封霊の絵師
「九尾よ! 私を覚えているか!」
小次郎は、村中に響き渡るような怒声で、己が仇に投げ掛けた。
「己のような人間に覚えなど……貴様、人間か? 人で在りながら、なんだその霊力?」
通常では考えられないほどの霊気を放つ人間に、遥か遠い昔に出会った人間を思い出させた。
「もしや、晴明の転生か!」
それは今からおよそ千年前、九尾が唯一、後れをとった人間の名だった。
小次郎は、九尾が身構えるよりも速く、右腕の包帯を投げるように解き、そのまま流れるように右腕を切り裂いて、九尾を描く。
「妹を喰らった恨み、今、果たさせてもらう! 比良坂を越えて、冥府へ堕ちろ!」
そう叫んで、描いた絵に火を点けた。
この青年の描く絵には、不思議な力があった。
描いた物の怪を紙へと封じ、それを燃やすことで、黄泉の世界へと導けるのだと言う。
だが、それは彼が持つ能力ではなく、彼の筆にその力があった。
安倍晴明の骨と髪で作られたと言う筆と、自らの血を顔料として、物の怪を退治するのである。
この物語は、そんな青年が仇討ちをするまでの旅である。
小次郎は、村中に響き渡るような怒声で、己が仇に投げ掛けた。
「己のような人間に覚えなど……貴様、人間か? 人で在りながら、なんだその霊力?」
通常では考えられないほどの霊気を放つ人間に、遥か遠い昔に出会った人間を思い出させた。
「もしや、晴明の転生か!」
それは今からおよそ千年前、九尾が唯一、後れをとった人間の名だった。
小次郎は、九尾が身構えるよりも速く、右腕の包帯を投げるように解き、そのまま流れるように右腕を切り裂いて、九尾を描く。
「妹を喰らった恨み、今、果たさせてもらう! 比良坂を越えて、冥府へ堕ちろ!」
そう叫んで、描いた絵に火を点けた。
この青年の描く絵には、不思議な力があった。
描いた物の怪を紙へと封じ、それを燃やすことで、黄泉の世界へと導けるのだと言う。
だが、それは彼が持つ能力ではなく、彼の筆にその力があった。
安倍晴明の骨と髪で作られたと言う筆と、自らの血を顔料として、物の怪を退治するのである。
この物語は、そんな青年が仇討ちをするまでの旅である。
第一話「封霊の絵師」
2016/05/02 06:17
(改)
第二話「鏡の向こうに映るもの」
2016/05/03 02:12
(改)
第三話「虎の威」
2016/05/03 14:17
(改)
第四話「空を黄金色に染めたもの」
2016/05/03 23:11
(改)
第五話「陰陽の筆」
2016/05/05 00:37
(改)
第六話「旅のはじまり」
2016/05/07 12:32
(改)
第七話「画竜点睛」
2016/05/08 20:14
(改)
第八話「嵐の前」
2016/05/09 23:02
第九話「白面金毛九尾の妖狐」
2016/05/10 22:39
第十話「異国の犬」
2016/05/11 23:41
第十一話「墓参り」
2016/05/15 20:28
第十二話「秤」
2016/05/22 23:10
(改)
第十三話「天下の険」
2016/07/30 13:21
(改)
第十四話「蛇足」
2016/08/07 20:14
(改)
第十五話「鰻と小町」
2016/09/16 22:50
(改)
第十六話「旅は道連れ、世は情け」
2017/03/24 21:50
(改)
第十七話「天雲に近く光りて鳴る神の」
2017/07/03 00:59
(改)
第十八話「亀の甲より年の劫」
2017/07/29 13:53
(改)
第十九話「越すに越されぬ大井川」
2017/10/10 01:06
(改)
第二十話「血で紡がれた紅い糸」
2018/01/18 21:53
第二十一話「御館様」
2018/05/13 04:48