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乱入少女たち

 通された部屋は離れだった。

 山の斜面に張り付くように建てられている。

 本館からはまた別の枯山水(かれさんすい)の庭園を通ってつながっており、完全に外界とは遮断されていた。

 風呂は2つ。

 小さな目で屋根付の半露天と、大きな露天風呂だ。脱衣所もそれぞれ独立していたので、人数の多い姫たちに露天風呂を使ってもらい、オレ達男が半露天の内風呂を使うことにした。

「ふいーっ」

 身体を簡単に洗ってから湯船につかる。足を伸ばして肩まで温泉につかると自然と声が漏れた。

「あーっ……効くぅーっ」

 遅れて入ってきたレーゲンハルトも隣に浸かって身体を伸ばす。

(やっぱいい体してんな、コイツ)

 弱い人間であるにも関わらず、真祖と一緒に旅を続けてきたのだ。嫌でも筋肉がつくだろう。

 ただ意外に傷がない。

 旅をしていれば……魔族と(いさか)いを続けていたのなら、もっと生傷(なまきず)とかついていてもおかしくはないのだが。

(ああ……そっか。エルフリーデ王女やイブティハージュ僧女(そうじょ)がいるから、怪我しようが死にかけようが魔法でなんとかできるか)

 それに、レーゲンハルトは竜騎士を目指しているのだ。

 あの後部屋で少し調べたが、人間が竜騎士になるためには、13支族全てに認められる必要があるらしい。竜騎士と認められた人間は7大秘宝と5大秘術、そして神竜の託宣(たくせん)、併せて13の証を与えられる、と。 

 その中に治癒系の秘術があるかもしれない。

「お疲れ様、タイガ殿。ウチの子達の相手、ありがとう」

「いやそっちの姫たちは基本的に大人しいだろう」

 マイペースではあるかもしれないが。

「むしろこっちの……クーニャの面倒見る方が疲れたよ」

 ことあるごとに走り出そうとするわ、すぐにメラルダと喧嘩するわで目が離せない。ルイーザ王女たちが居るおかけで……人見知りしているからまだあの程度で済んでいるが、3人旅だったら間違いなく舞い上がっているだろう。

 物理的に。

「最初はそんなもんだよ」

「つーか、どうやって(しつ)けたんだ?ヒナにしてもクーニャにしても、いくら言ってもあんまり変わらないんだが」

「あー……、難しいよな」

 レーゲンハルトが思案顔で夜空を見上げる。

 つられて見上げた空は、山奥であることもあってか小さな輝きもはっきり見てとることができた。

「多分言い続けて、示し続けるしかないんだろうけど」

「だよな……」

 オレは経験も足らないし、あの2人の考え方を変えられるほどのものも示してないのだろう。

「ま、この旅で『タイガ』という竜人をきっちり見せれば、2人の見方も変わるんじゃないか?」

「だといいけどな」

 ヒナにはもう少しエロ方面を自重してほしいし、クーニャはいい加減勉強してほしい。

「大丈夫だよ……あれで結構見ているはずだから。……ちなみにウチのメンバーの中で一番変わったのはルイズだぞ?」

「そうなのか?」

「……というか、ほとんど別人かな。会ったころは高飛車というか、甘えん坊というか……『わたしを誰だと思っていますの?』とかトリアの口真似してたし……」

 ルイズ……ルイーザ王女が高飛車とか全く想像できない。冷や汗垂らして作り笑いしている顔しか思い浮かばん。

「誰だよ、トリアって?」

「ルイズの姉ちゃん。……ヴィットーリア女王って言った方が伝わるか?」

「……あんた、人間なのにどえらい奴と知り合いなのな」

 ヴァルチェスカが人間嫌いというのは有名だが、マグナ・サレンティーナが人間嫌いというのは認識を改めた方がいいのかもしれない。少なくとも当代の女王と王女は人間を受け入れているようだ。

「ルイズの奴、会った時に俺の顔面にドラゴンフレア打ってきたりしたんだぞ?」

 思い出話は尽きないようで、再びルイーザ王女の話になっている。

(なんで顔面にドラゴンフレア喰らって生きてんだ、コイツ?)

 ちなみにレッドドラゴンは全竜人族中、最も攻撃力が高いと言われている。そのレッドドラゴンの真祖であるルイーザ王女の攻撃は、人間に受けきれるものではないはずなのだが。

「ん?ああ、別に俺の力で防いだわけじゃないぞ?」

 疑問が顔に出ていたのか、レーゲンハルトが手を動かして説明しようとする。

「コイツ、エルには『魔力障壁』っていう能力があってだな……」

「うん」

「ちょっと待て」

 髪の色が同じだったから、湯船に浮かんでいる銀色の髪に全く違和感を感じなかった。

 いや、良く見ればいくら俺が長髪だからって多すぎだろとは感じるはずだが、レーゲンハルトの話に意識を向けていたので気がつかなかったのだろう。

 とにかく目の前にレーゲンハルトに抱えられたエルフリーデ王女が居る。

 もちろん素っ裸で。

 肩も胸も、ぽっこりお腹も太ももも、恥ずかしがる様子もなくぬぼーっと立っている。

「は?」

「ん~?」

 2人揃って不思議そうな顔をする。

「一応確認しておくけど、この子、女の子だよな?」

「確認するか?」

「いいよ、っていうか見えてんだよ」

「?」

 何もわかっていないエルフリーデ王女が顎に手を当てて、不思議そうな顔を続ける。

 身体を隠す気は全くないらしい。

「首傾げんなっ!……なんでエルフリーデ王女が一緒に入っている?」

「エルでいいよ~?」

 何を言い出したのか少し考えて、「呼び方」であると思い立った。

 メラルダもそうだが、随分愛称で呼ばれたがるな王女様たちは。

「……相変わらずマイペースだな、キミは」

「『キミ』じゃなくて、『エル』~」

 呼んでくれなかったことが不満なのか、少し眉を歪めて口をとがらせる。

 それでもいつも通りののんびり口調なので、あまり怒っている感じはない。

 オレとしては「んな事言いから前隠せ」と言いたいところだが、そもそも根本的に間違っている。

「……エルはなんでこっちに居るんだ?女の子はあっちの広い方に入ろうって言っただろ?」

「あたし、いつもハルくんと一緒なんだよ?」

(ヤバい……会話のキャッチボールができる気がしねえ)

「まあ……本人気にしてないし、タイガ殿も悪い人じゃなさそうだから……」

 オレがどうしようかと固まっていると、レーゲンハルトが言い訳みたいなことを言い始めた。

「オレに行ってもしょうがないだろう?あとでルイーザ王女に怒られた時にでも……」

「ルイズちゃん?」

「キミ……エルも『ルイズ』って呼んでるのか?」

「うん、そーだよ~。お友達だもん」

「友達……ねえ」

 ここに居ないという事は、ルイーザ王女は裸を見られることに羞恥心を覚えるくらいの年齢ではあるのだろう。目の前の「子ども」と友達というのは不思議な感じがする。

 ただそれもあと数年。

 真祖の寿命は長い。1000年は軽く超える。

 その長い一生を(かんが)みれば、人間で言うところの姉妹、いや親子程年齢が離れていたとしても、いずれ「友達」と呼べる間柄になるのかもしれない。

 個体数が少ないというのもあるだろう。

「……(このままでいいのか?)」

「……(まあ、しばらくは)」

 エルの頭越しに目だけで会話してみたが本人たちが問題ないというのならいちいち声を荒げるのも大人げないだろう。

 あとでヒナあたりが文句を言いそうだが。

「お~……」

 自分への注目が無くなったからか、エルが自由に動き始めた。

 タオルに空気を入れて湯船に沈める。

 隙間から漏れた空気がぷくぷくと表面に上がってくるのを見て歓声を上げる。

 それに飽きると、今度は湯船の中を泳ぎだした。

 お湯から出した小さな翼でバランスを取り、足を尻尾にくっつけて左右に揺らしながら流れるように泳ぐ。

「……」

「可愛いですね~」

「そうだな……って、何でお前が居るんだ、ヒナ」 

 湯船の片側、階段のようになっている部分の一段目にピンクの髪の女王様が立っていた。

 まるでそこに居るのが当たり前のようにオレの方へ視線を向ける。

「……お前はわざとだろ?」

「何がですか~?」

 ご丁寧にタオルは頭の上、二歩の角に渡すようにかかっている。

 つまり身体を全く隠していない。

 本人には悪いが、小柄なうえに完全に子供体型、おまけに堂々としているので知らない人が見たら「子ども」としか思われないだろう。

 しかし実年齢を知っている身としては「恥ずかしい」の一言に尽きる。

「いいから身体隠せ」

 何て言うか、他の男……つまりレーゲンハルトにヒナの裸を見せたくない。

「は~い」

 オレが苛立っているのを感じたのか、ヒナは素直に頷いた。

 しかし、その手はタオルには向かわず、オレの首へと延びる。

「何で抱き付くんだ?」

「ほら、抱き付けば見えませんよ~?」

 ヒナは慎ましい胸をオレの肩辺りに押し付けて、太ももをオレの尻尾に押し付けてバランスを取っている。

「オレは『恥じらいを持て』という意味で言ったんだがな」

「恥ずかしくないわけないですよ~?」

「ん?」

 恥ずかしさを感じて逸らしていた目線を、ヒナの顔へと向ける。

「恥ずかしくないわけじゃないんです~。恥ずかしいけど、隠れたいけど、それでもタイガちゃんと一緒に居たいから~」

 ヒナがオレの顔を見つめながらゆっくりと正面に回る。

 火照った体を見せつけるようにしながら。

(相変わらず無駄に、無意識にエロいな……)

 幼児体型のくせに動きが妙に妖艶だ。そのあたりはクーニャに通じるところがある。

 とはいえ、こんなところで欲情する気はないし、ヒナは妹みたいなものだ。

 婚約者である以上いずれそうなるかもしれないが、今はその時じゃない。

(……別にビビッてるわけじゃないからな)

 誰に言い訳するわけでもなくそういう言葉が浮かんだことに自分でイラッとしながらヒナの肩に手をかける。

「タイガちゃ~ん……」

 城でキスしたこともあってか勘違いしたヒナが瞳を閉じて(あご)を引く。

 体の力が抜けたところを見計らって腕に力を込め、ヒナを膝の上に座らせる。ついでに腕をつっぱってキスする気がないことも示した。

「タイガちゃんのイケず~」

「どこで覚えてくんだそんな言葉。つーかこんなとこでしねえよ」

「あ、じゃあ~、お部屋に戻ってから~」

生憎(あいにく)と別部屋だ」

「む~」

「お前はクーニャとメラルダどうにかしてくれよ」

 さすがにあの2人は別の部屋をあてがってはいるが、部屋に戻ってすぐに寝るという事はあるまい。女の子同士だし寝るまで誰かと喋っているはずだ。ルイーザ王女とでも連絡取りあってくれれば、会談とはいかないまでも一緒にお茶するくらいはできると思う。

「それなら問題ないですよ~」

「なんだ?もう仲良くなってるのか?」

 さすがは子供。一緒に風呂に入れば結構簡単に仲良くなるものなのかもしれない。

「いえいえ~、そっち~」

「?」

 ヒナの指が示す先、右の方へ視線を向けるとそこにはなぜかメラルダが立っていた。

「あ、あの……」

 当然、素っ裸で。

「ぶほっ!?」

 思わず噴き出した。

「きゃっ!?」

「あっ、悪ぃ……」

 オレの声に驚いたメラルダが翼を広げて飛び退る。そして恥ずかしくて我慢できないとばかりに、左手に持っていたタオルを体に巻きつけて(うずくま)る。

(良かった。まともな羞恥心(しゅうちしん)を持った娘がここに居た)

 メラルダは顔どころか体のあちこちが真っ赤だった。まだ温泉には浸かってないみたいだし、その赤みは100%羞恥心だろう。

「あ~もう、ダメですよ~。温泉では体隠しちゃ~」

「じゃ、じゃけどもヒナさん」

 オレへと視線を向けた後、ムリムリ、と頭を振る。ヒナに巻き込まれたのだろう。

「お・ま・え・の・入・れ・知・恵・か?」

 未だ膝の上で調子に乗っているヒナの頭に連続でチョップを入れる。

「痛いですよ~、タイガちゃ~ん」

「しかもあの様子じゃ自主的に入ってきたって感じじゃないんだが?」

「あら~?わたくしが『タイガちゃんたちと一緒に入る』と言いましたら~、『じゃあ、ウチも』って~」

「いや、その発言もおかしいんだが……そうなのか?」

 正直意外だ。メラルダはあんまり人付き合いとか積極的じゃないほうだと思っていたのだが。現に今も恥ずかしがっている。

「は、裸で入るなんてっ、知らなかったんじゃよーっ!!」

「ああ、そういう……」

 他の国では温泉に入るとき水着みたいなものを着るのが一般的らしいが、ここクリカラ首長国連邦では裸で入るのが一般的だ。

 そこは正しい。

 ただし、男女別で入るのもまた常識である。

 混浴という場所もあるにはあるのだが、あくまで互いの同意の上でのこと。恥ずかしがっている竜人に強要するのは違うと思う。

「まあ、無理しなくていいから。メラルダは女湯戻れ。ついでにヒナとエルも連れてけ」

 俺は未だのんびり泳いでいるエルフリーデ王女と膝の上のアメノヒナドリ女王を指さす。

(こいつら、いい加減女であることを自覚してくれないかな)

「え~、タイガちゃん……」

(やかま)しい。お前この中では年長者だろ?むしろ率先(そっせん)して帰れ」

 普通16にもなったら羞恥心くらい芽生えると思うのだが。

 当の本人は女湯に行けと言われたのが不満です、という顔でじーっとオレの顔を見ている。

 未だ体を隠す気はないらしい。太ももでオレの両脇をホールドしたまま抗議の視線を向けている。

「ヒナ。お前も……」

「へくちっ!」

 動く気がないヒナに説教しようとしたところで小さなくしゃみが聞こえた。ヒナと2人、声がしたメラルダの方へ視線を向ける。

「へくちぅっ!」

 再びのくしゃみの主はやはりメラルダだった。

 温泉に入っているオレ達にとっては涼しい、心地いい空気だが、半裸で立っているメラルダにとっては相当寒いはずだ。

「あー……」

 どうするか。

 このままさっさと女湯に行けというのも酷な気もするが、かといって湯船にタオルを入れてはいけないというルールがある。

 つまり入るときは裸にならなければいけない。

「ほらほら~。恥ずかしがってないでメラルダちゃんも~」

「う……」

 チラリとオレを見てまた赤面している。

 (ちょっと温まる間くらいは向こうを向いておくか?)

 そう思って体の向きを変えようと、反対側……レーゲンハルトの方へ顔を向けると、

「全く、女の子が震えているんだから入れてあげなさい。タイガちゃんがそんな薄情者に育っちゃったなんて、ウサギは悲しいよ」

 なぜかもう一人珍客が。

 ツインテールの髪を器用に頭の後ろで(まと)めた女将(おかみ)が堂々と入浴していた。

「何やってんだウザキさん」

「ウ・サ・ギ。もう……」

「『もう』じゃねえよ。ここ一応客間だぞ?ついでに男湯だ」

「え?ウサギには混浴に見えるけど?」

 最初こそオレとレーゲンハルトの男2人だけだったが、あっという間に増えて今や女の方が多い。

(いや、エルは最初から居たんだっけか?)

 ともかく、今の状況は他人が見たら、十人が十人とも混浴と言うだろう。

「……そう見えてもここは男湯なんだよ。頼むから他の3人連れて女湯に行ってくれ」

「いいじゃない。たまにしか会えないんだから。成長したあなた達の姿をもっとウサギに見せて」

「……」

 それを言われると少し心苦しい。

 オレは毎日政務に追われ、立身出世に躍起になり、城から出ることがほとんどない。ヒナも政務に追われているし、城から出ても国の代表として振る舞わなければならない。

 ウザキさんがここに居ることは2年位前から知っていたが、出向いたのは初めてだ。

 オレたちにとっては育ての親。ヒナの方は知らないが、オレにとっては親父より親しみを持っている。

 他の人の手前、恥ずかしくて言えないが、こうして触れ合えるのは本当に嬉しい。

「タイガちゃん結構筋肉ついたよね?確か後衛職なんだっけ?それにほとんどデスクワークでしょ?それでもこんなにつくものなの?」

 喋りながらオレの体をペタペタと触る。

 昔はもっと大きいと感じていた彼女の手も、今はオレより小さい。オレが勝手に成長してしまったからなのだが、その違いがはっきり分かるほど長い間会えなかったのだと思うと申し訳なく思う。

「あ、手も結構大きいね~。ウサギの手より大きくなったんだ」

 オレのそんな感傷に気付いているのか、あるいは単なる偶然か。湯船の中からオレの手を引っ張り出して、自分の手を合わせている。

 ただその表情は終始笑顔。単純に、純粋に、オレの成長を喜んでいる。

「ふふ、ヒナちゃんはウサギと同じくらいかな~」

 今度はヒナの手を持ち上げて自分の手と重ねる。同じ女性であることもあってサイズはほとんど変わらない。

「ほんと、2人共ちゃんと成長してくれて……」

 自分の手とオレ達の手を比べて感極まったのか、やや濡れた声で呟くと手を広げてオレ達二人を抱きしめる。背中に回された手から、押し付けられたおっぱいからウザキさんの体温が伝わる。

「ありがとう……」

 ぽつりと呟いた彼女の言葉が胸にしみる。

 何となくそんな気分になってウザキさんの背中や頭を撫でてみる。ちょっと驚いた表情をした後、嬉しそうに目を細めてオレの首のあたりに額を擦りつけるウザキさん。

 身体だけじゃなく、心まで温かくなるような気がして、別にこのまま混浴状態でもいいかなという気もしてくる。

「いや、ほんと大きくなったね」

 ウザキさんの手がオレの胸筋を撫でる。

(なんか空気変わったな)

 妙に彼女の体温が高い気がする。息も荒い。

「あ……けっこうある」

 胸の中心を撫でていた手がおもむろに腹筋の方へ。

「んっ……」

 さすがに腹筋が割れるような鍛え方はしていないが、人並み以上にはついているオレの腹筋を彼女の指がなぞる。

 そして。

「もうちょっと……」

「おいーーっ!」

 さらに下に向かって手を動かそうとした気配を察知したオレはウザキさんと……ついでに未だにオレの膝の上に乗っているヒナを振り落すべく立ち上がる。

「きゃっ!」

「きゃ~」

 2人が悲鳴を上げて仰向けに温泉にダイブした。

「何してんだあんたはっ!」

「え~、いいじゃない。ウサギだって『女』だよ?」

 大股開きで尻もちをついたまま不満そうな声を上げるウザキ。

「このタイミングで『女』発言すんじゃねえっ!」

 そういうのを避けるためにわざわざ男女を分けているのに、最年長者が浮ついたことを言いだしては意味がない。

「いーもん。あっちの子の成長確かめてくるから」

「待て。レーゲンハルトはあんたが育てたんじゃねえだろうが」

「目の保養、目の保養」

 オレの抗議を無視してエルと戯れるレーゲンハルトの方へと向かうウザキ。その手は何かを掴むようにわきわきと動かされている。

 ブチッ。

 温泉で体があったまっていたこともあっただろうが、オレは頭の中で何かが弾ける音が聞こえた気がした。

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