目的地は何処?
朝食を終えたルドルフ達は、街の道具屋にて旅に必要な水や食料を買い揃えた。
これらの請求も全て、当然のごとくソルマン王へ宛てられた。
昨日買った大量の武具、そして先程買った食料などを全てローランに持たせ
ニルマートの街の住人達に見送られながら、ルドルフ達は出発した。
「あんたたち、頑張るんだよー。」
宿の女将の声援に背中を押されるように歩き出す。
わいわいと街の人達も色々叫んではいたが、その大半は「また飲み明かそう」という
ルドルフにとっては何とも嬉しくない声援であった。
ニルマートの街を出て、街道を北に進むルドルフ達。
先頭を戦士であるローランが歩き、その後ろを地図を片手にリーティエンドが続く
おそらく、ローランが道を外さないように監視をするためだろう。
リーティエンドのすぐ後ろにルドルフとマリアナが並んで歩く。
ふと、ルドルフが思い立ったように口を開いた。
『そういえば、オイラたちはどこに向かってるんだ?』
「北よ、昨日話したでしょう。もう忘れたの?」
リーティエンドが振り向きそう答えると
ルドルフは首を振り「そうじゃなくて」と言葉を続けた。
『目的地を聞きたいんだ。オイラたちはどこに行こうとしてるんだ?』
ルドルフの言葉にリーティエンドは足を止め、
持っていた地図をルドルフに見せながら指をさした。
「今、私たちがいるのが東のバレッサ王国のこの辺り。ここから北のレミス王国に入って
最終的には西のウィルパ王国へ向かうわ。」
『西の国?なんでだ?』
「にし・・・は、さい、しょ・・・に・・・だか、ら・・・」
「西の国は一番初めに魔族に襲われた国なのよ。
だから、地下世界に行く術もきっとこの国にあるはずよ。」
『地下世界?』
リーティエンドの言葉に疑問が増えていくルドルフは「くぅん?」と首をかしげる。
そんな姿にリーティエンドは、
ルドルフがこの世界の事を何も知らないということと、
誰もこの世界の事を教えていないということを思い出した。
「いい機会だし、色々説明しておきましょうか。」
『うむ、頼む。』
「あ、の・・・せ、んし・・・さま・・・いない・・・です・・・」
リーティエンドが立ち止まりルドルフに説明してる間、
ローランは気付かず歩き続けていたらしい。その姿はどこにも見当たらなかった。
「あら本当・・・どこに行ったのかしらね。まぁ、そのうち戻ってくるわよ。」
この辺りは安全だしローランは戦士だ、なにかあっても自力で解決できるだろう。と
そうルドルフたちが考えていると、ドドドドという地響きと共に、
「うおおおお」という雄叫びのような声を上げながら道の遥か向こうから
ローランがものすごいスピードで走ってきた。
「なんで誰もついてこないんだよ!」
ルドルフ達の所まで戻ってきたローランは開口一番そう言った。
「ご、ごめん・・・オイラたちも、ローランがいないことに気付いたのは今なんだ。」
「勇者が呼び止めたのに、気付かなかったアンタが悪い。」
申し訳なさそうに「クーン」と鳴くルドルフとは対照的に
リーティエンドは冷たく言い放った。
「なに?そうなのか勇者?」
ローランに言われてルドルフはうーん、と考えた。
気になったことを質問はしたけれど呼び止めたつもりはなかったからだ。
だけど自分の疑問にリーティエンドは立ち止まって答えたのだから
それは呼び止めた、ということになるのかもしれない。
そう思ったルドルフは返事を待っているローランに頷いて見せた。
するとローランは、がっくりと肩を落とし「すまない」と謝罪してきたのだった。
「それで、何で呼び止めたりしたんだ?」
『オイラ、目的地がどこなのか気になったんだ。』
「目的地?そんなの魔王がいる地下世界に決まってるだろ。」
『その地下世界ってなんなんだ?』
ルドルフの疑問にローランは、うん?と不思議そうな顔をして
少し考えるように腕を組むと「地下世界は地下世界だろ?」と言った。
「勇者サマはこの世界のことを知らないから、地下世界って言ってもわからないのよ。」
だから今からこの世界の説明をしようと思った。とリーティエンドが告げれば
ローランはなるほど、と納得したようだった。
「だったら街まで行こうぜ。この先に小さいけど街があったんだ。」
『そうだな、長い話になるなら街の方がいいし、連れてってくれ。』
「・・・さん、せい・・・」
「この辺りに街はなかったと思うんだけど・・・まさか、この街じゃないわよね・・・」
ローランの提案にルドルフとマリアナは賛成したが、リーティエンドは地図を見て
街の距離を確認した。ローランが言ったこの先の街というのが予想してる場所ならば、
地図で見る限り近くない。どちらかと言えば遠い方だ。
自分たちの歩く速度で計算しても軽く三時間以上はかかるだろう。
ローランの視力がよほどいいのか。それとも歩く速度が非常に早かったのか。
どちらにせよ、三時間歩いた後説明をするくらいなら
「街には向かうわ。でも、歩きながら説明するわね。」
と、リーティエンドはため息をつきつつ歩き出した。
そして、歩きながらルドルフに説明を始めるのであった。
「このフィーリシア大陸には、今私たちがいる地上世界の他に、
空の上に天上世界、地面の下に地下世界があるの。」
『空と地面の下?』
リーティエンドの言葉にルドルフは、空を見上げたり地面を見つめたりした。
「見えるほど近くにはないわ。」
『信じられないな・・・』
「で、も・・・ほん、と、なの・・・」
空の上や地面の下に世界があるなんて信じられないルドルフは「わぅん」と
困ったような鳴き声を出しながら話の続きを待った。
「天上世界には神族が、地下世界には魔族がそれぞれ暮らしているわ。」
『そういや、オイラが来た時も神族の予言がどうとか言ってたな。』
「神族は未来を予知する力を持っているのよ。それを予言として私たちに伝えた・・・」
『勇者が犬ってことも伝えてくれればよかったのに。』
勇者が犬だって事がわかっていれば、
あの時の武具だって人間用じゃなくて犬用になってたかもしれない。
ルドルフは「わぅー」と鳴きながらそんなことを思った。
「そこまで正確な予知ができないのかもしれないわね。
面白そうだから黙っていた、という可能性もありそうだけど・・・」
『後者な気がするのはオイラだけか・・・?』
「さ、すが・・・に、そ・・・れは・・・」
ないと思います。と僧侶であるマリアナは口にした。
それはこの話はもう終わりという合図のように、リーティエンドは話を戻した。
「この三つの世界と三つの種族は、それぞれ別の世界に干渉しない決まりがあるの。」
『なんでだ?』
「せん、そ・・う・・・おこさ、な、い・・・ため・・・です・・・」
三つの種族の間で最も厳しい掟が他の世界への干渉であった。
その理由として一番有力なのが、争いを起こさないため、と言われている。
「そんな中、地下世界の魔族がその決まりを破って地上世界に攻め込んできたのよ。」
そして今の現状になった。と、リーティエンドは遠くを見つめながら言った。
「今説明すべきことは、これくらいかしら?」
説明が終わると、ルドルフは聞いた話を「ウー」と唸りながら頭の中で整理しはじめたが
信じられない話ばかりで、頭が混乱しそうになっていた。
そんな時、マリアナが困ったように口を開いた。
「あ・・・の、・・・せん、し・・・さ、まが・・・」
マリアナの言葉に、いつの間にか立ち止まって話をしていたことに気付き前方を見ると、
地響きと土煙を上げてローランが走ってくるのが見えた。
少し涙目のローランは開口一番にこう言った。
「だからなんで・・・誰もついてこないんだよ!」
今回は説明回。
ローラン哀れ・・・(笑)