表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

漫才:もう死んでもいい

作者: てこ/ひかり

二人「はい、どうも〜」

ボケ「突然だけどさ。お前、【これが出来たらもう死んでもいい】って思えることある?」

ツッコミ「何だよいきなり」


ボケ「例えば【お腹いっぱいお肉たべられるんなら、俺もう死んでもいい!】みたいな」

ツッコミ「あぁ、なるほど。【死ぬまでに、出来ればやってみたいこと】ね」

ボケ「そう。【死んでもいい!】って思えるほど強い望みを持ってれば、生きるのも楽しいと思うんだよね〜」

ツッコミ「うんうん」

ボケ「じゃあ俺が今から【死んでもいい】って思えそうなこと挙げて行くから、見つかったらお前死ぬことな」

ツッコミ「何でだよ! 何で俺、漫才中に死ななきゃいけないんだよ!? ペナルティが重すぎるわ」


ボケ「でも、【死んでもいい】って思えるほどのことなら、死ねないとおかしいだろ?」

ツッコミ「オイ、大丈夫か。こんな暗いお題で…」

ボケ「とりあえずやってみようぜ。万が一良いのが見つかったら、お前死ぬかもしれねェんだから」

ツッコミ「誰が死ぬか。分かった、とりあえず挙げてみてくれ」

ボケ「じゃあまずは…【この世に生まれてくる】」

ツッコミ「ちょっと待てよ」


ボケ「何だよ?」

ツッコミ「【この世に生まれてくる】って、ファーストイベントじゃねえか。何で生まれてきた瞬間、死ななきゃならねェんだよ」

ボケ「だってお前、【この世に生まれてくる】って大分奇跡だよ? 【死んでもいい】ってくらい強い気持ちないと、きっと叶わないよ?」

ツッコミ「生まれてくるんだか死んで行くんだか、分かりにくいわ。初っ端からヘヴィすぎるよ。もうちょっと軽めの奴にしてくれ。俺、もうちょっと生きたい」

ボケ「もうちょっと生きたい?」

ツッコミ「うん」

ボケ「分かった…じゃあ、【小学校に入学する】」

ツッコミ「【小学校】ってアンタ…」

ボケ「【小学校に入学して、生涯の親友を得る】」

ツッコミ「あぁ〜!!」


ボケ「な?」

ツッコミ「そうだな…幼馴染っていうのは、確かに重要かもな! その後の人生を、左右しかねない」

ボケ「【死んでもいい】って思えた?」

ツッコミ「う〜ん! 死ぬほどかって言われると…」

ボケ「…でもお前は、まだ死んでない。ということはお前は、【これから一生誰とも仲良くなれない】ことな」

ツッコミ「何でだよ!?」

ボケ「だって本当に友達が欲しかったら、この場面で【死んでもいい】って思ってるはずだよ?」

ツッコミ「重たいんだって、だから。大体、死んだら友達とも遊べないだろ」

ボケ「そうしてお前は誰とも友達になれないまま…【中学校に入学する】」

ツッコミ「まだ続くんだ。【中学校】ゥ!?」

ボケ「【中学校に入学して、初めて彼女ができる】」

ツッコミ「う…うわぁぁあッ!?」


ボケ「な?」

ツッコミ「ちょっと待って!? 彼女!?」

ボケ「【彼女ができるんなら、死んでもいい】って思った?」

ツッコミ「待って! 少し考え…」

ボケ「…そうか。それでもお前はまだ、死ねないんだよな。ということはお前は、【これから一生彼女ができない】ことな」

ツッコミ「だから何でだよ!? 何でそんな重い枷を、一生背負わなきゃならないんだよ!?」

ボケ「お前が中学校の時、【死んでもいい】って強い気持ちで、彼女を作りに行かなかったからだよ! そうしてお前は、一生彼女もできないまま…」

ツッコミ「オイオイ。友達もできない、彼女もできない…俺の人生悲惨すぎんだろ」

ボケ「【高校に入学する】」

ツッコミ「せめて高校生活くらいは…!」

ボケ「【高校生になって、『漫才師になりたい』と初めての夢を持つ】」

ツッコミ「それはダメだ!」


ボケ「どうする? そろそろ死ぬ?」

ツッコミ「死ねない! 日本一の漫才師になるまでは、死ねない!」

ボケ「…しょうがないな。じゃあお前は一生、【夢を持てない】ことな」

ツッコミ「だから何なんだよさっきから! お前のその、謎のルールは!」

ボケ「やかましいわァッ!!」

ツッコミ「痛ェッ!? …何で殴られたの俺!?」

ボケ「さっきからウジウジしやがってよ…! 【夢が叶うんだったら死んでもいい】って…俺が聞きたいのはその一言なんだよ!!」

ツッコミ「うるせェんだよ!! 友達も、彼女も、夢も奪われて…このままで俺死ねるかァ!」


ボケ「でもアレだな…」

ツッコミ「オイ。急にどうした」

ボケ「こうやって改めて考えて見ると…お前の人生って、結構悪くないことばっかりだな」

ツッコミ「…お前と出会ったの、大学ン時だろうが。お前が俺の何を知ってるんだ」

ボケ「結局…ハハッ。お前がこうして生きてっから…俺はお前と、漫才ができるんだなァ、って」

ツッコミ「死ねよ」

ボケ「死なねェよ。死ぬくらいなら、俺、お前との漫才を選ぶわ」

ツッコミ「…もういいよ」

二人「どうも、ありがとうございました〜」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 謎論理を押し通して最後にちょっといい話風に持っていくのが面白いです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ