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仲間はサイキョウ?

『おーい、ローラン。新しい鎧たぞー、しっかりしろー。』


買い物から戻ってきたルドルフは、ローランの目の前に買ってきた青黒い鎧を置き

右前足でローランの足を軽く叩きながら買ってきた鎧を見るように促した。

しかし、ローランが鎧に目を向けることはなく魂が抜けたように遠くを見つめていた。


「・・・だめね。まったく反応しないわ。」

「どう・・・しよう・・・。」

「これはもう、記憶を消して忘れてもらうしかないわね。」

『記憶を消す?そんなことができるのか?』

「えぇ。できるわよ。」

『ほぉー!』


リーティエンドの言葉に興味を抱いたルドルフは、シッポをぶんぶんと勢いよく振り

キラキラと期待に満ちた眼差しでリーティエンドを見つめた。

ルドルフがどんな風に記憶を消すのかとワクワクしながら待っていると

マリアナがおずおずと手を上げてリーティエンドに話しかけてきた。


「あの・・・わた、し・・・や・・・ります・・・」

「あら、あなた出来るの?」

「はい・・・とく、い・・・です・・・」

「そう。なら任せるわ。」


マリアナがローランの記憶を消すと言い出したことにリーティエンドは少し驚いたが

自分がやるのも面倒だと思っていたのでマリアナに任せることにした。

するとマリアナは、先ほど買ってきた大量の武具の中を漁り始めた。

その中から子供の身長ぐらいありそうな大きな木槌を取り出すと、

それを「よいしょ」と肩に担ぎ歩き出しローランの前に立った。

それを見たルドルフは何かを悟ったのか慌てるように「ワンワン」と吠え始めた。


『ちょっ、ちょっと待て!それはなんだ!?』

「さっき・・・かった、ぶ、き・・・」

『それはわかる。そうじゃなくて!それで何をする気なんだ?』

「・・・たたく・・・?」

『叩くって・・・ローランをか?』


ルドルフの言葉に頷くマリアナ。

それは「記憶を消す」という言葉の意味を理解するには十分だっただろう。


『まさか・・・殴って記憶を消すのか?』

「そうよ。簡単でしょ?」

『いやいや、あんなもんで叩いたら普通死ぬだろ!?』

「大丈夫よ。死んでも蘇生魔法で生き返らせるんだから。」

『そういう問題じゃなくて!・・・え、蘇生魔法?生き返る?』

「・・・えい・・・」


ルドルフがリーティエンドとの会話に夢中になっていると、

いつの間にかローランの前に立ったマリアナが肩に担いだ木槌を振り上げ

ローランの頭めがけて振り下ろしていた。少し鈍い音が街に響く。


『ぎゃーーーー!?なんか鈍い音したー!』

「あらあの子、なかなかやるじゃない。」

「ふ、ぅ。・・・まほ、う・・・かけま、すね・・・」


慌てふためくルドルフの横で感心するリーティエンド。

一呼吸したマリアナが振り下ろした木槌を持ち上げると、そこの地面は凹んでおり

ローランがうつ伏せに倒れていた。まったく動く気配は感じられない。

木槌を置いたマリアナが倒れているローランの隣に座り込み両手をローランにかざした。

その光景を見ながらルドルフは耳とシッポを垂らしガクガクと震えながら吠えた。


『ねぇ、あれ死んでるよね!?絶対死んでるよね!?』

「問題ないわよ。」

「・・・・・・あ、れ?」


倒れているローランの隣で両手をかざしていたマリアナが不思議そうに首を傾げた

と同時にローランが勢いよく起き上がった。


「はっ!俺は今まで何を!?」

『ぎゃーーー!死体が動いたぁー!?』

「あら、意外と丈夫ね。」

「・・・しん、で・・・なか、た・・・」


ローランが突然起き上がったことに驚いたルドルフはリーティエンドの後ろに隠れ

前足で目を覆いガクガク震えながら伏せっていた。

そんなルドルフの姿に呆れつつリーティエンドが口を開く。


「あなた、名前は?」

「ん?なんだもう忘れたのか?さっき自己紹介したばかりだろ、ローランだ。」

「じゃあ、勇者の仲間になったことも覚えてる?」

「あぁ、覚えてるぜ。旅立ってすぐ勇者から剣と鎧を譲り受けて・・・」

「これがその鎧よ。」


そう言いながらリーティエンドはローランの目の前に置かれている青黒い鎧を指した。

ローランはその鎧をまじまじと見ながら首を傾げる。


「・・・こんな地味な鎧だったか?」

「そうよ。」

「もっと派手だったような・・・?」

「そう見えてただけよ。」

「・・・そうか?」

「そうよ。・・・ねぇ?」

「・・・うん・・・これ、だ・・・たよ・・・」


リーティエンドに突然同意を求められたマリアナは小さく頷きながらそう言った。

二人に言われたローランは青黒い鎧を再び見つめ、「うーん」と悩み始める。

それを見ながらリーティエンドとマリアナが小声で話す。


「・・・もう一息ね。」

「あ、とは・・・ゆうしゃ、さまが・・・」

「そうね。勇者が言えば信じるでしょうね。・・・ほら、しっかりなさい!」


未だに足元で震えるルドルフをつま先で軽く突付き顔を上げさせる。

不安そうな顔で「くーん」と鳴くルドルフに、ローランはちゃんと生きていると告げると

少しほっとしたような表情を浮かべた後「化け物か?」と呟いた。

そしてルドルフはリーティエンドに言われるまま青黒い鎧に前足を置き

ローランに向かってこう言った。


『オイラの代わりに、この勇者の鎧を着てくれないか?』

「俺が?」

『あぁ、お前しかいない。』

「・・・わかった。ありがたく着させてもらうぜ、勇者。」


そう言ってローランは青黒い鎧を手に取り装備し始める。

その姿を見ながらヒソヒソと一匹と二人は小声で話す。


『・・・なんかオイラ、心が痛むんだけど・・・』

「気のせいよ。」

『いやいや、人騙してるから!気のせいじゃないよね!?』

「・・・で、も・・・あの、人・・・げん、き、なっ・・・たよ・・・」

『それはそうなんだけど・・・』

「・・・異世界ではどうか知らないけど、ここではこれが普通なのよ。」

『・・・まじか・・・』


この世界では病気も怪我も魔法で治すことができ、死者も魔法で蘇生することができた。

そのためか考え方や価値観がルドルフのいた世界とは大きく違っていた。

しかし、記憶を消すと言う行為はかなりの荒療治のため、一般人が行うことはせず

万が一のために蘇生魔法を扱える神官が行うのが基本である。マリアナもその一人だ。


「お前ら、一体なんの話をしてるんだ?」


気づけば青黒い鎧を身に着けたローランが不思議そうにルドルフたちを見ていた。

心が痛むルドルフは驚いて「ぎゃん!」という鳴き声を上げた。


『あ、いや!オイラたちは別に・・・』

「大したことじゃないわ。今後のことについてよ。」


慌てるルドルフとは対照的にリーティエンドはしれっとローランに答える。


「なんだ、それなら俺にも参加させてくれよ。」

「・・・そうね。なら、宿屋に行きましょう。これからの進路も決めないと。」

「ごはん・・・も、たべ・・・たい・・・」

「えぇ。食事しながら作戦会議ね。それでいいかしら?勇者様。」

『・・・あ、あぁ・・・うん・・・』


突然話を振られて、ルドルフはなんとも歯切れの悪い返事を返した。

それも仕方ない、記憶を消すという荒療治を行ったマリアナとリーティエンドに

大きな木槌で殴られたのにもかかわらず怪我一つなく平然としているローラン。

リーティエンドは”普通”だと言っていたが、ルドルフにしてみれば”異常”なのである。

そう簡単に順応できるわけがない。


宿屋へと向かう三人の後姿を眺めながらルドルフは呟いた


『オイラ・・・一番怖いのはご主人だと思ってたけど・・・』


もしかしたら、この三人の方が怖いかもしれない・・・と。


ルドルフは弱々しく「くーん」と鳴くと、三人を追いかけるように走り出した。



「・・・ところで、なんで俺の頭にコブができてるんだ?」

「さぁ?転んだ時にでも打ったんじゃない?」

『あれでコブひとつ!?・・・本当に化け物か?』

「す・・・ごい・・・」


最強と最恐。




正月早々風邪引きました・・・。

今年は体調管理に気をつけろ、ということみたいです・・・。

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