ、行きますよ!!村に付けば少しは休めるかもしれません!!」
その言葉と共に、俺とノールは不安を抱えながらもゆっくりとその村に向かって歩き出す。