祭りの後
夜の闇が薄れ太陽が空に昇ると
眩しい光が大地を照らし始め朝が訪れる。
ニルマートの街の宿屋二階の寝室、
窓から注がれる朝日の明るさに目を覚ましたリーティエンドは、
起き上り寝ている間に乱れた髪の毛を整え始めた。
そして、寝ぐせのチェックが終わると隣のベッドですやすやと
眠っているマリアナに声をかけた。
「もう朝よ、起きて。」
リーティエンドが優しく揺り起こすと、マリアナはまだ眠そうな目を
ごしごしと擦りながら小さな声で「はい」と答え
手探りで枕元に置いた眼鏡を探して見つけると、眼鏡をかけながら起き上った。
「・・・お・・・はよ、う・・・ござ、ま・・・す・・・」
「おはよう・・・すごい寝ぐせね。」
起き上り挨拶をしたマリアナの髪の毛のハネ具合は相当なもので
本人もそれを気にしているのか、手で押さえつけて寝ぐせを直そうとしていた。
そんな姿を見て、リーティエンドはマリアナの隣に座り櫛を取り出して
寝ぐせを整えるようにとかし始めた。
「あ、あの・・・あ・・・」
「動かないで、すぐ終わるから。」
リーティエンドの行動にマリアナは驚いたが、優しくとかされていく心地よさに
大人しく終わるのを待った。
「はい。終わったわよ。」
「あ・・・あり、が、とう・・・ござ、いま、す・・・」
「さぁ、朝食を食べに行きましょう。」
寝ぐせを直してもらい、いつもの髪型に戻ったマリアナは帽子をかぶり
先に部屋を出たリーティエンドを追いかけた。
二階の部屋を出て一階の食堂に続く階段を降りていくと
食堂の床で寝転がる大勢の人の姿が目に入った。昨夜の宴会に参加した街の人達だ。
呆れた表情を浮かべながら、リーティエンドとマリアナはルドルフとローランを探した。
昨夜、二人は早々に宴会を抜け出しふかふかのベッドで休んだが、ルドルフとローランは
街の人達から解放されることはなく、夜遅くまで宴会につき合わされていたのだ。
見渡せばテーブルの上はすっかり片づけられており綺麗であった。
しかし、街の人達が寝転がって床を占領しているので歩き辛く少々邪魔である。
踏まないように気を付けて歩いていたが、あまりの歩き辛さにリーティエンドは
ヒールで踏んづけてやろうかと思い始める。さすがに思いとどまったが
ルドルフの発見がもう少し遅ければ、一人ぐらいは踏んづけていただろう・・・。
ようやく見つけたルドルフは仰向けで口を開けて寝ていた。
その姿は寝ているというより、ぐったりしていると言った方が正しいだろう。
「・・・ゆう、しゃ・・・さま。おき・・・て・・・」
マリアナがルドルフに話しかけ体を揺すると、ルドルフは「うぅ」と声を漏らした。
そして目を開けた瞬間、前足をバタバタさせて叫びだした。
『やめろ!オイラは本当に犬だ!中に人など入ってないーーーー!』
寝ぼけているのか「ギャンギャン」と吠えながらルドルフは暴れた。
ルドルフの暴れっぷりに昨夜何があったのか何となく察したリーティエンドとマリアナは
哀れんだ目で暴れるルドルフを見つめた。
『はっ!オイラは何を・・・』
ひとしきり暴れたルドルフは落ち着きを取り戻したのか、起き上り辺りを見回した。
正気に戻ったルドルフに、マリアナは安心した表情を浮かべる。
「おは・・・よ、う・・・ござい、ま、す・・・ゆう、しゃ・・・さま・・・」
『おー、もう朝かー・・・おはよー。』
「おはよう。昨日は大変だったみたいね。」
『・・・・・・ウン・・・大変ダッタ・・・』
リーティエンドの言葉にルドルフは昨夜のことを思い出したのか体を震わせ遠い目をした。
どうやらルドルフに新たなトラウマができたようだ・・・。
「・・・あの、せん・・・し、さま・・・は・・・?」
遠い目をしたルドルフに、話題を変えようとマリアナは
まだ見つけていないローランの話題を出した。
『ローラン?その辺にいないのか?』
話題が変わり戻ってきたルドルフは「くぅん」と鳴きながらローランを探した。
そんなルドルフとマリアナにリーティエンドが指をさす。
「多分あれね。」
リーティエンドが指差したのは、腹を山のように膨らませて寝ている一人の大男だった。
近づき確認すると、その大男は間違いなくローランであった。
鎧を着ていなかったためすぐに気付けなかったのだろう。
『すごい腹だな・・・』
「・・・踏みつけてやろうかしら?」
『大変なことになるから止めとけ』
「・・・おき、て・・・せん、し・・・さま・・・」
気持ちよさそうにヨダレを垂らしながら眠るローランをマリアナは揺り起こそうとした
が、ローランに目覚める気配はなく、寝返りを打つといびきをかき始めた。
『・・・起きないな・・・』
「どう・・・しよう・・・?」
「踏みつければ起きるんじゃないかしら?」
『・・・お前ローランに何か恨みでもあるの?』
「あるわね。」
『あるのかよ!』
ローランを起こす方法が思いつかず、今にもその腹を踏みつけそうなリーティエンドを
なんとか思いとどまらせていると、宿屋の女将がフライパンとお玉を手にやってきた。
「おや、おはよう二人とも。よく眠れたかい?」
「えぇ。」
「きもち・・・よか、た・・・です・・・」
「そりゃよかった。勇者様は・・・まぁ、聞くまでもないね。」
『ハハハ・・・』
リーティエンドとマリアナから感想を得た女将は、勇者の方にも尋ねたが
すぐに昨夜のことを思い出し、よく眠れたわけがないと思った。
「そのフライパンとお玉で朝食の準備ですか?」
「ん?これかい?違うよ。」
女将の手にしているフライパンとお玉が気になったリーティエンドが尋ねると
笑いながら女将は「こうやって使うのさ」とフライパンに勢いよくお玉を叩き付け
ガンガンと大きな音を発生させた。
「あんたら、いつまで寝てるつもりだい!さっさと起きな!!」
その音にも負けないくらいの大きな女将の声が響く。
床で寝転がってる人達から「ぐあっ」や「ぎゃあ」といった悲鳴が聞こえてくるが
耳を塞いでいるルドルフ達がその悲鳴に気付くことはない。
厨房で朝食の準備をしている宿屋の主人も耳栓をしているため支障はなかった。
フライパンとお玉の音波攻撃が終わると、床に寝転がっていた人達がヨロヨロと立ち上がり
フラフラしながらそれぞれの家に帰っていった。
床で寝転がっていた街の人達が、みんな起きて家へ帰って行ったのにもかかわらず
ローランは未だに起きることなく眠ったままであった。
「おやおや、これでも起きないとは・・・相当なもんだねぇ。」
「やっぱり踏みつけて・・・」
『だから止めとけって・・・どんだけ恨みあるんだよ・・・』
「・・・あ・・・」
マリアナの小さな声が漏れたのとほぼ同時に「ぐ~」という空腹を告げる音が
遠慮がちに響いた。マリアナは両手でお腹を押さえ顔を真っ赤にした。
「待ってておくれ。すぐに朝食を持ってくるからさ。」
女将はマリアナの頭を撫でてそう言うと、食堂の奥にある厨房へ向かった。
恥ずかしさに俯いているマリアナにリーティエンドは席に座るように促し、
ルドルフも気を使ったのか「ワオーン」と鳴いて「オイラも腹減ったー」と言いった。
厨房から戻ってきた女将はおいしそうな料理をルドルフ達に運んでくる。
朝だからか、それとも昨日の宴会で食材を使いすぎたのか、
料理はパンにサラダ、そしてスープというメニューだった。
焼きたてパンの香ばしい匂いとスープのおいしそうな匂いが漂うと
ローランの体がぴくりと動いた。
「メシか!!」
朝食の匂いに釣られたのかローランはそう叫びながら飛び起きた。
そんなローランに全員が呆れた表情を浮かべたのは言うまでもない。
「匂いで起きるなんて、まるで犬ね。」
『確かに匂いに敏感だけど、失礼だぞそれ。』
ようやく起きたローランを加え、ルドルフたちは朝食を食べ始めた。
山のように腹を膨らませていたにもかかわらず、ローランは朝食を大量に平らげ
再び全員を呆れさせるのであった。
投稿が遅くなってしまって申し訳ありません><
あまりにも書けなくて発狂しそうだったので、少しの間書くのを止めてました。
落ち着いた気がするので多分大丈夫かと・・・思います・・・。
*おまけ*
ルドルフ『やめろ!オイラの背中にチャックなんてない!中に人など入ってない!』
この世界にチャックってあるのかな?と思ってやめた。
ルドルフの新たなトラウマについてはご想像にお任せします。