第九話 接触
逃げる訳には行かないし……。
魔物は何とかなるとして……問題は人の方だな。
『とりあえず…魔物の方は凍らせるとして』
『人の方は…あれ?こっちに向かって来てね?』
何かから逃げてるのか?
助けた方がいい…のか?
……来た。
感知するとほぼ同時に五人組が木の影から飛び出して来た。
男三人、女二人の冒険者風の恰好をした五人組。
男三人の装備の武器は剣、弓、槍、女二人は杖と……よくわからないから杖その二でいいか。
職業は恰好から予測すると…。
男の方から、剣士、弓使い、槍使い。
一人目の女は、とんがり帽子と黒っぽい服からして魔導士か?
で、もう一人は…結構豪華な飾りが付いてて白を基調とした服、そしてよくわからない杖……メイスか?……聖職者って感じがするな。
あれ?…こっちにって言うか俺?に向かって殺気放って来てない?
え?なんで?、俺何もしてないぞ?
って!…ちょっとまずいかも、魔物に完全に囲まれてる!!
しかもまだ五人組は気付いてない。
凍らせるにしても……そこの五人組を巻き込み兼ねないし、範囲を狭めるともっと近づいてこないと意味が無い。
めっちゃ警戒されてるから話は通じそうにないし……。
あれ?そういえば俺会話って出来たっけ??
……とりあえず声だけ出してみるか。
『………』
や、ヤバイ!!緊張し過ぎて声出ない!!どうしよう…。
「あ…あの、私の言っている言葉を理解出来ますか?」
聖職者っぽい方が声を震わせながら語り掛けてきた。
「魔物に人間の言葉が理解できるわけないだろ!!」
剣を背負った男が聖職者っぽい方に向かって怒鳴った。
えぇ…なんかめっちゃ怒られたんだけど!?聖職者っぽい人…ドンマイ。
それに、結構な声量で怒鳴ったせいなのか、音が拾い辛い…。
『静かにしてくれ……音を聞き逃すし聞こえ辛い』
そして、急に声を発したのが悪かったのか少しの間沈黙が流れ……聖職者っぽい人以外の目がこれでもかってくらいに開かれた。
「シャ……シャベッターー!!??」
先程の怒鳴り声とは比にならない程の大声が発せられた。反響と言うおまけ付きで。
『おい……頼むから静かにしてくれ、寝てるこの子供が起きるし魔物がコソコソ動く音を聞き逃す!!』
四人は慌てて口を塞ぎコクコクと首を上下に振り肯定の意を示した。
『距離にして……約十メートル弱か』
『最低でもあと五メートルくらいは近づいて来て欲しいけど……』
まぁ、そう簡単には近づいて来ないか……。
だったら……少し面倒だけど
『さて……そこの五人組、俺の三メートル手前くらいまで近づいてきてくれ』
唐突に何を言い出すんだこいつは?と言う視線を感じるか無視だ無視。
『そうじゃないとそっちにも甚大な被害が出るかもしれないが、それでも良いか?』
そう言うと、女二人は警戒しながらも少しづつ近づいて来た。
『残り三人、早くしてくれ!!魔物の餌食になるぞ!!』
「「「ッ!!!」」」
少し怒気を強めて言うと男三人は恐る恐ると言った感じ近づいて来た。
うん、分かるよ?俺だって初対面だったらそうなるし……。
『……来たな、人間の眼でもそろそろ目視で確認できるはずだ』
『あ。それとこんなことを言うのはあれだが……武器を構えたり魔法の詠唱は出来る限りしないでくれ』
この言葉に五人組は目を見開いて驚きを隠せずにいる。
頼むからこんな非常時に何言ってんだこいつ!!馬鹿なのか?みたいな目で見るのはやめてくれ……めっちゃ心に刺さるから!!
さて、どの位まで凍るか……。少しだけ魔力を練り上げ一気に放出する。
パキパキッ!!
そんな音と共に冷気が放出され、五メートルくらいまで近づいていた魔物達が草木と一緒に一瞬にして凍り付いた。
感想にて余白が多いというコメントを頂きまして修正させていただきました。
感想をくださった方有難うございました。